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私は民謡調査で、滋賀県朽木村木地山の平楽鉄之助さん・トヨさん老夫婦に出会った。小浜市上根来を訪問したとき「峠の向こうの村に三味線を弾くじいがおる」と地元の故大家清さんに教えていただいて早速訪ねたのである。 鉄之助さんは初対面の私に屈託なく、三味線を出してきて「高島音頭」を弾き語りしてくださった。90才とは思えない張りのある声だった。 鉄之助さんの民謡談義を聞かせていただいているうちに、雪が降り積もり、その日は泊めていただくことになった。トヨさんが作ったワサビの葉漬に一升瓶が出てきた。鉄之助さんの三味線と歌は最高潮。トヨさんの手拍子と踊りも入って、何故か懐かしい家に帰ってきたような時間が流れた。 山間で老夫婦二人暮らしは寂しくないのだろうか。ご夫婦のこの陽気さはどこからくるのだろうか。 春夏秋冬時々遊びに訪れるようになって、ようやく分かった。盆踊りの櫓に駆け上がって三味線を弾く鉄之助さんの勇姿。春の野で山菜を摘んではしゃぐトヨさん。大屋根に上って雪下ろしもしていた。山に生かされ山に生きる夫婦の暮らしと祈りがあった。 春三月、まだ根雪のこの村を訪ねると、小川にフキの茎でつくった「ちんちんぐるま」を回してトヨさんが待っていてくれた。「もうじきダムの工事が始まって、この家も水の底に沈む。」という。一代で築いた家が水底に沈むことを寂しがっていた。その年、鉄之助さんの故郷上根来で音楽会を開催、鉄之助さんをゲストに呼んだ。半世紀ぶりに踊りの輪ができた。 数年後、ダムの建設が始まり、村は消えた。鉄之助さんは家を解体する前の年、三味線を抱いて96歳で永眠。トヨさんは川下の町で息子さん夫婦と生活をしておられたが、91才で永眠。二人は風となり、川の流れとなって、山の風景の中で遊んでいるにちがいない。三味線とちんちんぐるまの音は今も私の耳に聞こえてくる。
作詞:YANOMAN
作曲:KAZU
山深い細い一本道を ガタゴトゆられて車は走る 秋風にススキもゆれて 虫の声が聞こえる ここは朽木 木地の郷 小さな庵に村人二人住む なんにもないけど なんにもないけど 川のせせらぎ 木々のざわめき 子ども5人を 育てた山は 今日も変わらずそびえたつ さぞかし雪も 降るんだろうな お地蔵さんのある小道 ここは朽木 木地の郷 小さな庵に村人 二人住む なんにもないけど なんにもないけど 風の笛に 鳥のささやき 若いころから肌身離さず 弾き続けた三味の音が 澄みきった山の空気に しっとり響き渡る ここは朽木 木地の郷 小さな庵に村人 二人住む なんにもないけど なんにもないけど 川のせせらぎ 木々のざわめき 盆踊り やぐらにあがって おはやし 盛りたてる 音頭とるには 三味の音(おと) 調子合わせて 三っ拍子 ここは朽木 木地の郷 小さな庵に 村人二人住む なんにもないけど なんにもないけど 風の笛に 鳥のささやき なんにもないけど なんにもないけど 川のせせらぎ 木々のざわめき
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