楽曲解説

3 ヶ月連続リリースの集大成である「祝祭日の前日譚」の表題リードトラックは、 アフロビートとエレクトロポップがクロスオーバーした妖作であり、BOND LOST ACT が提示した奇譚集の終着駅だった。 ポリリズムに始まるシンセサイザーに重なり合うカリビアンなリフ、篠笛ナイズされたリードが 民族的な趣を醸し出し、何故か日本を感じざるを得ない本作は、きっとどこかプリミティブな 共通概念に触れているのだろう。 相も変わらずドラム、パーカッション、ハードシンセサイザーで 構成された音像には、彼らの並々ならぬ “ニュー・ウェイヴ” へのアンサーを感じてしまう。 フロントマンの龍磨は、平凡を装う自己憐憫に支配された人間に、夏の夕方を歩かせたと言った。 「ヘミングウェイの移動祝祭日のような、なんの気なしの 1 日を描きたかったのが起点でした。 南風が香る夏の夕方。昼間にプールでひと泳ぎした身体は気怠く、遠くで聞こえる他人事の 祭囃子が静かに彩ってほしかった。しかし、主人公を歩かせたはいいものの、結局自己憐憫に 蝕まれた妖怪みたいな自分が立っていました。この一連の EP は結果としてすべて妖怪が顔をだす 作品となり、きっとこれからの僕らの竜骨になるモチーフだと感じています。」 EP のジャケットには結成当初から彼らを見守っているイラストレーター LAM が筆を取った。 馴染みの喫茶店で雷雷公社と語らった BOND LOST ACT のアイコンになるこの少女は、いったい今後 何を語りかけてくれるのだろうか。 今回もドルビーアトモスを用いずサラウンド音源を感じられる Wide version を同時リリース。 ジャパニーズ・ニュー・ウェイヴにシュプレヒコールを鳴らした彼らに期待しないほうが難しい。