均質で有機的な快楽の行方――NENEIS(ネネイズ)「レモン水」の推進と滞留のバランス

均質で有機的な快楽の行方――NENEIS(ネネイズ)「レモン水」の推進と滞留のバランス

2026/05/06

北海道発の3ピースディスコロックバンド、NENEIS(ネネイズ)。メンバーは、KT(Vo./Gt.)、コト・チャン(Gt./Cho.)、リクタニグチ(Ba.)。 

2023年に初音源となる「サイケガール」をサブスクリプション音楽配信サービスでリリース。精力的にライブ活動も展開している。“ディスコロックバンド”と自称するとおり、滑らかなグルーヴ、ロマンティックなメロディーが持ち味だが、そこに懐古を感じない手腕が見事。  

反復性の高いグルーヴと平面的な音の配置を軸に楽曲を組み立てている。軽快に前進しているようで、実際には同じ地点を周回し続けている。この「レモン水」は、ディスコ的な反復の上に80年代シティポップ的なメロディーラインを重ねることで、均質化された快楽とその物足りなさを同時に浮かび上がらせる。跳ねきらないグルーヴと抑えられた起伏が、推進ではなく滞留を選び取り、聴き手を同一平面に留める。 

風が抜けるような軽やかさ――洒脱なコードの循環と反復へ最適化されたグルーヴ  

前述したとおり、リズムの基層にはブラックミュージック由来のグルーヴ感覚があるが、それをそのまま再現するのではなく、現在的なノリへと置き換えている点が特徴的だ。明確に身体を引っ張るスウィングやファンクのうねりではなく、拍の重心をやや曖昧にしたまま、均一に持続する感触へと整えられている。ここで機能しているのは、ブラックミュージック的な語法を参照しながらも、それを圧縮軽量化し、反復へと最適化された現在的なグルーヴだ。サビにおいても、旋律のループがフックを形成する。洒脱なコード循環の上に、滑らかなメロディーが乗ることで、80年代シティポップに通じる、風が抜けるような心地よさが立ち上がっている。  

ファルセットと低音域への落ち方で、フックを作っているボーカルにも注目したい。特にサビ。一音ごとに軽く着地するような発声が選ばれており、粒を並べて連結している(しかも隙間がない、ここ大事!)ような感覚が前に出ている。さらに、子音の立ち上がりをリズムに沿わせることで、メロディーをビートとしても機能させている。  

ディスコと80年代シティポップの要素を横断しつつ、その根底にあるブラックミュージックの文脈をアップデートした、令和版J-オルタナティブソウルの登場だ。  

文・伊藤亜希


本ページのレビューはアーティストおよびアーティスト公式に限り、HP・SNS・CDブックレットなどに転載可能です。
転載の際は、本ページのURLまたはhttps://eggs.mu/をご記載ください。また、ライター名は記載しないでください。