『アオキハルヘ vol.16』開催。10代アーティストが刻んだ青春の衝動と情熱

『アオキハルヘ vol.16』開催。10代アーティストが刻んだ青春の衝動と情熱

2026/10/06

若手アーティストの登竜門的ライブハウス、下北沢MOSAiCとEggsが共同で企画する10代のアーティスト限定イベント『アオキハルヘ』、その第16回が2026年8月24日に開催された。出演アーティストにはAM4:25(アムヨンニーゴ)、無黎明(ブレイメイ)、だてぃが、the hack gunz(ザ・ハック・ガンズ)、やさしくなれない、Silly_Walker(シリーウォーカー)というEggsが大注目する6組が集結。学生であれば入場料無料と音楽好きの10代にも嬉しい当イベント、熱狂渦巻くステージの模様をレポートしよう。 

AM4:25(アムヨンニーゴ)が放つ原石ならではの瑞々しいきらめき

イベントの口開けを担ったのは神奈川県立市ケ尾高校軽音楽部出身の男女混成4ピースバンド、AM 4:25だ。昨年は全国高校生アマチュアバンド選手権『TEENS ROCK 2025』にてグランプリに選出され、同年開催の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025』出場権を獲得、見事大舞台での演奏を果たしてもいる。だが、そうした輝かしい経歴を持ちながら、ステージに現れた彼女たちには驚くくらい“圧”がなかった。全員Tシャツにジーンズという飾らない出で立ち、まだどこかライブハウス慣れしていないような佇まいはむしろ初々しささえ感じさせるほど。だから、まさか1曲目の「夕立」でこんなにも魅了されようとは思わなかった。ももか(Vo. / Gt.)が掻き鳴らすざらついたギターを追いかけて一斉にほとばしる分厚いバンドアンサンブル。シューゲイザー要素を含んだギターロックサウンドがたちまち場内を満たし、オーディエンスの高揚を駆り立てていく。 

「AM 4:25です。トッパー、よろしくお願いします」と短い挨拶の後、そのままなだれ込んだ「6日」では溢れんばかりの疾走感が自然発生的にハンドクラップを誘い、ひときわエモーショナルに迫った「流れ星」でもフロアのあちこちで拳が突き上がるなど、一番手とは思えないほどの盛り上がりを作り上げたAM 4:25。10代だからこその青いノスタルジーや焦燥、葛藤に揺れる感情が綴られた繊細な歌詞、豊かな声量でその機微をありありと表現するももかの歌も実に魅力的で、前述の経歴もなるほどと唸らされる。圧がないのはいい意味で彼女たちがまだ何者でもないからだろう。それでいて揺るぎない芯の強さを感じさせる原石のこれからに期待は募るばかりだ。 

setlist

  1. 01. 夕立 
  2. 02. 6日 
  3. 03. 流れ星 
  4. 04. 蠢 

予想外の試練を乗り越え、本領を見せつけた無黎明(ぶれいめい)

埼玉県の早稲田大学本庄高等学院軽音楽部に所属する高校3年生5人組バンド、無黎明のステージはのっけの「海中電灯」から想定外の事態に見舞われた。同期していたバッキングトラックが演奏の途中で止まってしまったのだ。独特な浮遊感を有したスケールの大きな音像を音楽性の軸とする彼らにとって、それは痛恨と呼ぶべきアクシデントに違いなかったが、それでも誰一人、曲の最後までプレイする手を止めない心意気やよし。「こんなふうにトラブルも起きるし、まだまだ未熟なバンドなんですけど」と少々バツが悪そうに切り出しつつ「でも、そんな僕らでもきっと何かが伝えられると思って音楽を続けています」と口にしたkento(Vo. / Gt.)のきっぱりとした言葉がまた頼もしい。 

あれこれ手を尽くしたものの結局、持ち時間内での原状回復は見込めず「じゃあ、このままやります!」と宣言、「もっと前に来てもらっていいですか!」とオーディエンスに呼びかけるとアグレッシブな「震動」に突入し、タフな地力を見せつける5人。kentoが全力で歌い上げる“乗り越えてみせるよ絶対”というフレーズの説得力たるや、まさに今の彼らのアティテュードともリンクしてなんともパワフルに響く。未来を捉える凛とした視線にフロアが共鳴した「地動説」、スポークンワード的アプローチも新鮮な「正解世界」と、その後も彼らならではのオリジナリティを存分に発揮した無黎明。本人たちは不本意だったかもしれないが、生演奏だけでも十二分なその力量を示すことができたことは怪我の功名と言ってもいいのではないか。試練を“乗り越え”、達成感に溢れた5人の笑顔にそんなことを思う。 

setlist

  1. 01. 海中電灯 
  2. 02. 震動 
  3. 03. 地動説 
  4. 04. 正解世界 

今回唯一のソロアーティスト・だてぃがが掲げる“生きる”意志

今回の出演者のなかでは唯一のソロアーティストとなる、だてぃが。中学1年生でラップを作り始め、5年前に投稿したTikTok動画がバズったのをきっかけに当時、現役中学生シンガーソングライターとして大きな話題を呼んだ彼女は、以降もライブハウスはもとより路上でも精力的に音楽活動を続け、高い求心力でファンを惹きつけている。その楽曲が多くの共感を集めるのは図抜けたポップさと、それを凌駕して余りある強烈なメッセージゆえだろう。 

過去の自身のツイートを読み上げ、コラージュして作られたSEとともに登場しただてぃがが、一発目にドロップしたのは「ぶっ殺したい過去の記憶」だ。件のTikTokで大バズりした曲であり、14歳最後の日にリリースしたという1st EP「IKill」にも収録の、だてぃがの名刺とも呼ぶべき代表曲がいきなり聴く者の胸を鷲掴みにする。特徴のあるキュートな歌声で歌われるのは生きづらい世界から目を逸らさず、自身の生き様を音楽に託してサバイブするのだという強靭な意志。続く「あ゛あ゛あ゛」も、アコースティックギターの弾き語りで届けられた「死なん!」「Re:START」も、すべての楽曲には“生きたい”“生きてほしい”という率直な願いが通底している。「死にたくて死にたくて仕方ない日々でも、近くには音楽があります。どうしようもなくなったときは私のライブに来てください」、そう告げてアコギを下ろしただてぃがはスタンドのマイクを引っ掴むとステージから飛び降り、フロアを転がり走り回る渾身のパフォーマンスで「この消えそうな世界の上で」を熱唱。その場に居合わせたオーディエンスに絶大なインパクトを残した。 

setlist

  1. 01. ぶっ殺したい過去の記憶 
  2. 02. あ゛あ゛あ゛ 
  3. 03. 死なん! 
  4. 04. Re:START 
  5. 05. この消えそうな世界の上で 

遮二無二なオリジナリティを貫くthe hack gunz(ザハックガンズ)が示した覚悟

硬派という形容を用いるのはいささか時代錯誤だろうか。しかし、愚直なまでにロックに徹した東京都町田市発の4ピースバンド、the hack gunzが鳴らすハードエッジなサウンドに触れれば「たしかに!」と得心していただけるはずだ。 

ステージにメンバーが登場したと思いきや、satoshi(Dr.)だけ客席のドアから現れ、フロアの一人ひとりとグータッチを交わしたのちに3人と合流するという大胆不敵なオープニングの直後、堰を切って溢れ出した「青」の太くてソリッドな爆音がオーディエンスの度肝を抜いた。タイトルを具現するかのごとき初期衝動的青さは残しつつ、これでまだバンド結成1年だとはにわかに信じがたい磐石のアンサンブル。ギターを掻きむしりながらマイクに食らいつかんばかりに放たれる鶴田シュンキ(Vo. / Gt.)の鬼気迫る歌声にも圧倒される。 

「今夜、あなたたちを揺らすこの曲を」と鶴田が告げるや、てらしまはるき(Ba.)の指先がリズミカルに弦をはじき、怒涛のグルーブがフロアいっぱいに渦巻いた。「逆襲」と名付けられたダンサブルなロックンロールに場内の興奮は目に見えて加速。ヤマグチカズキ(Gt.)のスリリングなプレイもさらに狂騒を煽って奔放自在だ。70〜80年代のハードロックやメタルといった彼らの人生より遥か昔から連綿と紡がれてきたルーツの香りもほのかに漂わせながら、10代らしい遮二無二さと尖ったセンスによる解釈が彼らの音楽に他にはないオリジナリティを与えているのだろう。ラストナンバー「旅の途中」まで一気呵成に駆け抜けたthe hack gunz。何があっても己の道を突き進んでいく、そんな覚悟をも感じさせるステージだった。 

setlist

  1. 01. 青 
  2. 02. 逆襲 
  3. 03. 閃光 
  4. 04. 旅の途中 

激情ほとばしるステージングでフロアを熱狂させた、やさしくなれない

なにせ開口一番が「ぶち壊しに来ました」だ。それだけでこのバンドの有するヒリヒリとしたマインドが伝わってきて、場内の空気もグッと前のめりになる。すぐさまそれを感知したのだろう、言葉の主のカワノハルカ(Gt.)は畳み掛けるようにフロアを手招きして挑発。間髪入れず、榎本晴奈(Vo. / Gt.)に「もっと前に来なくていいんすか!?」と煽られれば、オーディエンスも黙って観てなどいられない。あっという間にMOSAiCは熱狂のるつぼと化していく。 

その名からして非常に心惹かれる彼女たち、やさしくなれないは榎本とカワノを中心に昨年7月に結成された東京都発の4ピースバンドだ。自身が抱える孤独や怒りを楽曲に昇華、剥き出しの魂を叩きつけるかのようなライブパフォーマンスで着実に活動の場を広げつつある、注目バンドの筆頭株と言っていいだろう。冒頭に書き記した通り、この日のステージもスタートからエンジン全開。あまりの激しさに1曲目の「模倣する刹那」で早くも榎本が弾くギターの弦が切れてしまうアクシデントも。だが、動じることなく「誰かギター貸してくれませんか?」とフロアで観ていた共演者たちに呼びかける榎本。すぐさまthe hack gunzのヤマグチが楽屋に走り、躊躇なくそのギターを渡した場面には胸が熱くなった。ライバルであり同志でもあるからこその連帯感、バンドを、ロックを志す醍醐味はこうしたところにもあるのだと思う。 

「あなたの居場所は私たちが作るので、なんか苦しいなって思ったときは来てください。絶対大丈夫。あなたの世界を変えるために私は生きている!」。そんな榎本の絶叫とともになだれ込んだのは「憤懣の果て」だ。横溢する激情に共振して拳をザンザンと突き上げるオーディエンスの表情のなんと満ち足りていたことか。彼女たちのロックによって変わる世界はきっとやさしくて美しい、そう断言したい。 

setlist

  1. 01. 模倣する刹那 
  2. 02. 愛に飢え 
  3. 03. さみしさに 
  4. 04. 憤懣の果て 

10代らしからぬ洒脱な音像に垣間見るSilly_Walker(シリーウォーカー)の圧倒的ポテンシャル

トリは大阪を拠点に活動する5人組バンド、Silly_Walkerが飾った。2026年3月、関西のライブハウスプロデュースによる十代才能発掘プロジェクト『十代白書2026』にてグランプリを受賞した若き実力者たちの登場にフロアの温度が一段と上がる。一人スーツに身を包み、色の薄いサングラスをかけた河西秀仁(Vo. / Gt.)のスタイリッシュな姿は今日これまでの出演陣はもとより他のメンバーと比べても明らかに異質だが、ゆえにこそいっそう興味をそそられるというものだ。 

猛暑の夜にも心地よく響くヒヤリと冴え渡ったサウンドスケープ、あえて感情を前に押し出さない河西の歌声がしっとりとした叙情を携えて聴き手の胸に染み込んでいく——彼らが1曲目に奏でた「Bon voyage」の大人びた音像に目をみはらずにはいられなかった。淡々と達観しているようでいて、次第に熱を帯びていくアンサンブルと歌唱のダイナミックなグラデーション。<僕らは未来を信じ続けて/大切なものを逃していく/それが旅さ>などという歌詞をこれほどソウルフルに歌い上げられる10代がどこにいるだろうか。R&Bを基調としつつも、ヒップホップやオルタナティブロックの要素もはらみ、さらにはジャズやフュージョン、よりディープなブラックミュージックのテイストもそこここに散見される洒脱なサウンド。「Nuts」「草いきれ」と彼らが演奏を重ねるほどに強く感じるのは、早熟の一言では片付けられない、飛び抜けて秀でたポテンシャルと音楽への熱烈な愛情だ。 

「最後までありがとうございました。また会う日まで、どうぞお元気で」と告げた河西はついにサングラスを投げ捨て、バンドは「GEOMETRY」に突入。彼らの魅力にすっかり酔いしれたオーディエンスをとことん揺らして3時間強にも及んだイベントを締めくくった。 

setlist

  1. 01. Bon voyage 
  2. 02. Nuts 
  3. 03. 草いきれ 
  4. 04. GEOMETRY 

持ち時間こそそれぞれ20分と短いながら、各バンド、アーティストの熱量の高さは過去イチ高かったのではないかと思わせてくれた『アオキハルヘ vol.16』。生きづらさを感じてやまない毎日でもこの音楽たちがあれば歩いていけると確信できた夜でもあった。次回開催の折にはぜひあなたにも躍動する若き才能と出会ってほしい。  

■スタッフクレジット
執筆・取材:本間夕子
撮影:山田耕一 

Eggs あなたの音楽を世界にアカウント登録へ

ランキング

デイリーランキング・2026/10/07 付

1

check_indeterminate_small
thumbnailImage

the奥歯's

2

check_indeterminate_small
thumbnailImage

仙台シティーキャッツ

3

check_indeterminate_small
thumbnailImage

JUNK MARTINI

4

check_indeterminate_small
thumbnailImage

SuperJaded.

5

check_indeterminate_small
thumbnailImage

アイオモイ

ka-i2_1rximn-0h3g6t1hb4hu-ihy2tyiy