静岡を拠点に活動するバンド、十三月革命(ジュウサンガツカクメイ)。2025年8月1日に活動を開始。長嶋水徳 - serval DOG -をコンポーザーに据えたバンドプロジェクトとして活動している。メンバーは、長嶋水徳(Gt./ Vo./ Composer)、八紘(Ba.)、かをる(Dr.)の3名。
今回取り上げる「挽歌」は、前半と後半で大きく表情を変える楽曲だ。優美でミニマムなギターの音色から始まる本曲で、長嶋は、スポークンワードを思わせるアプローチで言葉を次々と繰り出していく。歌詞で描かれるのは、大切な人との別れだ。死というヘヴィな題材をモチーフにし、生々しく切実な言葉もあるが、どこか軽やかで時に実験的なアプローチをみせる。その語り口から浮かび上がるのは、観念的な「死」ではなく、癖も過去も知り尽くした、たった1人の「あなた」への親密な眼差しと、あなたが生きていたことの痕跡だ。そして、その痕跡をたどることが、己が生きていることを実感することにつながっていく。その描き方も見事だ。
音像が変貌する瞬間――シューゲイザーとクワイアが生む熱量
そして「挽歌」は、後半へ向けて、その様相を大きく変えていく。ギターの残響が空間を覆い、サイケデリックロックやシューゲイザーを思わせる巨大な音像へと変化する。ロック文脈の荒々しさも残したクワイア的なコーラスが加わることで、1人から1人へ向けられていた言葉が、いつしか切実な祈りにも似た響きを帯びていく。さらに轟音を突き抜ける、ホイッスルボイスに近い鋭い高音もいい。前半では言葉の内側に押し込められていたものが、ここで一気に音として噴き出す、感情のナラティブをしっかり提示している。この変化があるからこそ、終盤の<挽歌を歌いましょう>という言葉が聴き手にどっしりとした重さを残していく。
激情的なサウンドと歌声で紡がれるのは、いなくなった「あなた」への感情。象徴的なのは<エーテルになったあなたはね/さぞかし自由に生きれるでしょう>という一節。古代ギリシャ哲学で天上を満たすものとされた「エーテル」を使ってくるあたりに、独特の文学性と、歌詞の根底にある哲学を感じさせる。前半の私的な語りから、後半の轟音と幾重もの声へ。十三月革命は「挽歌」で、ひとりの人間に向けられた親密な言葉を、壮大な祈りの音楽へと変えていく。まるで荒ぶる神を味方につけたようなカオスは、天地創造さえ思わせる。物語性とスケール感が波状に押し寄せる。その圧倒的なサウンドのエネルギーこそ、このバンドの魅力だ。
文・伊藤亜希
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