神奈川県湘南発の3ピースロックバンド、かたこと。2016年3月に活動を開始し、メンバーは長尾拓海(Vo. / Gt.)、純(Ba.)、伊東拓人(Dr.)の3人。全員が2000年生まれで、キャッチーなメロディーとスキルフルなバンドアンサンブルを武器に、独自のポップミュージックを追求してきた。
今回取り上げる「今しかないじゃん。」は、2026年7月にリリースされた4thミニアルバム『FeeLike』の収録曲。長尾と純が作詞、長尾が作曲を手がけている。ダンサブルでアッパーなパーティーチューンだ。
本曲の魅力は、聴き手を巻き込むポジティブで明るいエネルギー。そして、明るさの内側にある感情の描写の面白さだ。「今しかない」という言葉は、ともすれば強い決意を求めるものになりがち。だが、彼らが描くのは、意地を張り、好きと嫌いの間で揺れ動き、決断に進むことができないーーそんな曖昧な感情を抱えたままでも、一歩を踏み出していい、というメッセージだ。
言葉の躍動が生む推進力――迷いさえも肯定するポップミュージック
特筆したいのは、ボーカルの言葉の運び方である。リズミカルで跳ねるように言葉を置いていく。口語体と文語体を織り交ぜ、語感を生かしながら音を言葉にして繰り出していく。歌詞をバンドアンサンブルとともに、軽やかな言葉の連なりへと置き換えていく手腕に、このバンドならではのセンスが光る。
また、歌詞に登場する灼熱の太陽や溶けるアイスといった夏の情景は、強い日差しの下で感じる高揚感や、過ぎ去っていく時間の感覚が、「今」という瞬間のかけがえのなさを浮かび上がらせる。恋愛の駆け引きから無計画な旅へと視野が広がっていく展開も興味深い。誰かを好きになることも、未知の場所へ向かうことも、結局は自分自身の気持ちに素直になるところから始まるのだ。
「今しかないじゃん。」は、迷いを消し去る歌ではない。迷いもためらいも抱えたまま、その先へと踏み出すことを肯定する歌だ。肩肘張らずに背中を押してくれる、その軽やかさにこそ、かたことらしいポップミュージックの魅力がある。
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