地元出身バンドはもちろん、多くのアーティストから愛されている奈良県の有名ライブハウス、奈良NEVERLAND(以下、ネバーランド)。長い歴史を持ちながらも、若い才能にも親身に寄り添うその姿勢に、熱く支持される理由が店長・奥田怜央奈氏の言葉からも見えてきた。
奈良ネバーランドの店長が見てきた出演者同士の“化学変化”
ーーネバーランドは来年(2026年)30周年を迎えられるそうですね。
奥田:はい。代表の岩城(吉映)が1996年に脱サラをして始めたライブハウスがこの奈良ネバーランドです。現在は一軒家で営業していますが、過去に2回ほど移転しているんですよ。当初はビルのテナントの中にあったのですが、騒音に対する苦情など、いろいろトラブルを回避しながら17年前に今の店舗にたどり着いたと聞いています。今の店舗になってからが1番歴史が長いですね。
ーーネバーランドという名前の由来も教えてください。
奥田:ピーターパンに登場する「ネバーランド」から取ったみたいですね。意味深そうな名前ですけど、決めてくれたのは当時出演していたバンドの方らしいですよ。
ーー奥田さんはいつからネバーランドの店長をなさっているんですか。
奥田:僕がネバーランドで働き始めたのが2012年、大学在学中にブッキング制作として入ったんですけど、店長になったのは、たぶん2年前ぐらいですかね。じつは、ネバーランドでは店長的な立場がいない時期がしばらく続いていたんです。ややこしいので端折りますけど(笑)。そんな中、コロナ禍になって店の人間が何人か辞めたりしているうちに、なし崩し的に“これって僕が店長ってことかな?”みたいな(笑)。これまた、ちょっとややこしいんですが、ネバーランドを経営している会社とは別に僕個人も法人を立ち上げていまして、業務委託という形で請け負っているんです。なので、僕が店を継いだというわけではなく、共同経営しているような感覚ですね。現在は僕以外にブッキングスタッフがほぼいない状態なので、主な業務としてはブッキングマネージャーの仕事がほとんどです。若いブッカーも2人いて、その子たちが月1〜2本ほどイベントを仕込んでくれてますが、月のほとんどのライブは僕が制作しています。
ーーブッキングする際の方針や留意しているポイントなどは?
奥田:奈良県内のライブハウスの数が少ないこともあって、ありがたいことにアーティストがうちに集まってくれている状況なのですが、そういった状況でも、1から10まで僕の意図が反映されるようなイベントはできるだけ組まないようにしています。ある意味、事件性というか“こうなると思わなかったな”みたいなことが起きてほしいんですよ。このバンドとこのバンドが仲良くなるなんて!みたいな。なのでブッキングイベントをジャンルで縛りすぎたり、年齢で垣根を作ったり、あまりしないように心がけていますね。もちろん、あえてそうした企画をする場合もありますけど。大阪や京都だと、同じジャンルで、志の近い者同士のイベントなども多いと思うんですけど、せっかくうちでやるなら、お客さんだけでなく出演者の方にも思いがけない出会いをしてもらいたいので。例えば、コロナ禍でクラブが根こそぎなくなってしまったことでヒップホップやレゲエ、ハウスやテクノといった、いわゆるクラブ文化のアーティストも受け入れることが多くなったんですけど、うちで出会ったバンドのギタリストがレゲエのトラック制作に参加したりとか、そういう化学反応も実際起こったりしているんです。
全国区になった後も奈良ネバーランドをホームにしてくれるアーティストたち
ーー奥田さんが見てこられたネバーランドの歴史の中でも特に大きなトピックスがありましたら、ぜひお聞かせください。
奥田:移転を2回していることもきっと大変だったとは思うんですけど、地方のライブハウスとしてはやっぱり、ここをホームにしてくれているアーティストが売れていく、その都度都度のタイミングが1番のトピックスかなって思っています。LOSTAGEをはじめ、今なら岡崎体育やTHE ORAL CIGARETTES、Age Factoryといったアーティストたちが変わらずホームにしてくれているというのもすごくありがたいですね。
ーーネバーランドで主催するイベントにはどんな特色が?
奥田:特色とはちょっと違うかもしれませんが、やっぱりネバーランドをホームにしてくれているアーティストたちがわざわざ出てくれる、というところですかね。大阪からは40分ぐらいですけど、大阪や京都にめちゃくちゃたくさんライブハウスがあることを鑑みても、奈良ネバーランドは“わざわざ出る場所”だと思うので。あと、たまにめっちゃ変なアーティストが出ます(笑)。他のライブハウスにはほぼ出てないような、ちょっとクセの強くて、この人、普段は何してんのやろ?”みたいな人が。僕はそういう人間が大好きなので(笑)。
ーーそれも、さっきおっしゃった“思いがけない出会い”ですよね。それでは今までに1番嬉しかった瞬間は?
奥田:1番と言われると難しいですけど……これだけ「ありがとう」って言われる仕事もないと思うんですよ。あと、僕自身、昔からバンドをやっているんですけど、若い時に憧れていたバンドが当時の繋がりでネバーランドに出演してくれたり、そういうことがやっぱり嬉しいです。最近で言うと、僕が高校生の時に好きやったCONSTRUCTION NINEという大阪のバンドが出てくれた時もすごく感慨深かったですし、ZIGGYが来てくれたことも嬉しかったですね。僕の親父がZIGGYが好きで、僕も小学生の頃からずっと聴いていましたから。ネバーランドで働いていると、そういうことは結構ありますね。そういうバンドを今の若いバンドの子たちが観て“かっこいい!”って感じてくれたりとか、参考にしてもらえたりする瞬間も都度都度、嬉しいですし。
ーー今、奥田さんが注目されているバンドを教えてください。
奥田:僕が今、チームでサポートしているのがAge Factoryなんですよ。僕の会社が音響と物販管理を手伝っているんですけど、どんどん勢いが上がってきていますね。あと、若手のバンドではWTSKZの手伝いもしています。奈良の3ピースのロックバンドなんですけど、彼らが活動し始めたのがちょうどコロナ禍の最初の頃だったんです。よそが営業していないので、ずっとネバーランドでライブをしてきた。歌詞が素晴らしい上に、ハードロックとかメロコアとかいろんな音楽のエッセンスが混じっていて、ちょっと言語化しづらいんですけど、すごくいいバンド。それからSootyWest。今、うちに出ているバンドの中でも1番若手で、3月からツアーに出るので見かけたらぜひチェックしてほしいですし、LEGECKOというバンドも地元で頑張っていて、ぜひ観てほしいバンドのひとつです。他にも奈良には紹介したいバンドがたくさんいるので、レコメンドプレイリストにまとめます。人間的にもみんな、すごく魅力的なんですよ。
地方も回った方がいい。地方にしかいない個性的なミュージシャンと出会えるのが醍醐味
ーーそれぞれのバンドに対してとても親身に向き合っていらっしゃるんですね。若手のバンドを見出すことにも力を入れているのですか?
奥田:はい、常に探しています。どんどん新しい風を入れないと、ただただ友だち同士が集まって酒を飲んでいるだけになってしまう(笑)。SNSをチェックして、いいなと思ったらこちらからアプローチしたりもしますし、そのうえで実際に来てもらった時にいかに“いい箱やな”と思ってもらえるか、スタッフみんなが意識していますね。うちはPAも照明もほとんどのスタッフが20代前半とめちゃくちゃ若いので、バンドの子たちと同じ目線で会話ができると思うんですよ。若い人たちには若い人たちのノリを作ってほしいですし、僕ら世代のできあがっているものを押し付けたくもなくて。どんどん新しいネバーランドのムードを作り上げてもらえたらと思っていますね。
ーー最後にインディーズシーンの“Eggs(卵)”たちにメッセージをお願いします。
奥田:わりと昔から営業しているライブハウスですし、若い人たちからするとちょっと怖そうなジャンルもやっているので、ハードルが高いと思われているかもしれませんが、ぜひ1度、足を運んでほしいですね。全然怖くないですから(笑)。お客さんとしても、出演したいときも、僕らはもう全員ウェルカムです。それからこれは地方のライブハウスの人間からの言葉になりますけど、地方も回ったほうが僕はいいと思っているんですよ。都心部にはたくさんのライブハウスがありますけど、地方には地方の文化や、地方にしかいない妖怪みたいなおっさんとかもいますから(笑)。そういうものに出会うことも音楽活動の醍醐味のひとつだと思いますし、ぜひお薦めしたいですね。
livehouse info
奈良NEVERLAND
- 奈良県奈良市法華寺町122-1
- アクセス
- 近鉄奈良線 新大宮駅/徒歩約5分
- キャパシティ
- スタンディング 250名
- TEL
- 0742-36-2431
- 公式HP
- PC:http://nara-neverland.com/pc/、Mobile:http://nara-neverland.com/mobile/
event info

SAHOGAWA DESTROY
- DATE
- 2025年2月28日(金)
- OPEN/START
- 18:30/19:00
- TICKET
- ADV/DOOR ¥2,000/¥3,000
- LINEUP
- WTSKZ / Hyuga / SootyWest / ファジーデイズ
event info

SPARKEY & REONA pre. 【NEVERMIND】
- DATE
- 2025年3月1日(土)
- OPEN
- 21:00
- TICKET
- ADV/DOOR ¥3,000/¥3,500
- LINEUP
- -GUEST LIVE- 43K&cheapsongs / WATT / HI-KING TAKASE / -GUEST DJ- DJ Kung-Fu Star / -HIP HOP ACT- / LOW THE CLOWN&NAJIMI / SPARKEY / Keyser / SEKIROW / -BAND ACT- DROPCLOCK / WTSKZ / -DJ- 匠(寅の回) / BLOOD / DJ Matatavi / BUZZIN / -SHOP-PAINT & BUFF / 3549 SOCIAL CLUB
event info

#SWERVECITY -clie arte 1st mini album
- DATE
- 2025年3月5日(水)
- OPEN/START
- 18:00/18:30
- TICKET
- ADV/DOOR ¥2,000/¥2,500
- LINEUP
- clie arte / Stellar Light Glory / infinite sentimeter / ヨルノアト / yuu
event info

佐保川戦線
- DATE
- 2025年3月7日(金)
- OPEN/START
- 18:30/19:00
- TICKET
- ADV ¥3,000
- LINEUP
- LEGECKO / 衝動革命 / Jose
event info

SAHOGAWA DESTROY-THE KNOCKERS & ノッカーズあつし単品 名もないツアー2025-
- DATE
- 2025年3月27日(木)
- OPEN/START
- 18:00/18:30
- TICKET
- ADV/DOOR ¥2,500/¥3,000
- LINEUP
- THE KNOCKERS / B SIDE APPROACH / BUDDY TANDEN / IMAGEDAWN / 衣笠キンパラス