大阪発の3ピースロックバンド、路地裏のバレリーナ。2025年4月から活動をスタートし、同年夏には初音源となるシングル「レイリー」をデジタルリリース。2026年1月に初EP『Lumiere』を発表。同年5月に新曲「それでも私は」をリリースした。
ルーツロックやガレージロックを基盤にしながら、そこに懐古は感じられず、粗さや衝動を残したまま、現在的なロックへと接続している。特に印象的なのは、演奏全体に漂う“少し乾いた温度感”である。ギターは歪みを前面に押し出しすぎず、コードの隙間を活かしながら鳴らされる。リズム隊も過度に走らない。跳ねるというより、重心を低く保ちながらじわじわと前進していくタイプのグルーヴを作り出していく。ガレージロック由来のラフさはあるが、音像自体は緻密に整理されており、良く聴くと3ピース以上の情報量を放っている。
その中で中心軸として強く機能しているのが、女性ボーカル・羽七の歌声だろう。綺麗な子音の発音と、シャウトでも丸みを帯びた声質がじつに上品。湿度も低く、どちらかと言えば乾いた声の部類に入ると思うが、その乾き方がしゃがれになっていないところが魅力だ。言葉の末尾に少しだけ滲む息や、ピークをわずかに揺らすようなピッチ処理によって、感情を積み重ねていくタイプ。母音の扱いもうまい。平メロではあまり母音を伸ばさずタイトに切り上げるパターンが続くが、サビ以降では「わ」や「を」を発音する際に“u・WA”、“uo”と発音したり、フレーズに入る前にわずかな弱音を挟むなど、平メロで刻んだリズムをサビでグルーヴにシフトしていっている。これはメンバー全員が、楽曲に対して“ノリ”をしっかり共有しているからこそ出てくるスキルではないかと考察する。
ロック的カタルシスでは終わらない――「ループする悪夢」を体現した楽曲構造
曲調は、ガレージロックやパブロックを彷彿とさせるアップチューン。だが、メロディーはドメスティックで抒情的。メランコリックな雰囲気をまとっている。ロック的なカタルシスよりも、歌詞にもある「悪夢」がループするような感覚をそのまま楽曲構造へ落とし込んでいるあたりは、バンドアンサンブルのグルーヴやリフで生まれる“ノリ”を大切にしていることがわかる。
結果として「それでも私は」は、 “感情を吐き出すロック”ではなく、“感情に侵食され続ける時間”を描いた曲になっている。ルーツロックやドメスティックでメランコリックなメロディーの質感を借りながら、内面描写は極めて現代的。その接続の仕方に、このバンドならではの個性がある。
文・伊藤亜希
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