バイバイ・ニーチェの魅力。独特の“ポップネス”とは?
東京を中心に活動しているバイバイ・ニーチェ。メンバーは、ゆとり(Vo.)、まさと(Gt.)、あめちゃん(Ba.)、じょー(Dr.)の4人だ。2024年12月20日に初音源となる「アルストロメリア」を発表。以降、2025年1月5日までの間に計5曲の配信をスタートさせている。ポップ、ロック、エモ、メタルなどを違和感なくミックスしたサウンドは、どの曲もじつにハイクオリティーで、既に唯一無二のキャッチーさを確立している。メンバーそれぞれが己のルーツで個性を発揮しながらも“バイバイ・ニーチェで鳴らすべき音”を鳴らしており、メンバー同士がこのバンドで目指すサウンドをしっかり共有しているのがわかる。しかも全員、演奏スキルも高く、表現の引き出しも豊富だ。繊細な構築美を見せながら、軽やかに躍動するバンドアンサンブル、そして聴きやすいがしなやかな起伏のあるメロディーラインに、バイバイ・ニーチェならではの“ポップネス”を感じる。エモーショナルなライブのパフォーマンスにも定評があり、インディーズシーンでその存在感を発揮してきている。
“音楽”に対するバンドの想いを擬人化した「映画の世界」
今回紹介するのは、今年1月5日にドロップされた彼らの最新シングル「映画の世界」。ダンサブルでブライトなアップチューンだ。この曲の最大の魅力は、キャッチーなメロディーをキャッチーなだけで終わらせない、ボーカルの歌声と、メロディーと歌詞のマッチングにある。ボーカルは、リズムを刻むようなアプローチでも倍音が出ているかのような厚みあるうえに、トーンの終わりをスッと引くように綺麗にデクレッシェンドをかけたり、フレーズの最初の一音にクレッシェンドをかけたり、フレーズの途中の意外なところでしゃくりや子音を強く発音したりと、多彩なスキルを披露している。タイトなフレーズをリピートする楽曲構成は、1度聴いたら脳内をループするような中毒性がある。歌詞の言葉選びも面白く、“君”に対する感情描写をメインにしながらも、文語、口語、体言止め、擬音などを使い、一定のリズムを出しているところが素晴らしい。随所で様々な韻を踏んでいるあたりに、シンプルながら選び抜かれた言葉を配置しているのだろうと考察する。そして最後に“君”が、じつは“音楽”だということを記していることに、バイバイ・ニーチェの強い意志を感じるのだ。この強い意志が、バイバイ・ニーチェのこれからを切り開くことは間違いない。今、チェックしておかないと損をしそう……そう思わせてくれるバンドである。
文:伊藤亜希