Text:中村圭汰
Photo:塚本 弦汰
5回目の開催となった今回の『tossed coin』。
ジャンルや方向性は違えど、どこか繋がっていた5組のアーティストが過去を受け入れ、未来への希望を胸に、かけがえのない「今」を渋谷HOMEで奏でてくれた。
青く染まるステージ。キーボードの旋律が会場の空気の輪郭を鮮明に写す。
1番手を務めたのはピアノインストロックバンド、hyca。彼らは1曲目に”via you”を選んだ。
この曲は弾むステップみたいに、フロアで音が踊るアップチューンなナンバー。
軽やかなタッチで繰り出す色彩豊かなギターリフは瑞々しく鳴り響き、真っ直ぐに伸びるメロディーにアクセントを加える。濃密なベースの音が床を伝って身体に届き、高揚感を煽った。
彼らは、所謂「泣きメロ」と言われる、エモーショナルなメロディーラインをバンドとして丁寧に紡いでゆく。物語を語るみたいに、記憶を辿るように。幻想的な壮大な風景も、日常的な何気ない景色も一つの曲で表現できてしまうほどアップダウンを繰り返しながら展開してゆく。
ラストナンバー”ten”では、主旋律を鍵盤の音がリードするも、単なるピアノバラードに収まらないhycaらしさの詰まった一曲。メロディーラインを引き立てるために他の音を引くのではなく、各個性の違った楽器がぶつかり合うことで生まれる化学反応が彼らの楽曲に強い生命力を与え、hycaという新たなジャンルを確立しているようだった。
エフェクトボイスのカウントからChapmanのライブは幕を開けた。声量のあるソウルフルな歌声が会場全体に鳴り響く。彼らは期待感を遥かに超えた先で観客を待っていたようだ。
“I’m just a kind man」”はミディアムテンポのメロディーの中に温もりある切なさを詰め込んだ至極のナンバー。溢れ出るグルーヴの波が会場全体を飲み込むと、主導権は既に彼らが握っていた。
「僕にとって過去はとても大事で、過去が突き動かすことって沢山あるなと思っていて。」
Vo.ネギユタカはMCでそう語ると、彼らなりの過去に対する想いを乗せた”ラガマフィン”へと続く。
ゆったりとしたテンポの中に優しく、丁寧に言葉を置いていく。内に秘めた炎に少しずつ薪をくべるように、この想いの炎の絶やさぬように。力強く開いた瞳は、逸らすことなく自らの過去をしっかりと見つめているようにも思えた。
ラストナンバー”We walk”は、今のこの時代にアンセムになりうる名曲。平易な言葉で敢えて言うとするならば、とにかくハッピー感が溢れていた。ジャンルレスでありながら、日本的な懐かしさを持ち、そこが観客との距離を瞬く間に縮めてしまう。
彼らのステージは圧巻だった。過去が今を突き動かすのなら、きっと今日という日は彼らにとっても、観客にとっても未来を変える力を持つ「過去」となったに違いない。
Mimeのメンバーがステージ上に姿を表す。Vo.ひかりを筆頭に、メンバーはリラックスした表情を浮かべている。これから始まるとっておきの時間を楽しむ準備はできてるみたいだ。
丸みのあるギターの音色がムードを演出する。頭を空っぽにして身を委ねる、そんな安心感と包容力が会場を包み込んだ。
シンセサイザーの音が印象的な”Driftin’”はビート感とカラフルな音色が印象的なナンバー。Vo.ひかりの歌声は、煌めきと妖艶さを行ったり来たりしながら曲に馴染んでゆく。時として赤く燃え、青く澄んで、どこまでも透明に。メロディーや音に対して、声という楽器で応えていくライブに自然に胸が躍った。
続く、”Let your love grow”は時間を刻む秒針のように正確に鳴るドラムのリズムに、ギターの音がスパイスを効かせる。飛距離のある歌声は、地下にあるこの会場からどこまで伸びてゆくのだろうか。色っぽい鍵盤の音色は夜をもう一回り深くしたみたいだ。
オレンジ色に照らされたステージ上でラストナンバー”Foreign Mind”が眩しく躍動する。身体は無意識的にステップを踏み、自然と手拍子が巻き起こった。メンバーは音楽が連れてきた幸せを噛み締めると、美しい光景の残像と、心踊る音像を残してステージを後にした。
続くは6人組男女デュオバンド、nica。
開始早々、彼女たちの奏でる滑らかな感触が鼓膜を刺戟する。心の奥深くに沈んだ感情を呼ぶ法螺貝のようなサックスの音色を合図に”I Will”が始まった。少しずつ楽器が加わりながらサビで一気に加速すると、ダンサブルなメロディーが彼らの世界へ観客を誘う。
“Lemonade”では、異なる声質を持つ二人の声が融け合う融点で曲の奥行きがぐっと広がっていく感覚がある。無駄の無いタイトなサウンドの中にも随所に、音楽に対する少年のような遊び心が詰め込まれていた。拳を突き上げる高揚感ではなく、そっと目を閉じて身体を揺らすのに最適な美しいメロディーが身体中を埋め尽くした。
「この東京に夢を持って出てきて、音楽で頑張っていきたいという気持ちを込めた曲」そうVo.紹介するとラストナンバー”NEON”へ。悪戯な煌めきを撒き散らしながらも、無機質なネオンの光。その光一つひとつに物語があるように、nicaというバンドの照らす物語を壮大なスケールで描いて見せた。
彼女たちが掲げる【Urban Jazzy Pop】。鋭い感度で研ぎ澄まされたサウンド、その中に溶ける脆く人間らしい歌詞はまさしく「都会」を象徴しているかのようだった。
今回のイベントのトリを飾るのはbirds melt sky。彼らのライブは初速が速い。
深い黒を連想させる混沌としたビートから始まった”Bones”。ディジュリドゥ(長い筒状の金管楽器)の、何かの鳴き声に似た音色を感情的に乗せてゆく。ダンスチューンでありながら一筋縄にはいかないその天邪鬼な姿勢も彼らの持ち味。独特の間合い、世界観で次々と音を重ね、ボルテージを一気に上げていった。
続く、”silence”でもその勢いは衰えることなく進む。彼らの奏でる音楽はそのBPMに関わらず圧倒的な勢いがあった。地を這う重たいサウンドと、宙に舞う軽やかな音色が乱れ打ちのように繰り返され、観客の鼓動は彼らの鳴らすテンポを刻む。神秘的な音を緻密に組み合わせ、それを肉体的に昇華すること。音を聴くというより、音を浴びるという表現がぴったりと当てはまるライブを見せてくれた。
最後のその一瞬までステージ上で激しいモーションを繰り返した、Vo.シンゴマエダ。吹き出した汗が飛沫となってライトに反射して光る光景は、まさしく命を削るという言葉にふさわしいパフォーマンスであった。
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