下北沢ReG店長・井上和也の一癖二癖ある業界の輪【株式会社弦唸 ヒゲちゃん】

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私「下北沢ReG」の店長を務める井上(みんなからは下の名前“カズヤ”と呼ばれています)が、音楽業界の仲間との対談を通じて、今の音楽業界にある課題や将来の展望について語り合うコーナー!語り合ったところで何が得られるかわかりませんし、読んで頂いた方に何をお伝えできるかもわからないのですが、見切り発車でスタートします!


Text:井上和也

井上:第1回目の反響があったのかないのかわかりませんが、気にせず気ままにお送りするこのコーナー。第2回目のゲストは、ライブハウス経営を突然やめて物販会社を設立するという、これまた業界の異端児“ヒゲちゃん”にお越しいただきました。ヒゲちゃんよろしくお願いします。

HIGE:よろしくお願いします。

井上:ヒゲちゃんとも本当に古い付き合いで、最初は群馬のライブハウスTRUST55のブッカーとしてだったよね?

HIGE:そうですね。ブッカーというか、ただの兄ちゃんというか輩(ヤカラ)というか…。

井上:俺がやってた(バンドの)GELUGUGUと、ROTTENGRAFFTY、MARSAS SOUND MACHINEで行ったよね。超満員で地獄のような暑さだった(笑)。その数年後に、ヒゲちゃんが自分でライブハウスを作るっていう相談というか決意表明を聞かせてくれた時は嬉しかったなー。

HIGE:TRUST55で行きましたね。あの時は若くて、怖いものなんて何もなかったっすね(笑)。

井上:俺は今の職場である下北沢ReGを含めて3つのライブハウスで働いてきて、いずれも店長やブッキングマネージャーという大事なポジションにはいるけど、経営者という経験は今までないわけで。その点、ヒゲちゃんは独立して自分でライブハウスを建てて経営者になったじゃない。不安とか怖さとかはなかったの?

HIGE:最初は全くと言っていいほど無かったです。ただ、2年目過ぎですかね。怖いというか、バンドが着実に少なくなってきてるな…って、不安視し始めたのは。

井上:確かに当時、俺は滋賀県、ヒゲちゃんは群馬県でちょっとバンドが少なくなっているのは感じていたね。「あれ?平日のブッキングって、こんなに難しかったっけ?」みたいな(笑)。バンドをやる人口の減少について語り出したら超ロングイタンビューになっちゃうので割愛させてもらうけど、経営自体は難しかった?

HIGE:4年目からは地獄絵図でしたね。ライブハススを作るのに1500万借金したので、それの返済が…みたいな感じで、本当に借りた方々には迷惑をたくさん掛けてしまって。結局4年間で全額返済する予定だったのが、6年目に全額返済できました。

井上:出た、具体的な数字!これ載せて大丈夫?(笑)でもこれ読んだ人は「1500万円でライブハウス建てられるの?」って思うかもしれないけど、ヒゲちゃんはDIYで壁の打ち付けとかの作業してたよね。それでこの額だから、やっぱライブハウスって金掛かるな~…。

HIGE:そうなんですよね。大体地方でも5000万は掛かりますね。すごい具体的な数字ですけど(笑)。俺の場合は、SUNBURSTを始める前に大工とか鳶とかの頭という総合的な仕事を自分で独立してやっていたので、水道と設備以外は全部やりました。今のSUNBURSTのオーナーのマルと、副店長だった山崎(only he knowsのベース)と、創業メンバーみんなで2ヵ月で作り上げたんです。マルに至っては箱に住んで作業をしていたので「血尿が出た!」って言ってました(笑)。

井上:ハンパねぇ。そこまで自分達で作り上げたんだね。それなら、本当に愛情もたっぷりだったんじゃない?俺もSUNBURSTでライブをやらせてもらったけど、すごく温かみのある箱だった。群馬の高崎っていう土地で、SUNBURSTはキャパも大きくないから自分達の持ち込み企画で勝負出来たし。そういえば昔、ヒゲちゃんが紹介状を書いてbacknumberを滋賀にツアーで呼んだことあったよね?

HIGE:そうですね。backnumberのカズヤ(ベース)は、俺がこの業界に入るキッカケになった人で、イベンター時代にNOTHING(backnumberのカズヤがベースを務めていたバンド)をよく呼んでいて、俺がライブハウスで働こうと思っていると言った時、dustboxやSHACHIとかを紹介してもらったりして。それで、まだ売れてない時に「ツアーを組めない!」とか言ってて、俺は1年で10バンドとか組んでいたので「滋賀=兄さん(井上和也)」というわけで、お世話になりました。

井上:backnumberが初めて滋賀に来た時は、動員0とか1だったんだけど、後のち売れた他のバンドも、最初のツアーなんてそんなもんなんだよね。そこから自分達をどう磨いていくかが大事なわけで。だから今これを読んでいるバンドマンは地方で動員0でも未来はあるぞ!また無責任な発言してるけど(笑)。そういえば俺が上京して、backnumberのライブに遊びに行きたいってカズヤ君に連絡したら、ちゃんと対応してくれたんだよね。彼はバンドマンの鏡だね(笑)。ヒゲちゃんはよくバンドをツアーに回してくれたね。地元のバンドを育ててるというのはすごく伝わってきた。

HIGE:育ててもらったのはコッチですよ。本当に高崎の奴らには感謝しています。理不尽極まりなさすぎて最近は会うたびに「色々すまん」と言って廻っております(笑)。

井上:ヒゲちゃんらしいな~。冒頭の紹介でも言ったけど、ヒゲちゃんは自分のライブハウスをやめて(譲って)、ライブハウスとは違う会社を始めたじゃない?単純にすごいと思うし、今これを読んでいる人が何か新しいことを始めようと思ってるなら、ヒゲちゃんの経験がヒントになるかもと思うので、そのへんの話を教えてよ。

HIGE:そうですねー。まず譲った経緯なんですけど、2015年の7月15日に俺自身の気持ちが折れちゃったんです。「向いてないなぁ」「俺はツマラナイ奴だな」って。で、バンドに嘘付くのも嫌だったので、それなら向いている人にやってもらった方がいいかなと。それで、次の日マル(現SUNBURSTオーナー)に声を掛けて。最初はオーナーとして残ろうかと思ったんですけど、“小手”ってバンドをSUNBURSTで見たら「全部断捨離しよう!」って気持ちになりました。それで、その年の12月30日に引退したんです。実は、カミさんとかにも辞めるってことは事後報告で(汗)まー、俺がこんな性格なのはカミさんもよくわかっているので、ある意味諦めているというか(笑)。

井上:なるほど。

HIGE:2015年の10月ぐらいまでは、(引退後は)サラリーマンをやろうと思ってたんですけど、元々SUNBURSTを株式会社にしようと動いていまして、そんな時に物販の仕事でかなり大口の依頼がいきなり舞い込んできて。「税金ヤベェじゃん!会社にしないとヤベェじゃん!」ってなって、それなら物販の会社やるかって。まー、なんだか申し訳ない話になっている今日この頃です。

井上:自分が経営者だからこそ、気持ちが折れる瞬間ってのは凄まじい衝撃なんだろうね。俺も仕事で心折れたりするけど、ヒゲちゃんのそれとは比にならないぐらい軽いもんだと思う。でもそういう時って、なぜか新しいこととかきっかけって訪れるもんなんだよね。ヒゲちゃんはライブハウスを経営しながら、バンドのTシャツ製作とかをサイドビジネスみたいにやっていたのが、このタイミングで大きな仕事になるっていう。それって自分の仕事を続けてきたり、ライブハウスで色んな人と繋がったりしたからだと思うよ。じゃぁ、ライブハウスとは違う業種である今の会社を設立して、具体的にどんなことをやっていて、さらにその中での面白さとしんどさを教えてよ。

HIGE:ウチは株式会社弦唸(ゲンテン)という会社で、主にバンドや企業のMD(販促物やグッズ)を製作してます。Tシャツ、ラバーバンド、ラバーキーホルダー、バウンスバンドやぬいぐるみなど、作れないものはほとんどありません。中国にも事務所があって海外生産品、特にラバーバンドは得意中の得意です。他のグッズ製作会社と大きく違う部分は、完全検品して日本に輸入して、自社でも検品しているところですかね。それは、他社はまずやっていないので、クオリティが高いです。LOOPSTATION(loopstation.jp)っていうサイトで、ラバーバンドやバウンスバンドとかのECサイト事業もやっています。実際やってて思うのは、やったことのない案件とかでイメージ以上の商品ができ上がった時の面白さはありますよね。こんな図面を投げたら、こうなるから…とかすぐ考えてしまうんです、この容姿で(笑)。中国の方って根本的に日本人と考え方が違うので、中国の方の考え方はものすごく面白いです。その反面、わかってくれないもどかしさや会社としてのお金の廻し方はしんどいです。しんどいというか、なんで売り上げ立ってるのに、こんなんなの?とかはありますね。

井上:すごいワールドワイドな話。確かにCDも中国・台湾でのプレスが多いし、これからの時代はワールドワイドな視点が必要ですな。ライブハウスって全国にたくさんあって、それぞれ自分達の色というか、売り文句をうたってバンドに出演してもらって…って流れだけど、正直こりゃダメだっていうライブハウスもたくさんあるわけで。そういうふうにMDの会社でもピンキリなんだね。値段だけではないクオリティを求めていくってことも企業努力だね。うーん…、なんかすげぇなぁ。ヒゲちゃんかっこいいわ(笑)。では最後に、これだけは言っておきたいことってある?宣伝でもいいよ(笑)。

HIGE:そうですね。ライブハウスって懐古主義なところがあって、企業努力をしてないところが多いと思んですよ。俺がやっていた時のSUNBURSTもそうだったし。もっと企業努力は必要ですよね。バンドさんは見せ方とかそういうものもありますが、頭で考える前に、もっと見える行動をしたら血となり肉となるのかな。LOOPSTATIONってサイトでラバーバンドとかラバーキーホルダー、バウンスバンド、iphoneケースなどの発注を受け賜っております。サイトにはありませんが、Tシャツなども製作しておりますので、是非見に来てください!そして、仕事ください(笑)。

井上:俺もヒゲちゃんに物販の仕事ふるしかないな(笑)。ヒゲちゃん今日はお付き合いありがとうござました。またゆっくり飲み明かしましょう!

HIGE:あざしたっ!

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井上和也

萩野英将(HIGE)

profile

井上和也
1977年6月15日生まれ 39歳。立命館大学卒業後、滋賀県のライブハウスで10年以上にわたりブッキング業に携わる。同時に大阪SKA COREバンドGELUGUGUのギタリストとして全国各地でライブ活動を重ねる。GELUGUGU脱退後の2013年に上京しライブハウス下北沢ReGの店長に就任。またEAT THE ROCKやONION ROCK FES-CHIBA DE CARNIVAL-など野外フェスを自ら代表となり運営する。

profile

萩野 英将(HIGE)
36歳3児の父。21歳の時に足利でイベンターを始め、2年で50本弱のイベントを行う。24歳の時に自営で独立していた鳶職を辞め、高崎TRUST55にブッキングマネージャとして入社し、オラオラブッキングをし何故か話題になる。27歳の時に、店長オーナーとして、GUNMASUNBURSTを立上げた後、34歳でいきなりの謎の引退。現在は株式会社弦唸の代表取締役で飛んだり跳ねたりしてる。一応バンドもやっている。

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