Text:agehasprings Open Lab.
私は「どんな音楽が好きなんですか?」という質問に、いつも困る。それは、私の好んで聴く音楽が、メインストリームではないコアなジャンルであるというのと同時に、一般的でないが故に説明することが何とも難しいからだ。結果的に、往々にして「まぁ~、、誰も知らないようなの聴いてますねぇ…。結構叫ぶ感じで、、うるさい系の?…」というように、オブラートに包み過ぎて、結局何を言いたいのかがよく分からないような、リコッタチーズをたっぷり使ったパンケーキのごときフワッフワな感じで答えてしまうことが多いのだ。インスタグラマーか、私は。結局、質問してきた相手も「はぁ…」という、煮え切らないリアクションを取るしかないわけで。そうなってくると、もう地獄。無理やりピアスとかを褒めて、話題を逸らすしかない。それ何処で買ったの?超可愛いね。
しかし、私としては大好きなPHC/Metalcore。通称「皆が知らないような、叫ぶ感じのうるさいヤツ」をもっと広めたいわけで。そこで、今回は誰もが知っているような楽曲のカバーを入り口に、皆が知らないバンドを知ってもらおうということで、PHC/Metalcoreカバーをオリジナル曲と共に紹介していきたいと思う。髪型からファッションから、一通り褒め倒して困り果てている君達。これで一安心だ。「〇〇の〇〇とかカバーしてるバンドなんだけど」と言えば、「ホント!?聴いてみたい!」となること請け合い。あとは何も考えず焼酎ロックでも頼めばいい。
では早速どうぞ。
Ed Sheeran「Shape Of You」Drakeの「One Dance」を抜き、今や世界で一番再生されている曲となったEd Sheeranの「Shape Of You」。有名である分、カバーしているバンドも多いので、今回はOur Hollow, Our HomeとSECRETSの2組をピックアップ。
BPMやメロディーラインを忠実に踏襲しながらも、しっかりとバンドサウンドに落とし込んだカバーに仕上げているSECRETS。片や、歌い出しからスクリームパートをぶち込み、全体にドライブ感をプラス。ソリッドでメタリックなカバーに仕上げているOur Hollow, Our Homeと、同じ楽曲のカバーとは言え、バンドによって千差万別。この時点で「ちょっと面白いかも」と思っていただけたのではないだろうか?
トラップのビートとスピット系のラップで全編構成されているが故に、バンドにとっては完全にカバー難関であるこの曲を、今やカバー職人としても名の知れたOur Last Nightがカバー。ラップパートを巧みにメロディーとスクリームに変換しながらも、曲の肝である「Bitch, be humble」のコーラス部分を忠実に残している。それにより、原曲を壊さない絶妙なバランスの仕上がりになっているのは、流石カバー百戦錬磨といったところだ。
Bruno Marsの80’sファンクなこの曲を、Dance Gavin Danceがシャレオツにカバー。卓越した演奏スキルとアレンジ力。そして、クリーンボーカル・Tilian Pearsonのズバ抜けた歌唱力により、まさしくPHC版「That’s What I Like」として正統にアップデートされた、お手本のようなカバーだ。それでいて、DGD節とも言える変態的なフレーズを随所に差し込み、オシャレに聴かせるセンスは相変わらずでニクい。
カバーで忘れてはならないのが、映画や楽曲自体の爆発的な大ヒットもあって、ネタ曲として局所的にバズりまくった、フランスのメタルコアバンドBETRAYING THE MARTYRSによる『アナと雪の女王』の主題歌「Let It Go」のカバー。ブラストビートとスクリームが一気に押し寄せる大胆なメタルコアアレンジで、サビの「レリゴー」のフレーズが来るまで、一体何のカバーか解らない。いわゆる原曲ぶっ壊しアプローチも、ある意味この界隈のカバー曲の醍醐味。確実に雪山で凄惨な事件が起きてるだろ、この曲。
Adeleの名曲「Hello」もカバーが非常に多い楽曲の一つだ。圧倒的な歌唱力を持つAdele故に、シーン屈指の歌唱力を持ったボーカリストを擁するバンドによるカバーが多くみられる。早速2組紹介していこう。
両バンドともオリジナルに忠実なピアノをフィーチャーしたアレンジながらも、それぞれのボーカルによって異なる味わいが面白いところ。Dayseekerのボーカル・Rory Rodriguezは、Adeleに通じる重厚で伸びやかな歌声で、楽曲の質感すらも忠実にコピー。対するThe New Lowは、ツインボーカルの特性を生かし、異なる声質のハーモニーで聴かせるアレンジに。どちらも甲乙を付けづらいほどのハイクオリティーな出来で、「お前ら歌上手すぎるだろ。ドコ中だよ」と、小一時間問い詰めたい。
Justin Timberlakeが所属していたことでも知られる、コーラスグループ・*NSYNCのメロウなクリスマスソングをIssuesがメタルコア/ポップコア調にカバー。天才ボーカリスト・Tyler君が、*NSYNCに比肩するスウィートな歌声で原曲を忠実になぞりながらも、メタルコアのバッキングでより肉体的にアッパーにビルドアップされた楽曲は、まさに悪ガキのクリスマス。「ホーム・アローン」のイタズラシーンで是非流してほしいぞ。
これ以外にも、数多くPHC/Metalcoreカバー曲は存在するが、一貫して言えることは、どれも本家に比肩すると言っても過言ではないほどのクオリティーを誇っているということだ。アレンジ力、歌唱力、演奏力。どれをとっても、一般的な「うるさい系」のバンドのイメージを余裕で飛び越えているところだろう。マジで皆バカみたいに上手い。そして、同じシーンにいるバンドといえど、そのサウンドスタイルは驚くほど千差万別で、探せば探すほど新しい音を鳴らしているバンドに出会えるというのも、このシーンの魅力と言えよう。カバー曲から聴き始めるPHC。皆さんも始めてみてはいかがだろう。
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