8月27日にOSAKA MUSEにて、心斎橋アーティスト見本市2024が開催された。
このイベントはライブハウス「OSAKA MUSE」のブッカー、CD流通などのレーベル業務を行う「myh records」の代表、音楽配信プラットフォーム「Eggs」の担当、ライター等で活動するSNS発の音楽キュレーター「遊津場」の、異なる視点から常に新人アーティストを追っている4人が主催するイベントで2022年より開催されている。
それぞれの視点を活かしたブッキングは他では見れない組み合わせを生み、毎回強い化学反応が起こっている。3回目となる今回はpachae、アツキタケトモ、DeNeel、GOODWARP、オープニングアクトでCleoが出演し、スタートから非常に満足度の高いライブが展開された。その模様をレポートする。
①MC無しで幅広い楽曲を味わせたオープニングアクト・Cleo
MV「hometown 」
1組目はオープニングアクトのCleo。大阪を拠点に活動する5ピースバンド。
音源で聴くと、シティポップなロックを鳴らす印象があり、ステージ上の5人もフォーマルなイット(Vo.Gt)もいれば、ニット帽でカジュアルな坊野(Gt)、サポートの3人もそれぞれの個性が見えるファッションで”オシャレ”という印象を持った。しかし1曲目の『海底マイル2000』から目を引くほどのアクティブな演奏であり、イットの吐き捨てるようなボーカルパートも会場の1人1人を刺してくる攻撃的なナンバーを見せた。2曲目は『ワンナイト・スタンド』一転、会場のミラーボールの照明も似合うスロウでメロウなナンバーを鳴らす。無駄なく折り重なる演奏に、紅一点の蘭珠(Sup.Key)のコーラスと合わさったイットのボーカルによって、重厚かつ上品な時間が流れる。続いて3曲目の『happy end』はまた味の変わった軽快なサウンド。「皆さん、一緒に踊ったりしてくれますか?」というイットの問いかけに、会場も思わずクラップだけでなく、サイドステップを踏む。ふだち(Sup.Ba)の足もリズム良く高く跳ね上がる。
「楽しい楽しいCleoのライブも残り2曲となりました。Cleoでした。ありがとうございました」と告げ、モダンでユニークなキーボードのイントロが特徴的な『ざんねん!XXXがたりない!』へ。緩急のあるサウンドに加え、イットと蘭珠の所作も魅力的。そしてラストは『洗いたてのリネンのにおいと』。『happy end』とはまた違った感じの晴れやかで軽快なナンバーで、有馬(Sup.Dr)のドラムが鳴るたびに心の湿気が取れるような感覚がある。そして全員の心軽やかにして「また会いましょーねー」とというイットの言葉と共にライブは終了した。
ほぼMC無しで20分に楽曲を詰め込んだ彼ら。その5曲でかなり楽曲の幅を見せたはず。坊野のギターとリズム隊2人の強固かつ柔軟なサウンドに、世界観を決めるイットの男性ボーカルと蘭珠の女性コーラスが挟み込まれている。この音のサンドイッチに、会場はすっかり病みつきになっていた。
<セットリスト>
1.海底マイル2000
2.ワンナイト・スタンド(short ver)
3.happy end
4.ざんねん!XXXがたりない!(short ver)
5.洗いたてのリネンのにおいと
②夏はまだまだ終わらない!飽きないpachaeのライブ空間
MV「タイムマシン独奏曲」
2組目はmuffin discs所属・大阪の3人組ポップスバンドpachae。この夏はジャイガなどの大型イベントにも出演し、このライブの翌日にはアニメ主題歌も発表した話題のバンドの1組である。
エレクトロなSEが鳴り、濃いブルーの照明に照らされる中、拍手に応えながら登場。そして1曲目からアップテンポなナンバー『トロイメライ』でスタート。音山(Vo.Gt)のボーカル、バンバ(Gt)のギター、さなえ(Key)のキーボードのフロント3人の際限ない音圧に、フロアも自然と手を挙げていく。続けて笠置(Sup.Dr)の会場に一体感を持たせるドラムのリズムから始まったのは『ハツがハツラツ』。その軽快なリズムに楽曲やMVにも出てくる血液を思わすような赤い照明も相まって、細胞活性化が進むミュージック。フロアも雰囲気が高揚していくのが分かる。ただそれを一瞬で落ち着かせる<僕らは友達なんかじゃないよ>という印象的な歌い出しと、甲高いギターで始まったのは『非友達』。しっかりと歌詞も聴かせつつも、間奏やアウトロは余白を余すことなく埋める複雑かつボリュームのあるサウンド。1人1人の持つ感情や記憶に作用してしてきた。
ここで「改めまして、pachaeです。よろしくお願いします!」とMCに入る。集まってくれたフロアとイベンターへの感謝の後、音山は「僕はまだまだ夏を続けたいなと思っているので、夏に皆で歌う曲を作ってきたんですよ。ただ皆で一緒に歌いたくて作ったんですけど「難しくて一緒に歌われへん」っていうツイートされました」という楽曲『ダンシング・エモーション』を披露。私もライブで聴くのは2回目だが、この合いの手、今回も途中で噛みました。ただ不思議と口ずさみたくなるし、「ヘイ!」のパートは会場しっかり合わさっていて、音山も「最高!」と応える。そんな夏の景色から一気に深海に引き込んだのは『チョウチンカップル』。前曲の軽快なリズムは引き継ぎながらも、アクアリウムのような光と闇のコントラストを感じさせて会場を包み込む。そして硬派なロックサウンドでまた違ったクールさを見せた『7』へ。ラストのみっつー(Sup.Ba)のベースの1音まで聴き応え抜群である。
最後のMCで「今日はこの後、東京から来た3組がブチかましてくれると思うので、最後まで楽しんでください。pachaeでした!」と話し、『タイムマシン独奏曲』『遣る方無いブルース』で最後まで盛り上げて、強烈なパスを後の出演者に渡した。30分で8曲も見せてくれたが、照明はもちろん、フロアのクラップまで1つとして同じ温度のものが生まれないから飽きもせず盛り上がれる。それを可能にする無限の音の絡み合いに、もうずっと耳の食欲が止まらなかった。この夏男の鳴らすバンドサウンドを前にして、夏バテは起こらない。
<セットリスト>
1.トロイメライ
2.ハツがハツラツ
3.非友達
4.ダンシング・エモーション
5.チョウチンカップル
6.7
7.タイムマシン独奏曲
8.遣る方無いブルース
③多彩なジャンルを合わせたサウンドとエモーショナルな歌唱で魅せたアツキタケトモ
MV「luv U」
3組目はアツキタケトモ。自身の楽曲はドラマ主題歌、映画主題歌にも起用され、楽曲提供も行う新世代の音楽家。今回が2回目の大阪でのライブだが、9月27日には梅田CLUB QUATTROでのライブ、10月にはMINAMI WHEELへの出演も決定している。
SEが鳴り出し、ギター、ベース、ドラム、キーボード、マニュピレーターの5名のサポートメンバーがフロアにクラップを促す中、黒いサングラスを着けたアツキタケトモが登場し『現実.pdf 〜オケオーール!!!』からスタート。様々なジャンルが融合した先鋭的なサウンドに、彼の<どうでもいいことばっか ガチどうでもいいことばっか><幸せならOKです>という人間臭い歌詞が曲に確かな肉体性を持たす。続いて「MUSIC LOVERのみなさん、踊りましょう!」と伝えて始まったのは『#それな』。人と分かり合うことの難しさを歌ったこの楽曲。彼もステージ上でリズムを取りながら、フロアの1人1人の心の扉をノックして目を合わせにいってるようにも感じた。そしてハンドマイクに変えて『Outsider』へと繋げる。バンドメンバーのギターソロやキーボードソロもあり、生演奏と打ち込みの音によるハイブリッドなグルーヴがさらに高まっていき、会場もそれに連られて拍手の音も大きくなっていく。
MCで「今日はPOPなファンクなダンサブルな、いろんな音楽が混じり合う、そんな夜に呼んでいただいてありがとうございます。存分に心の気持ちを蓄えていけたらと思います。よろしくお願いします」と話し『Untitled』へ繋げる。静かでどこか侘しいメロディから<お前は誰だ?>と叫ぶサビが非常にエモーショナル。フロアを圧倒し、曲の終わりでは一瞬時が止まったような静けさに。その時間も束の間、ダークさも併せ持つファンクなサウンドが鳴り出し、”本当の好きは何か”を問いかける曲『luv U』を投下。曲中でもいろんな歌声でフロア1人1人の内なる部分の解放へ誘う。
最後の曲の前にMCで「この曲は今の気持ちを詰め込んだ大きな壮大なラブソングじゃなくて、帰り道に「あいつケーキ好きだったな」って思い出して、買ってきて一緒に食べて笑い合う。そんな小さいけど大きな温かいラブソングをお届けして、次の人へバトンを繋げます」と『キスミー』を届ける。これまで現代社会に強烈なパンチラインを残すリリックの曲も多かったが、最後に1つ1つの言葉が優しく積もっていくこの楽曲によって、しっかり大阪という場所で新たな尊い繋がりが生まれたように感じた。
創造力を持って想像を促す生粋の音楽家のライブは関西のライブシーンに新鮮に映った。
<セットリスト>
1.現実.pdf〜オケオーール!!!
2.#それな
3.Outsider
4.Untitled
5.luv U
6.キスミー
④攻め込まれたら止まらない音楽ファイター・DeNeel
MV「導火」
4組目はDeNeel。"OSAKA REVIVAL POP"を掲げ活動中の4人組新鋭バンド。現在は東京を拠点に活動しているため、地元大阪でのライブは7月上旬の見放題以来となる。DeNeel初のOSAKA MUSEでのライブなこともメンバーは楽しみにしていた。
「世界一楽しみましょう。よろしく!」と中野(Vo)が叫び始めた1曲目は『Hz』。大らかで猛々しいサウンドにクラップが巻き起こるも「まだちょっと緊張してるな!」とフロアをさらに煽る。そして「まだまだ行きましょうよ!」と頭も思わず激しく揺らす浦野(Gt)のギターが印象的なロックチューン『興味ない』へ。今度は冷徹なダークヒーローのような切れ味があるサウンドが鳴り響いた。
MCでフロアへの感謝を伝えた後は『富と果実』を演奏。一気に大人の色気を感じる芳醇な楽曲とサビのリズムの良さがだんだんクセになる。そんな色気の香りが残っている中で、その空気を一気に引火させたのは『ブラックアウト』。「初めての人も着いてきてください!」と中野は言っていたが、いやいやこんな爆発起こされたら面食らう。しかし<Lalala>とラスサビ前に合唱する頃には、もう既にフロア全員が共犯者になっていて、その楽曲の爆発力をさらに押し上げていた。そして「新曲やります」と初披露の楽曲をここで投下。中野がさらに一段階タガを外したようにフロアで体を振り乱す姿があったAメロは激しいが、サビは優しく歌い上げていて、このギャップが心地よい。加えてシンガロングのパートや、間奏では浦野のギターも、龍野(Ba)のベースも、日野(Dr)のドラムもボルテージが上がっていくなど、いつも以上に全員が全員ブチ上げていける見どころの多いナンバーだった。
続くMCでは「すごい力を持って歌っていられている」と感謝。そして11月に始まるツアーへの思いも語った後、本日のイベントタイトルにも触れ「多分(見本市じゃなくて)日本一の間違いだと思う」と話し、「音楽とみなさんのパッションをぶつけ合っていきましょう!」と『雨鳥天』で後半戦スタート。本気で日本一を取りに行くバンドのスケールの大きさがあることを見せつけるような楽曲。先陣を切る中野はもちろん、日野のドラムも後方からドデカい大砲を打ちまくっているような隙のない音の迫力がある。そして最後は今日一番大きいクラップが鳴り響き、加えてジャンプまで起こった『Vision』。中野だけでなく、浦野も日野も前に出て演奏。最後まで躍動感が失われない30分だった。
時に武将のように勇ましく、時にスナイパーのようにクールに、時に爆弾魔のようにデンジャラス。あらゆる武器とガッツで確実に相手の心を仕留めるライブ。この日もしっかり勝鬨が上がった。
<セットリスト>
1.Hz
2.興味ない
3.富と果実
4.ブラックアウト
5.新曲
6.雨取天
7.Vision
⑤キラキラを共有したGOODWARP。続きはまたライブハウスで
MV「月光花」
5組目はGOODWARP。13年目のロックバンドは8月には2曲新曲を配信リリースするなど、精力的な活動を展開するバンドが本日のトリを務める。
萩原(Ba)のベースが鳴り出して『真夜中のダンス』からスタート。吉崎(Vo.Gt)の「楽しもうぜ大阪ー!」「会いたかったぜー!みんな調子はどう?」「いーーね!」と心から楽しそうに叫ぶ姿と、その月夜のネオンポップと言えるそのバンドサウンドにコールアンドレスポンスも重なって、歓びの共有スピードが尋常じゃなく早い。その多幸感のまま、藤田(Gt .Cho)のユニークなギターイントロが鳴り『金魚』へ。吉崎はギターを置いてスタンドマイクで歌う姿にフロア全体が時を忘れるダンス。藤田のギターソロ、萩原のベースソロ、コウチ(Drs .Cho)の安定感のあるリズムに会場のクラップも決まる。
MCに入り、挨拶をした後「熱いステージが続いていますが、調子はどう?いい感じかい?まだまだいけますか?」と聞くと会場もしっかり応える。「久しぶりの大阪でワクワクしてました。やっぱりライブするにはグルーヴが必要だということで、先週4人で一泊二日、海に潜ってお魚さんを見てきました」と持ち味の仲良しエピソードを話す。「今日はその時のキラキラした景色と同じような景色を僕達の音楽を通じて皆さんにお届けしたいと思っております!」と『BOUREI』がスタート。ゆとりも感じるサウンドの心地よさが絶妙で、サビではそのキラキラを過不足なく届けてくれる。私の目の前では人もお魚も夏の幽霊もみんな踊っていた。そして新曲の1つ『月光花』を披露。また違ったジャジーさがあって品のある楽曲。そしてダンサブルなんだけど、どこか絡み付いてくるサウンドなのがクセになる。
続くMCでは軽妙なトークの後、藤田から10月にMINAMI WHEEL出演、11月22日に大阪での自主企画「YOASOBI vol.13」と大阪での予定を発表。吉崎は「慣れるって大事なことだと思ってるので、今日初めて見た人も次はどんどん良く聴こえてくると思います。なので懲りずにまた遊びに来てください」と伝え、「また会いたい!」という言葉と共に『HINT』を演奏。まるで朝の爽快感をこれでもかと詰め込んだ明るくスッキリとしたナンバーを前に、クラップに加え、縦ノリもせずにはいられない。まだまだ充満しているキラキラの中、最後は『サーチライト』。もうそこには年齢も立場も超越した青春の1ページが広がる。曲中、シンガロングがある中で、吉崎は「もう無理かもって時も、元気すぎてしょうがないって時も、またライブハウスに帰ってきてください。そこでまた会いましょう。GOODWARPでした!」と伝えた。そのアウトロが鳴り終わるまでキラキラを増やし続けた彼らとは、すぐにでもまた遊びたいに決まっている。
その気持ちはフロアも同じでアンコールが発生。応えた彼らは「意外と残された時間は少ない。もう1000回もライブをすることはないなと移動してる時に話しました」という気持ちも語る。だからこそ1本1本を大切にする気持ちも込めて『レイニー白書』を最後に演奏。そこには決して背伸びせず、あるべき命でありのままに踊ることの大切さ、そしてそれができるGOODな場所はライブハウスであることを最後まで示していた。
〈セットリスト〉
1.真夜中のダンス
2.金魚
3.BOUREI
4.月光花
5.HINT
6.サーチライト
En.レイニー白書
今回の見本市は細胞レベルまで音楽で染め上げることのできるバンドとアーティストを揃えた。
私はこのような間奏の1秒も隙のない多彩な音楽が、長くリスナーを守ってくれると信じているし、ジャンル問わず創作意欲のようなものも駆り立ててくれると思っている。そしてそれを繋いでいくことが、世の中のためになるとも考えている。
それを4者のやり方でこれからも発信していくし、各出演者もツアーや自主企画、イベント出演が決まっているため、触れられる機会は沢山ある。現代の音楽シーンに燻る想いがあるリスナーはもちろん、何かを変えたいという演者の方も是非ライブハウスに会いに行って刺激を受けてほしい。
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