トリプルギターmusbimeが作り出す無二の音像
2024年3月に始動したmusbime(ムスビメ)は、都内を中心に活動しているバンドだ。メンバーは、けんもく(Vo./Gt.)、こいで(Gt.)たいせい(Gt.)、まもる (Ba.)、ばちお (Dr.)の5人。トリプルギターを擁した立体的でスケール感あるバンドサウンドが魅力である。
トリプルギターという編成を既に自分たちのサウンドの個性として昇華しており、メンバーが熱心な音楽リスナーであることに加え、バンドに対するモチベーションの高さも窺える。変拍子をキープしながら、リズムで緩急をつけることができるリズム隊のスキルにも注目したい。
2024年6月29日初音源となるシングル「一縷/いつかの勾配」をデジタルリリース。並行してライブも精力的に展開。2024年12月10日に「Eggs」内で新曲「ほつれたまま demo」を発表した。「ほつれたまま demo」は「Eggs」のみでの配信である(2025年1月現在)。
3ブロックのみの楽曲でもわかるmusbimeのスキル
今回ピックアップする「ほつれたまま demo」は、変拍子のタイトなドラムから幕を上げ、ゆったり起伏するベースと軽快なアルペジオギターが、ふわりと舞い上がるように、繊細な音像を作っていく。変拍子の上に、難なくライドオンして歌い始める、ボーカル・けんもくのリズム感も相当なものだ。声を楽器のように操り、バンドアンサンブルが作り出した音像の世界を踏襲し、クリアな歌声と綺麗なでメロディーの輪郭を形どっていく。
間奏でバンドアンサンブルが、音量と音数にクレッシェンドをかけながら、広がっていき、サウンドでストーリーを紡ぐように、次へつなげていく。次の瞬間、シューゲイザーを思わせるようなギターの轟音が降り注ぐ、サビへと展開する。ボーカルは、タイトなフレーズで進行する平メロのメロディーはリズムを重視したアプローチ、サビではトーンの力強さや発音を意識したアプローチと見せ、それぞれにしっかり見せ場を作っている。
音数の大胆な差し引きが印象的に残る楽曲だが、前半の淡々と繊細なサウンドと、後半のエモーショナルなサウンドと、はっきりとコントラストをつけているあたりも、演奏にしっかり気持ちがのっている証拠だろう。
そんな中で驚くのは、まった異なるサウンドアプローチの中で、軸を貫くメロディ―と歌声だ。サウンドが変化する中、既出したようにボーカルアプローチも変わっているのだが、クリアで少し浮遊感ある歌声の印象は変わらない。大きくわけ、イントロも含み3ブロックで構成された「ほつれたまま demo」は“demo”とついているだけに、ここから曲の尺が伸びそうな気配もあるが、3ブロックだけでも、このバンドの個性をしっかり鳴らしているあたりは、お見事、である。
文:伊藤亜希