トラックメイカーr3on(レオン)の初音源「stream」――女性ボーカルと作ったチルなグルーヴの最新形

トラックメイカーr3on(レオン)の初音源「stream」――女性ボーカルと作ったチルなグルーヴの最新形

2026/02/18

トラックメイカーとして幾多のアーティスト楽曲を提供しているr3on(レオン)。2025年に活動をスタートさせ、ジャンルを横断するルーツの深度と、楽曲のクオリティーの高さで注目を集めている3人組、Almiのメンバーでもある。  

1月21日にr3on名義でデジタルリリースされた「stream」は、作詞とボーカルをarum(アルム)という女性ボーカリストが担当しており、arumにとっても本曲がデビュー作となる。  

まず特筆すべきはトラックの完成度。キックやパーカッシブな要素が、跳ねたり、跳ねていなかったりするのが面白い。セオリーに収まらないセンスを感じる。キックは全体的にアタックを丸めた処理が施されているため、リズムが前に出すぎず、グルーヴをチルな浮遊感にしている。聴き手に“拍”を強く意識させないこの設計は、歌のニュアンスや息遣いを最優先に考えたアレンジと言えるだろう。音数を削ぎ落としながらも、1曲を通して空間の奥行きを確保しているバランス感覚もお見事だ。洒脱でありながら完結しないコード進行、鍵盤の音の配置には、近年細分化しているノーボーダーなオルタナティブR&Bの文脈を感じる。 

曲の核心を担う、arum(アルム)のブレスコントロール、芯のある歌声

そして、この曲の肝になっているのが、arumのボーカルである。日本語・英語・タイ語を自在に操る彼女だが、「stream」では英語詞を軸に、意味以上に“響き”や“温度”を重視してアプローチしていると思う。子音を立てすぎず、母音をフラットに伸ばすことで、言葉の意味以上に“響き”が前景化されている。ウィスパーボイスの感触を持続させながら、音程を曖昧にせず、ニュアンスにも頼っていない。ブレス混じりの発声でも、ピッチは常に重心を保っており、声がトラックに埋もれることもない。低音域と高音域の移行もじつに滑らかで、トラックの中を泳ぐように音をつないでいく。フレーズの終わりを自然に溶かすような歌い方で、感情を外へ放つのではなく、内側に沈めていくような余韻を与えるところもいい。感情の吐露ではなく、感情がゆっくり沈殿していく……そんな様子が、トラックとボーカルで表現されており、繰り返し聴いていると、徐々に日常の中に常駐する孤独と重なってくる。  

感情が言葉になる前の、自分の中で消化しきれない曖昧さ。この曖昧さをサウンドとボーカルの精度で描き切ったのが「stream」である。バックトラックと歌が同じ流れの中で呼吸して進んでいく。ここが、この曲を単なるチルな曲で終わらせていない理由だ。  

文・伊藤亜希


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この記事を書いた人

伊藤亜希

音楽ライター/編集者。学生時代から音楽雑誌に勤務後、アーティストのFCサイトの立ち上げ・運営などを経験。現在はフリーランス。『RealSound』『MUSICA』、FC会報、FCサイト等で執筆中。『Eggs』は未知の音楽に触れられ楽しいです!

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