長崎県佐世保市発のマリンブルーデージーは、海音(Vo./Gt.)、嶺香(Ba.)、すずき(Dr.)によるスリーピースバンドだ。平均年齢18歳で、等身大の感情を率直な言葉で掬い上げながら、メロディーを軸に据えたポップロックを鳴らす。2022年に結成され、ライブを中心に活動を展開。2024年からはハイペースで楽曲を発表。2024年12月には初フルアルバム『この日々をお守りに』をリリースしている。以降、着実にステップアップしながら、2026年2月13日に1st EP『キラメキ』をリリースした。3月3日の下北沢MOSAiCから、本作のリリースツアーがスタートしている。神戸、佐賀を回り、地元の長崎・佐世保GARNETでファイナルを迎える。
本作「キラメキ」は海音が作詞・作曲を手がけている。軽快なアップテンポを基調に、ドラムとベースが前へ転がるような推進力を生み出し、その上でギターとメロディーが跳ねるようなポップロック。リズムパターンが途中で変化するなど、バンドとしてのスキルも感じられるが、バンドアンサンブルは、スリーピースの特性を活かし必要最小限の音数。メロディーや歌声とのバランスを考え、音色までかなり吟味されたことがわかる。そう思わせるほどに、在るべき場所で、在るべき音が鳴っている印象である。
特筆すべきは、メロディーの良さと、サビの強さである。サビでは一段高い音域へ跳躍し、<気づいている><わかっている>といったフレーズや、コーラスで同じメロディーがリフレインすることで、耳に残るフックを作り出している。こうした構成は、近年のオルタナティブポップというよりも、90年代J-POPに見られる文脈に近い。シンプルなコード進行の上で音域を大きく動かし、サビで明確な高揚を作る。ポップソングとしての王道設計を、自分たちの音でしっかりと鳴らしているところが、そのままこのバンドの個性になっている。
一音目から言葉が立ち上がる――海音というボーカリストの強さ
楽曲構成にも小さな仕掛けがある。<5,4,3,2...まって、>という歌詞では、言葉の仕掛けがドラマポイントとなり、聴き手の耳を次の展開へと引き込んでいる。海音の歌声は、技巧へ寄らないナチュラルな質感が特徴だ。フレージングはメロディラインに忠実で、語尾を大きく装飾することなく言葉の響きをそのまま届ける。一音目から言葉の輪郭をはっきりと聴かせるところも強い。子音の立ち上がりが早く、言葉の音像がくっきりと前に出る。この発声によって声量に頼らず、言葉を置くように歌い、儚さと芯の強さを同時に表現している。
歌詞は、恋愛の不安な感情を綴っているが、最後には<受け入れながら生きてきたの。ほら、素晴らしいことでしょう?><弱くたって間違いじゃないこと。>といった自己受容の言葉へと変わっていく。シンプルなポップロックの形式の中で、心理の変化を段階的に描くことで、後半に向かい恋愛ソングの枠を超え、自己肯定ソングへとシフトしている。
アップテンポの推進力と、メロディーの強さ、そして口語体を効果的に使った背伸びをしていない歌詞。ポップソングとしての基本を丁寧に押さえた「キラメキ」は、マリンブルーデージーの現在地を示す楽曲だ。率直さと、メロディーを軸に据えたポップミュージックの王道。その両方が同居し、しかもそれがバンドサウンドとして成立している点に、このバンドの可能性が提示されている1曲だ。
文・伊藤亜希
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