固定されないグルーヴが生むスリリングさ――島根県出雲発5人組Mallievo(マリエーヴォ)「BALANCE BALL」

固定されないグルーヴが生むスリリングさ――島根県出雲発5人組Mallievo(マリエーヴォ)「BALANCE BALL」

2026/02/11

Mallievo(マリエーヴォ)は、島根県出雲発のメンバーが医大生の5人組バンドだ。ブラックミュージックやジャズ、ポップスを軸に、幅広いジャンルを鳴らす。地元・出雲市を中心に精力的に活動中で、2025年7月に初音源となる「ちょっと思い出しただけ」をリリース。2026年1月1日には初EP『BALANCE BALL』をリリースした。 

タイトル曲となる「BALANCE BALL」は、常に重心が揺れるようなリズム隊が作り出すグルーヴと、ピアノの跳ねるように軽やかなフレーズ、ヒップホップやソウル、ブラックロック的なアプローチを感じさせるボーカルのリズムが交差しながら進行するミディアムアップチューンだ。バンドアンサンブルにおける細やかな音数の変化や、ボーカルの発音アクセントの付け方によって、グルーヴは一箇所に固定されず、じつにスリリングな揺れを生み出している。反復される〈BALANCE BALL〉というフレーズも、感情を解放するための決め台詞というより、リズムの支点として機能している点が印象的である。 

ボーカルは、歌い上げるというより、言葉をビートに置いていく感覚に近い。子音のアタックや語尾の処理がリズムと密接に結びつきながら、太い声でソウル的な文脈のこぶしを回したり、トーンを伸びやかに響かせたりと、多彩なスキルで楽曲に感情を吹き込んでいる。 

定まらない心の「状態」を描くリリック

歌詞は、〈処理不能な感情で/傾く心のボール〉という一節が象徴するように、揺れ続ける心の「状態」そのものを描いている。何かを成し遂げた実感を持てないまま苛立ちや自己嫌悪を抱え、他者への違和感も含めて感情が跳ね返る日常を生きている様子が浮かび上がる。〈空論回答〉〈判断材料〉〈スタンス〉といった語彙からは、自分を客観視しようとする理性が覗き、この粗さと知性の同居が、歌詞に独特の緊張感を与えている。 

静止できず、常に転ぶ危険を孕んだ“バランスボール”のように、心もまた揺れ続ける。それでも〈コケないように〉〈軸に戦うんだ〉と言い聞かせながら、未完成な自分を引き受けて前に進もうとする強い意志が提示される。 

感情を吐き出すのではなく、揺れ動く心をどう保ち、どう前に進むのか。その状態をサウンドと声で描き切った「BALANCE BALL」は、Mallievoが自身の軸を探り続ける現在進行形のドキュメントとも言える1曲だ。 

文・伊藤亜希


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この記事を書いた人

伊藤亜希

音楽ライター/編集者。学生時代から音楽雑誌に勤務後、アーティストのFCサイトの立ち上げ・運営などを経験。現在はフリーランス。『RealSound』『MUSICA』、FC会報、FCサイト等で執筆中。『Eggs』は未知の音楽に触れられ楽しいです!

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