名古屋を拠点に活動するシンガーソングライター、一原ちひろは、2015年に活動を開始。キャッチーでブライトなメロディーが魅力だ。2020年に初音源となる「てのひら」をリリース。以降、コンスタントにリリースを重ね、2021年には1stフルアルバム、2022年にはEPをリリース。コロナ禍に開催されたレコ発ワンマンライブをソールドアウトさせたほか、2023年には初の東名阪ツアーを開催している。楽曲、ライブと、アーティストとしての在るべき活動を地に足をつけて歩んできたことが伝わる。
そんな彼女が2026年1月に発表した曲が「黎明」だ。ポップなアップチューンで、リズムの推進力がはっきりと前に出てくる。リズム隊がしっかりとグルーヴを作り、アンサンブルは横に広がるというより、前方向へのベクトルが強い。ギターや鍵盤は、リズムに対するアクセントとして配置されている部分もある。
序盤からエネルギーを開放する「黎明」は、サビでさらにもう一段階、スケールが上がる。メロディーは音域の上昇とともに伸びやかさを増していく。開放し続けるエネルギーで、サビでは、速度が一段上がるような“加速”の感覚をもたらす。
地声で踏み込む高音ーー揺れるピッチが形づくる声の輪郭
ボーカルは、前に押し出す力がはっきりと感じられる。ピッチや声量にわずかな揺れが残る場面もあるが、その揺れも含み、一原ちひろの個性として機能していると同時に、感情の質感になっている。
特に地声での高音の扱いが印象的で、ややラフな質感を残したまま踏み込むことで、音に緊張感と生々しさを宿している。彼女のキーとしては、かなりの高音域に入る箇所が度々登場するが、ファルセットに逃げず、ミドルボイス一歩手前の地声で貫き通すスタンスも、潔くてカッコいい。彼女の高音は、いわゆるキンキンとした鋭さに寄らず、響きを内側に保ったまま広がることで、丸みを帯びた質感が立ち上がる。この“押しすぎない高音”が、楽曲全体のラフなニュアンスとバランスを取り、楽曲のスケール感を押し上げている。
「黎明」は、音と歌がともに前へ進もうとする力を持ちながら、その中に揺らぎが出てくることで、単なる高揚に収まらない在り方を獲得している楽曲だ。不均一さを含めて前進していく感触こそが、一原ちひろというエネルギーの魅力である。
文・伊藤亜希
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