島根県を本籍地とし、大阪を拠点に活動する4人組バンド、吉凶わからず、(ヨシアシワカラズ)。メンバーは、あみ(Vo./Gt.)、庄司えつ子(Gt.)、サヤカ(Ba.)、柊(Dr.)の4人。2024年7月に1stEP『Teenager』を配信リリース。2026年7月には1stアルバム『laundrynotes』をデジタルリリースしている。同作を携え、東京・下北沢THREE、大阪・心斎橋Pangeaで初の自主企画を開催するなど、ライブ活動も精力的に展開している。10月には『FM802 MINAMI WHEEL 2026』への出演も決定。関西を中心としたライブシーンで、着実に存在感を高めている。
今回取り上げる「mean business」は、『laundrynotes』に収録された楽曲だ。軽快なリズムと耳に残るメロディを持つこの曲は、インディーポップやオルタナティブロックを軸としながら、様々なジャンルの要素を取り入れている。ギターが作り出す空間にはポストロック的な趣があり、一方で、リズムと音色にはニューウェイブにも通じる硬質な感触がある。
面白いのは、これらのジャンルを象徴するわかりやすい記号が配置されているわけではないところだ。ポストロック的なのは、ギターがコードやリフによって楽曲を牽引するだけでなく、響きや余白によって空間そのものを形作っているところ。ニューウェイブを思わせるのは、軽快に前進しながらも熱量一辺倒にはならないリズムと、少し冷たさを帯びた音の質感だ。そんな複数の音楽的要素が混ざり合うことで生まれているのが、「mean business」を包むノスタルジックな空気である。
それは、過去の音楽を想起させるような、わかりやすい「懐かしい音」ではない。もっと感覚的なものだ。夕方の街を歩いているとき、理由もなく過去の記憶がふっと浮かんでくるようなノスタルジーがある。
現在の風景に過去が入り込む――日常の描写が呼び起こす記憶
歌詞に登場するのは、日常にある断片だ。それでも、そうした言葉とノスタルジックな音像が重なることで、何気ない現在の風景が、いつか見た風景と重なっていく。過去を歌っているから懐かしいのではなく、現在の風景が過去の記憶を呼び起こすように機能しているのだ。
曲の終盤では、それまで積み重ねてきた思いを自ら茶化すような言葉が綴られている。本気なのか、強がりなのか。冗談なのか、本当は傷ついているのか。その感情を最後まで断定しない。
ポップなメロディ、ポストロックを思わせる空間的なギター、ニューウェイブにも通じる硬質なリズム。そして、どこか距離を感じさせる歌声と、心情を曖昧なまま残す歌詞。異なる要素が互いの個性を消すことなく同居している。懐かしいのに、過去だけを見てはいない。軽快なのに、明るいだけでもない。本気を口にしながら、その本気さえ自分で疑ってみせる。そんな簡単には割り切れない感情を、ポップミュージックとして軽やかに鳴らしているところに、吉凶わからず、というバンドの面白さがある。
文・伊藤亜希
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