青春メロきゅんバンドを掲げる“君がそうなら僕はこう”。略して君僕。大阪を拠点に活動を展開している。そのボーカルであるサイキアツノリが『MIKKE!! MIKKE!! MIKKE!! 2026 下北沢』にソロとして出演。アコースティックギターを抱え3曲を披露した。
「恋するあなたは美しい」は、2015年に発表された楽曲だが、2025年の後半、TikTokを起点に拡散し、ショート動画が数百万回規模で再生されるなど、大きな広がりを見せた。ポップなアップチューンの本曲は、バンドアンサンブルも、サイキのボーカルも、ラフさを残しており、聴く者の“構え”をほどくような質感を宿しているのが最大の魅力だ。また、楽器陣の音が言葉のアクセントに呼応する形で配置されており、音と言葉が同じレイヤーで並走しているところに、独特のセンスを感じる。
フレーズの反復とニュアンスの差で、楽曲に中毒性とストーリー性を同時にもたらしている。メロディーはキャッチーでありながら、言葉の運びを起点にしており、結果として“歌”というより“会話”に近い質感で聴き手に届く。独白の形をとりながらも、会話のように聴かせる。ここにサイキの歌い手としての才気を見出せる。この言葉主導の進行が、楽曲の独自性を際立たせている。加えて、前述したように、メロディーラインにはフォークやカントリーに通じる素朴な運びがある。その一方で、サイキの歌い回しには青春パンク的な直線性があり、言葉を前に押し出す力が強い。この素朴さと直進性の組み合わせが、ポップスとしての親しみやすさと、わずかな引っかかりを同時に生んでいる。
ラフなままで踏み込む高音――言葉を前に押し出すボーカルアプローチ
サイキの声質は、少し乾いた手触りとざらつきを含み、言葉の輪郭が滲むように浮き立たせている。高音でも喉の開きなどを無理に整えず、ラフなまま踏み込むことで、言葉が生々しい温度を帯びてくる。
「恋するあなたは美しい」の歌詞は、2年間つきあったカップルの別れ際の様子を綴ったもの。一人称は「私」、二人称は「あなた」で女性視点で描かれているのかと思ったが、サビで<泣かないで美しい人 君の言葉で開け>で、男性視点も想像させるあたりには、思わず、うまい!と言葉が出てしまった。
SNSでの拡散によって改めて注目を集めたこの楽曲だが、その広がりは偶然ではない。言葉とメロディーが強く結びついた構造、そして整えすぎない歌の質感が、短尺でも伝わる強度を持っていたからこそ、現在のリスニング環境の中で再発見された結果である。近年、こういった形での再発見がアイドルシーンなどでも起こっているが、インディーズシーンでも同様の現象が起きていることは、シーンがさらに広がる予兆と言えるのではないだろうか。
文・伊藤亜希
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