『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA決勝ラウンド』開催!優勝のafter20時(アフターハチジ)は、12月に中国ツアーへ

『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA決勝ラウンド』開催!優勝のafter20時(アフターハチジ)は、12月に中国ツアーへ

2025/11/11

2025年10月18日、土曜日。 
六本木・SCHOOL LIVE & BAR TOKYO(以下、SCHOOL TOKYO)にて『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA 決勝ラウンド』が開催された。本公演は、北京で有名な老舗ライブハウスがルーツであるSCHOOL TOKYO主催のオーディションライブ。8月に開催された前半戦、9月に2日間に及んだ後半戦で選ばれた5アーティストが、決勝ラウンドコマを進めた。本稿では、2025年12月に行われる中国ツアーへの出演権をかけ、それぞれが個性をぶつけた様子をレポートする。  

開演直後、くじ引きで出演順を決めると発表。大胆な手法に込められたSCHOOL TOKYOの想い

9月開催時の同イベントと同様に、SCHOOL TOKYOスタッフの宮﨑洋平氏が司会役としてマイクを握り、出演順番をくじ引きで決めるとアナウンス。宮﨑氏は、出演順はアーティストにとっても審査員にとっても大きく影響する、そこをライブハウス側で決めるのはどうかと思ったと本音を吐露。出演者全員が同じ条件でステージに立つことで、純粋にライブそのものを評価して欲しいという思いもあったのだろう。くじ引きの順番もじゃんけんで決める徹底ぶりは、そのままSCHOOL TOKYOというライブハウスのアーティストに対するスタンスに通じていると思った。ステージ前に、出演アーティストが揃う。そのわちゃわちゃした様子に、開演前からアットホームな雰囲気を感じた。バンド3組、シンガーソングライター2組。バンドは代表者がじゃんけんに挑んだ後、くじ引きで出演順が決まった。 

 トッパーはFULL WATT(福禄瓦特/フルワット)、2番手にコダマカプセル、3番目がafter20時、4番手にStefan時崢峰(ステファン シー ジェンフォン )、トリは滝沢ジョーという結果に。観客からも自然に拍手が起こる。アーティスト同士が決まった順番に、何か言葉を交わしている様子もあった。トッパーのFULL WATTは急いで準備を始める。SCHOOL TOKYOのスタッフもステージ上でセッティングを始めた。最初が7名の大所帯バンドだ。セッティングも大変だろうなと思いながらステージを見ていたが、あっと言う間にスタンバイ完了。『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA 決勝ラウンド』の幕が上がった。 

トッパーはFULL WATT(福禄瓦特/フルワット)。日本語詞の新曲も披露! 

 FULL WATTのメンバーがステージに並ぶ。ボーカル、ギター2名、ベース、キーボード、サックス、ドラムという編成。フュージョン、ファンク、ジャズなどを軸に、ビッグバンドのようなダイナミックなサウンドレイヤーを得意とするパワフルなバンドだ。1曲目。最初はサックスがブロウするムードあるナンバーかと思ったが、途中で軽快なビッグバンドジャズのような展開をみせるアグレッシヴな1曲。最初から音楽偏差値の高さを印象付ける。途中でボーカルのマイクがオフラインになってしまったトラブルを、自分たちのバンドは「いつもMCとかで脱線するんで(笑)。だから(マイクのトラブルも)脱線でいい感じ」と笑い飛ばす女性ボーカルの肝っ玉のでかさたるや見事。ボーカルの彼女の言葉に他のメンバーも頷きながら笑っている。ボーカルだけでなく、バンド自体が肝っ玉がでかいのだと感じた。続く、シティポップのフレイバーが漂う洒脱なナンバーでは、サビで一気にブライトなメロディーへ。ボーカルの掛け声に促され、観客が大きく左右に手を振った。「いい感じに切ないバラードを」と紹介されたのは、日本語詞のバラード。決勝ラウンドに向け、新曲として作ってきたのだろう。それまでとは一転し、クリアな高音を使い分けたボーカルアプローチで、しっかりと日本語を聴かせた。その心意気、そしてメロディーを含む楽曲のクオリティーに心から拍手を送りたい。 

幽玄なサウンドスケープでオリジナリティーを存分に発揮したコダマカプセル 

 続いてステージに上がったのはコダマカプセル。薄闇に沈むステージとフロア。その中に静かに立ち上がっていく音像。小さな粒が、水面に落ちた雫が描く円の様に、次第に大きく広がっていく。ブルーのライティング。ループするフレーズ。宮崎(Gt.)のファルセットと地声の中間を操るようなアプローチで、浮遊感と揺らぎを同時に感じさせるボーカル。重なっていくファクターひとつひとつが、コダマカプセルという空間を作っていく。空間を漂うなギターでつないで次の曲へ。プリミティヴでアフロビートにつながるようなリズムが前に出てくる。続いて柳橋(Ba.)がボーカルをとるミディアムチューンへ。自分の前のスタンドマイク、そのグリル(マイクの頭の丸い部分)に、ぴったりと唇をつけて歌っている。トーンで少しマイクから口を離すことはあったが、ほぼ1曲を通してグリルに唇をつけて歌うスタイルは、これまでほとんど見たことがない。おそらく通常よりも歌いにくく、言葉を発するのもスキルがいると思うのだが、柳橋の歌声は言葉がはっきり聴こえてきた。自分たちがイメージする音像を再現するために、歌声や言葉の響きまでも、細かく工夫し、コントロールしているのかと驚きを隠せなかった。また、柳橋のボーカルに宮崎がコーラスを重ねたときには、サウンドに広がりを加えたことはもちろん、深度も増すように配置したレイヤー具合がとても気持ち良かった。メロディーとノイズの狭間を行きかうような、現実じゃないどこかへ誘うような彼らのサウンドスケープは、もっと大きな場所や野外で聴いてみたいと思わせる奥行きがあった。 

after20時(アフターハチジ)が魅せた!多様なルーツと確実なスキルで研磨されたポップロック

 3番手に登場したのはafter20時。スリーピースのバンドだ。最初に放ったのはミディアムテンポのポップチューン。コケティッシュなメロディーがじつにキャッチーだ。個々の演奏の響きや、余白を活かした丁寧な演奏が、ボーカルである玉手の自由度をあげている。2曲目では、最初から舞い上がるようなクリアな声を聴かせる。その声は、真冬の朝、ダイヤモンドダストが舞い上がり、スッと光の中に消えていくような輝きと儚さをあわせもっている。かと思えば、中低音~中高音の部分では喉を開き、細かいビブラートをかけ、空間を揺るがすような倍音が出てくる。間奏では、シューゲイザーの発展形であるドリームポップのようなバンドアンサンブルを鳴らし、様々なルーツを取り込み、after20時というポップスに昇華していることを証明して見せた。上体を揺らしながら、時折、笑顔を見せ、たゆたうように包容力のある音を出すベース。コーラスをしながら、1曲の中でスティックとマレット(先に丸い布やフェルトがついているスティック。ティンパニーの演奏などでよく使用される)を使い分けるドラム。一瞬のカッティングから荒々しいリフに展開した次の瞬間、オーセンティックなギターソロを聴かせるギター。そしてビブラート、ファルセットなどを安定して使いこなすボーカル。メンバー全員、非常にスキルフルだが、そこを前面に出さず、一貫して歌とメロディーを際立たせるアレンジで聴かせたポップスの数々には、研磨された輝きがあった。「本当に素敵な機会をくださった、六本木SCHOOL TOKYOの皆さん、ありがとうございます」という玉手のMCどおり、感謝に溢れた丁寧で愛のあるステージだった。 

ソリッドなカッティングをアコギで表現できる。Stefan時崢峰(ステファン シー ジェンフォン )の個性

 次に登場したのは、シンガーソングライター、Stefan時崢峰(ステファン シー ジェンフォン )。椅子に腰かけ、ギターを弾き始める。抒情的なアルペジオが、表情を変え、グルーヴを作り出していく。最初の曲を歌い出す。テンポは速くないが、言葉が詰め込まれた1曲だ。サビでは繰り返す同じメロディーを最初はチェストボイス(地声)で、次はオクターブをあげファルセットで聴かせるボーカルスキルを見せた。また、アコースティックギターで、じつにタイトなカッティングギターを響かせ、彼の左手に視線を送ると、指の腹が厚いこと、また弦を押さえている指の力が強く、ゆえにアルペジオの単音もソリッドに鳴らせるのだとわかった。フロアとほぼ同じ高さにステージがあるSCHOOL TOKYO。この環境でなければ、きっとわからなかったアーティストの個性だ。2曲目。メランコリックな曲調と少し枯れたような歌声、ブライトなサビでのロングトーンと、ギターと歌の両方でコントラストを見せた1曲だった。スパニッシュギターのような速弾きテクニックを見せた3曲目、ラストは観客に歌のレクチャーをし、一緒に歌って会場を盛り上げた。アルペジオ、ストローク、ボディタップ、リストシェイカー、そして自分の隣には小さなミラーボールを置きスイッチを入れて回すなど、シンガーソングライターというスタイルの自由度と可能性を追求していると思わせるステージだった。 

歌詞とメロディーが同時にスッと入ってくる。“シンプル”を活かせる才気を感じた、滝沢ジョー 

 ラストは滝沢ジョー。「1番眠くなりそうなのが最後になってしまいましたが」と、笑顔で軽くジャブ。観客の視線をしっかり自分に持ってくる。「終わったら飲めますので、最後までおつきあいください」と1曲目へ。ミディアムバラードで、譜割りもシンプル。フォーキーなメロディーがフロアに流れていく。驚いたのは滑舌の良さだ。100%、歌詞がスッと頭の中に入ってくる。シンプルな言葉を選んでいるのも大きいが、言葉の配置も的確ゆえ、言葉とその意味が、メロディーと同時に入ってきて、聴く者の中で紡がれていく。彼の歌は、聴く者の中で物語になっていくのだ。高音のトーンで少しくらい声を張っても、決して濁らない声質、発声の仕方も、その理由のひとつだろう。チューニングしながらMCへ。滝沢は、8月に開催された『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA 1st Round-前半戰』から約2ヶ月経ったことに触れ「成長を見せたいなと思った」と新曲を披露。しっかり新曲を届けた後、そのままギターのカッティングでつなぎ、アップチューンへ。軽快な曲調に観客もクラップや歓声など、思い思いのレスポンスを返す。ラストソング前のMCでは「大切な曲だから、最後にやりたいと思った」と言った後、楽曲制作の背景をよどみなく言葉にする。それは、これまで幾度となくステージで話してきたのだろうと思わせると同時に、自分の楽曲を愛でることを知るシンガーソングライターだからこそ説得力を持つ、コロナ禍で見出した家族との絆の話だった。ギターの演奏も、歌詞も、発声も、メロディーも。ひとつひとつに“観客に届けたい”という気持ち、そして自身の生命力が滲んでいるようなパフォーマンスだった。 

審査結果発表!優勝者after20時の受賞直後のコメントも

5アーティストのライブが終わり、審査の時間へ。9月の2公演と同様に、観客の投票に加え、審査員の議論によって決まる。審査員は、8月から『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA』を見守ってきた、腕白舎(ワンパクシャ)代表取締役の出口和宏氏、(株)バッドニュースの千葉和利氏、SCHOOL TOKYOスタッフの許宸氏、北京と東京のSCHOOL LIVE BAR創設者である劉非(リュウ・ヒ)氏。バッドニュース代表取締役の千葉和利氏。下北沢ライブハウスGARAGEの店長を務め、現在、腕白舎(ワンパクシャ)代表取締役である出口和宏氏の4人だ。約15分後。宮﨑氏の口から優勝者が告げられた――after20時。歓喜に沸くメンバー3人が、ステージに呼び込まれた。 

「本当に嬉しいです。皆様ありがとうございます。応援しに来てくれた皆さんの気持ちとかも本当に届いて。自分は届ける側なのに貰ってばっかだなって、いつも思っていて。だから、そんな皆さんに恩返しできるように頑張ります」(after20時/玉手初美) 

after20時は以下の日程で中国ツアーを行う。 

・2025年12月20日/上海 
・2025年12月21日/杭州 
・2025年12月22日/鄭州 
・2025年12月23日/北京 

 SCHOOL TOKYOは、中国・北京のライブハウスシーンの黎明期の一端を担ったSCHOOL BEIJINGの理念と名前を受け継ぐ形でスタートしたライブハウスだ。『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA』も、SCHOOL TOKYOでなければ実現しなかったオーディションといえる。アジアツアーはあっても、中国ツアーを経験している日本のアーティストはほんの一握りだろう。after20時は、中国ツアーで何を感じ、何を得て返ってくるのか。日本から中国への架け橋を最初に渡る者、after20時の中国ツアー完走と、これからのインディーズシーンでの活躍に期待したい。 

執筆・取材:伊藤亜希 
撮影:佐藤 薫 

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