ANORAK!(アノラック!)が、9月29日に新作『Fav Riff EP』をデジタルリリースした。
東京発の4人組バンドANORAK!は、海外のインディーロック、メロディックパンクなどをルーツにしたサウンドと、エネルギッシュなライブで注目される存在だ。メンバーはTomoho Maeda(Vo./Gt.)、Kotaro(Dr.)、Mikuru Yamamoto(Ba.)、Crystal Kato(Gt.)。2022年から現体制となり、新作では打ち込みやオートチューンを取り入れるなど、音楽の自由度を体現し続けている。国内外でツアーを積極的に展開しているANORAK!。2025年も米国ツアーが決定している。また、Eggsとのコラボレーション企画として、ステムデータを公開。彼らのコピーバンドを募る。

現体制になった時に目指した音楽
――現体制になった際、どんな音楽を目指していましたか?
Tomoho Maeda(以下、Tomoho):1stアルバム『ANORAK!』(2022年)を録り終えたぐらいの時期に、Crystal Kato(以下、Kato)が入って、今のメンバーになったんですけど2010年代のポップパンクやエモ・リバイバル的な……特にアメリカを中心にひとつのシーンを作っていたカルチャー的なものが、メンバー全員の共通項としてあったかな、と。Transit(トランジット)とか、Algernon Cadwallader(アルジャーノン・キャドウォラダー)とか。ここらへんのアメリカン・インディーロックみたいな雰囲気のサウンドをやりたかった感じがあったから、その感覚で4人でスタジオに入った記憶がありますね。
Kotaro:新宿のノアだったね。狭めの部屋でした。当時、6月11日にギターが抜けて、6月18日にライブがあるって状況だったんですよ。

Tomoho:すげー、暦、正確だな。
Kotaro:すごく覚えてる。で(Katoに)「1週間後にライブがあって、14曲、覚えてくれないか」とか言って。
Tomoho:曲が短いから、曲数が多いという。
Kotaro:ギターを弾いた動画をLINEで(Katoと)やりとりしながら。
Kato:そうだった、そうだった。それで最初に思ったことは……これ、ギターの音、できすぎないかっていう(一同笑)。
Kotaro:スタジオでの動画だったから。
Kato:そう。前のギターの方は、ギター&ボーカルというスタンスだったので、僕はもっとギターに徹した方がいいかなと思ったんですよ。その方が当時、Tomohoがやりたいサウンドには合ってるかなと。そこを100ギリギリまで再現できればと思って入りました。
あえて聞く!エモ・リバイバルの解釈
――エモ・リバイバルって言葉って、どう解釈してます?“エモ”って、今現在、それこそ“ロック”とかと同じくらいの広い意味を持つ言葉になってると思うんですよ。
Tomoho:“エモ”という言葉は本当にいろんな文脈で使われていますよね。エモは、もともとは、Fugazi(フガジ) や Minor Threat(マイナー・スレッド) といったバンドから生まれた言葉で。“Revolution Summer(レボリューション・サマー/1980年代半ばに、米国ワシントンD.C.で起きたハードコア・パンクから“エモ”への転換点となったムーブメント)”期にも強い影響を受けていると思うんです。その初期のハードコア由来のエモバンドも好きだし、American Football(アメリカン・フットボール)、Mineral(ミネラル)、Tenfold(テンフォールド) など1990年代のいわゆる第2世代エモバンドも好き。
ただ、自分にとって“これがエモだ”と限定する感覚は特にないんですよね。どの時代、どの系譜のエモにもそれぞれの“エモさ”があると思う。おっしゃる通り、今ではエモ的なエッセンスが今言ったような源流とは別のところで、ジャンルを問わず、音楽シーンにも広く浸透していて、感情表現のスタイルとして一般的になっていると感じていて。だから例えば自分たちの音楽をエモ・リバイバルと言われても、そうじゃなくても、正直、なんでもいいかな。
Kato:エモ・リバイバルをジャンルとして捉えるのであれば、例えば今のシューゲイザーとか言われているみたいな感じに似ているかもしれない。さっき、Tomohoも言ったけど“なんか、この感じ良くね?”みたいな感じで。ジャンルじゃなくて要素なのかなと思う。源流をあえて無視していえば、例えば元々パンクのバンドが、外側のキラキラしたエッセンスを取り入れてエモやるみたいな感じもあるし、元々インディーロックだったのが、エモみたいなことになり出して、エモ・リバイバルにたどり着いているとか。いろんなパターンがある。文脈は違うけど、みんなが“あ、この感じいいな”って思った瞬間にバッてこう集まってムーブメントみたいになったのがエモ・リバイバルなのかなっていう。そういう感じはあるかな。
Mikuru Yamamoto(以下、Mikuru):シンプルに世代によっても“これがエモ”みたいな捉え方は全然違ってて。例えば自分より上の世代の方と“エモで何が好き?”って話をしてると、マイケミ(My Chemical Romance/マイケミカルロマンス)が出てきて。“あ、そのバンドもエモなんだ”って思ったり。
Kotaro:エモ・ヘアーってあったじゃないですか。髪の毛全体を前に流すような。あれをね、昨年のアメリカのツアーでやったらバカ受けしました(一同爆笑)。
曲作りの新たなファクターとして取り入れたDTM
――バンドサウンドに打ち込みを入れようと思った理由は?
Tomoho:Crystal Katoがバンドに入って、1stアルバムのツアーをやった後、自分の中で、エモ・リバイバル的なエッセンスがありつつパンクで……って曲を作るというスタイルだと、面白いアイデアが浮かばなくなったんです。たぶん、燃え尽き症候群というか、一種の虚脱感みたいなものがあったんですね。かつ、Crystal Katoがハイパーポップ的なサウンドとかを聴いていて。TB-808(通称ヤオヤ/ドラムマシーン)を過剰に歪ませて、ちょっとパンクみたいな響きにしてるようなデジタルな音源を結構掘っていったんですよね。それで、フューチャー・ガラージとかをカッコいいと思うようになった。当時、動員がすごく多かったライブをさせてもらったタイミングで、手元に少しお金があったので、曲を作るためにMacBook Proを買ったんですよね。スペックむっちむちの奴を友達に頼んだら、買える値段だったから。そのMacBookに、Ableton Liveってソフトを入れて、バンドだけど何か……デジタルなエッセンスを取り入れたサウンドに近づけないかなと思ってちょっと試してみたのがきっかけですね。そこから、生のドラム以外のビート、ギター、ベースをDTMで作るようになっていったんです。

――打ち込みは、例えばライブの同期での音圧とかが前提ではなく、あくまで曲作りのための新たなファクターだった?
Tomoho: まさにそうですね。 メタルやこう……いわゆるラウドとかのジャンルで使われている同期っていうのは、確かに認識としてはあったんですけども。そういった文脈とはまったく別。ダンスミュージックやクラブミュージックに対していっぱい掘っていたとか、すごく知識があるわけではないんですけど、なんかそういう……打ち込みの独特のシルキーなサウンドというか、曲の中に、ああいう周波数のエネルギーが欲しくなったんです。ただライブを考えると、アナログな音の出し方じゃ出ない音が絶対に必要で。ドラムの生の演奏と打ち込みで作ったビートをライブ中に同時に鳴らす。同期生ドラムが一緒に演奏しているみたいな状態は、曲を作る最初の段階からイメージにありましたね。ただ、メタルとかああいうラウドな音楽で使われる同期の聴こえ方とは、まったく違う聴こえ方になるようにっていう。逆張りじゃないですけど、出発点はメタルやラウドじゃない同期。打ち込みのキックとかベースの音と、バンドの生の音をどう面白い混ざり方にするかっていうのは、結構考えましたね。僕はギターが両方ともリードで絡み続けてるみたいなサウンドをやりたいと思ってた。それは最初から変わらず、今でもある。ただ、ロックとDTM的な音楽を合わせたっていうものは、もうコロナ禍以降、ポップスの中でも一般的になったと思ってるんです。そうじゃないことをやりたいとずっと模索して、思っていて。で、今回の『Fav Riff EP』で、そのもやもやが晴れた感があった。セカンドアルバム『Self-actualization and the ignorance and hesitation towards it』(2024年)は、雰囲気のガラージーとか、冷たい空気感のあるダブステップとか。そこらへんを自分の中のリファレンスとしてよく聴いていた頃で。シンセサイザーやシンセパッドで入ってる音をギターに置き換えてみようとか、そういう試みもあったんですけど、結局、いわゆるクラブミュージック的なサウンドに、ギターの音って空気感とかムード的にマッチしないんだなと思ったんです。だったら、もうロックをやっちゃおう、と。そういう気持ちで作ったのが、新作『Fav Riff EP』。エモ・リバイバルやパンク、Teenage Fanclub(ティーンエイジ・ファンクラブ) や Superchunk(スーパーチャンク)とか、90年代のバイブスやインディーロックの空気感を感じさせるようなサウンドを目指したんですよ。生のバンド感を主軸に置きつつ、それを補助する形で、シーケンス的なサウンド(打ち込み要素)をさりげなく散りばめることで、自分の理想とするバランスが取れたと思ってます。
2024年に行ったアジア&米国ツアーで得たもの
――2024年に行ったアジアツアー、米国ツアーについて。今、思い出すことは?
Tomoho:もう環境が会場によって違いすぎて。モニターないとか言われるし。え「モニターないってどういうこと?」みたいな。
Kotaro:アンプとドラムはほぼマイキングなくて、ボーカルと同期だけスピーカーから出てるみたいな状態とか。
Mikuru:会場が古いと、アンプの電源さしても電気が通ってないとか。出音に明らかに電力が足りないから起こる波があるとか(笑)。
Kotaro:一緒にツアーを回ったバンドが、途中で電源全部落ちちゃったりしてました。
Kato:あったねー、いきなり無音に(笑)。
Tomoho: D.I.Y.なツアーで機材も全部持ち寄りだったので。モニターも会場にあれば使うし、なかったらそのまま。PAの卓も8チャンネルくらいしかないんじゃないか、みたいな小さな箱もあった。とにかくタフな環境でやらなきゃいけないっていう状況だったからね。ぶっちゃけ、全然楽しむ余裕もなかったというか。「頼む、頼むからモニターあってくれ」って願いながらバンに乗ってた。こういうのもあって、ロックバンド然としたことをやりたいなって思うようになったんです。ツアーとかも含め、最近は、そういう思いがより強くなってるかもしれないですね。
Mikuru:世界的にみても日本のライブハウスは、かなりクオリティー高いと思いますよ。カルチャーって意味も含めて。電力が足りないなんてことは、まずないし。

Kotaro:同期もちゃんと出るし。
Tomoho:アメリカは、それこそライブハウスじゃない場所でも音が出せるから、カルチャーが違うんだと思うんですよね。
――ガラージ・ロックのガラージの由来は、車庫ですからね。
Tomoho:そうですよね。広いから場所を選ばずに音を出せる。だからライブハウスについての考え方が違う。この違いは大きいと思うんです。でも同じアジアでは、割とライブハウスっていう文化ってどこでもあるんですけど、日本が設備もシーンも、かなりしっかりしてると思いますね。
Kato:(Kotaroに)海外のどっかで号泣したのどこだっけ?
Kotaro:去年のインドネシア。感極まって号泣しちゃったんですよね。
Tomoho:アメリカから帰ってきたら、めちゃくちゃドラム上手くなってたよね。
Kato:それは思った!
新作『Fav Riff EP』のちょっとしたレコーディング秘話!?
Kotaro:海外ツアーをしていく中で、他のバンド見てて思うことがあって。根本的にリズムの捉え方が違うのかな、とか。そういう状態で、3週間くらい一緒に過ごしたことが、自分のプレイにも刺激になって出ましたね。今回の EP もその時一緒に回ったバンドの影響をすごいありながらプレイしてる部分もあったり。特に 「Pony Boy Ⅱ」とか。
Tomoho:すごかった。服とか着てなかったし。
Kotaro:レコーディングのドラム録りの時にね(笑)。
Kato:手も早くて、すげーってなってた(一同笑)。でもカッコよかったですよ、本当に。僕はずっと洋楽を聴いて、バンドを続けてきたから、海外ツアーはすごくいい経験になった。さっきも出たけど、実際はタフじゃないとできないと思うんだけど、人生観みたいなのがいい方向に変わった気はしますね。

Tomoho:海外に限らず、ツアーは、自分たちがどういうバンドかっていうのをドサ回りしていろんな場所に広めていくっていうことだと思うから。自分たちがバンドとして、何をアピールしていきたいかっていうことを、しっかり強く持っておけば、まあどこ行ってもいいんじゃないかなって思いますね。
Mikuru:究極を言えば場所は関係なくて、まずはいいライブをすること。悔いが残るライブをすると、終わった後に自分も落ちちゃうんですよ。だから自分のためにも、いいライブをしたい、目の前にあるライブを楽しみたいってことを考えてます。
Kato:そうですね。いいライブできなきゃやっぱ落ち込むっていうのもある。
Kotaro:終わった後おいしいお酒、飲みたいしね。
Tomoho:ツアー中に悩んじゃうのが本当によくないと思うから。俺らはこれをカッコいいと思ってやってる、これをやってて1番俺らがかっこいいと思って、ツアーを回れるかどうかが大事。とにかくカッコいいって自信を持ってステージに立てるか、誰と対バンしても自分らが1番かっこいいなと思える……そういうメンタリティーに持っていけるくらい、曲やライブの説得力を自分らなりに作れるかが大事。集中するための事前準備が大切だと思う。
――11月から2度目のアメリカツアーが始まりますが、今のお気持ちを一言ずつお願いできますでしょうか?
Kato:節約と生還。生きて帰ることと節約、一番大事です。
Mikuru:前回、自分が思っていた以上の手応えがあって。アメリカでもいけるなと思うことができたので、今年はもっと自信持ってやれたらいいかな。共演するバンドで、結構、ネームバリューのあるバンドもいますし、いいバンドいっぱいいるんで、その中で自分たちを自信を持って観せたいと思ってます。
Kotaro:まず、大好きなバンドと回れるっていうのが嬉しいですね。その中でしっかり自分たちの色を出せて、次にまた繋げていけるようなツアーにしたいですね。
Tomoho:アメリカのお客さんはめちゃくちゃ乗ってくれるので、かましてきたいな、と。いや、かましてきます!
撮影:GIGSS
取材・文:伊藤亜希

ANORAK!のステムを使ってライブする?
ANORAK!のステムデータを使用したコピー動画を募集します!
演奏動画をYouTubeにアップロードし、Eggsに楽曲登録をしてください。
応募された中からANORAK!が数組を選び、後日コメントを送ります!
【応募期間】
2025年11月30日(月)23:59まで
【応募方法】
1. 本ページ掲載のステムデータを利用し、「Summertime」または「FavRiff」の演奏動画を撮影する。
2. 演奏動画をYouTubeにアップロードする。
※タイトル冒頭に「Summertime_ANORAK!(copy)」または「FavRiff_ANORAK!(copy)」と記載してください。
3. Eggsで楽曲登録をする。
※「#ANORAK!コピー2025」のタグをつけてください。
【注意事項】
本ページ掲載のステムデータは、本企画にのみ利用可能です。
・ANORAK!_FavRiff_stem.zip
・ANORAK!_Summertime_stem.zip
「ありがたいことに、大学生のイベントなどでANORAK!をコピーしてくれる人が多いと知って。同期入った曲が増えたから、そういう曲はなかなかコピーも難しいだろうと。だからステムデータを公開しようと思ったんです。これ使ってもっと曲をコピーしてくれる人とかいたらいいな、みたいなとこから始まってはいます。将来的には僕らのデータを使ってリミックスして欲しいな、とも思っています。1stアルバムの「調布」をリミックスしてくれたDJがいて、そこから友達になったっていうのもあったりして。どんどんなんかまだ見ぬアーティストにリミックスしていただけたら嬉しいし、国内、海外問わずいろんな方と繋がっていけたら嬉しいです」(Tomoho)
◆ステムとは?
トラック(楽器パート)をグループごとにまとめた音声ファイルのこと。
RELEASE INFO
【Fav Riff】
- 2025年10月15日(水)CDリリース
- 配信
- https://linkco.re/RtHr8Mv9
- pre order
- https://superniceboy.thebase.in/
LIVE INFO
【Fav Riff Tour 25'】
- 10/17:大阪 難波BEARS w/Tive,天国注射
10/31:名古屋 今池HUCK FINN w/ sysmo, underscreen, Powerplant(UK)
11/6:東京 渋谷WWW w/ Texas 3000, +1band - チケット
- https://eplus.jp/anorak/
【COUNTER INTUITIVE 10 YEAR TOUR】
-
ACT:MACSEAL/PRINCE DADDY & THE HYENA/BAY FACTION/SPORTS./ANORAK!/YAWNERS/
SURPRISE GUEST
NOV 29 CHICAGO, IL @BOTTOM LOUNGE
NOV 30 DETROIT, MI @MAGIC STICK
– NO SPORTS –
DEC 02 LAKEWOOD, OH @THE ROXY
WITH SPECIAL GUESTS: INSIGNIFICANT OTHER
DEC 04 BALTIMORE, MD @SOUNDSTAGE
DEC 05 PHILADELPHIA, PA @BROOKLYN BOWL
DEC 06 BROOKLYN, NY @MEADOWS
WITH SPECIAL GUESTS: NERVOUS DATER
DEC 07 BOSTON, MA @PARADISEフォームの始まりフォームの終わり







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