Squiiは、2024年に結成された札幌発のオルタナティブロックバンドだ。千葉誠也(Vo./G)と藤原空汰(G)を中心にスタートし、サポートメンバーであった小林ミユ(Dr./Cho)が正式に加入した。“貴方を寄り添う”をモットーに、地元で自主企画やライヴ活動を精力的に展開してきた。2025年5月に初音源となる「strange」をデジタルリリース。以降、ハイペースで新曲を発表。同年12月19日、『sultry』をEggsのみで配信スタートした。彼らのサウンドは、オルタナティブロックを土台にしながらも、様々なロックのルーツを咀嚼した自由度の高さが魅力だ。憂いを孕みながらも、J-ROCKの王道を感じさせるキャッチーなメロディーライン、ストーリー性のある構成、そしてボーカルとコーラスが時にツインボーカルのように絡み合う。たゆたうようなグルーヴを作り出す、バンドアンサンブルは、このバンドの音楽偏差値の高さを提示している。
特筆すべきは“オルタナティブロック”という言葉に対する解釈が、これまでリリースした楽曲すべてに、しっかり表れているところ。しかも、曲により切り口が違う。これほど多彩にオルタナティブロックを鳴らせるバンドは、珍しいだろう。元々“オルタナティブ”という言葉は、1970年代後半から80年代にかけて、パンク以後の反商業的・DIY精神を背景に、メインストリームのロックに対する「もうひとつの選択肢」として派生した言葉だ。90年代初頭にはNirvanaらの成功によって、グランジという言葉と共に一気に広まった。日本では1990年代前半、こうした洋楽文脈を通じて“オルタナティブロック”という言葉が浸透し、90年代後半には既存のJ-ROCKに収まらない表現を指す語として定着。今現在は、エレクトロニカやアンビエントも含んだ解釈になり、まさにノーボーダーを指す意味にアップデートされているように思う。そういう意味では、Squiiのサウンドはノーボーダーロックだ。
洋楽的なサウンドスケープの中でドメスティックなメロディーを鳴らすバランス感
最新曲「sultry」は、艶やかさと揺らぎを軸に据えた1曲。シューゲイザーやドリームポップを彷彿とさせる浮遊感も印象に残る。サウンドの質感と歌の“間”によって、静かに艶を積み重ねていく丁寧さ、そして洋楽的なサウンドの中でドメスティックなメロディーを違和感なく鳴らす、そのバランス感覚が素晴らしい。バンドサウンド全体を俯瞰で捉えられているからだと考察する。
まず触れたいのはリズムセクションだ。ルーズになることなく、身体の奥へとゆっくり沈み込むようなグルーヴを描く。ドラムはアクセントを強く打ち出すよりも、反復や細かい機微で土台を整える役割を担い、楽曲に安定した推進力を与えている。ベースは歌メロとは違うメロディーを刻むように歌っている。その上に重ねられるギターなどは、空間そのものをデザインするように配置され、サウンドスケープ全体に濃密なムードを生み出している。
メロディーは、フレーズの反復に中毒性もあるが、ワンフレーズ自体がグッドメロディーの宝庫。サビもテンションを保ったまま滑らかに流れを継続させることで、既述した艶っぽさを持続的に蓄積していく。
ボーカルもまた独特。声を音符にジャストにおかず、わずかに後ろへ預けるような歌い回しが、ブラックミュージックとは違う文脈で“ため”を作り出し、この“ため”が、聴く者にとってイマジネーションの余白になっている。息遣いや声の揺らぎ、発声の違いなどが、すべてそのまま楽曲の質感として機能して、言葉以上に声そのものの感触が前に出ているところも個性だ。歌詞は、感情の輪郭をなぞったような淡さがあり、その曖昧さが、この楽曲が描くサウンドスケープにぴったりはまっている。
これからどんな“オルタナティブロック”を聴かせてくれるのか、楽しみなバンドである。
文・伊藤亜希
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