余白と独特の歌声で聴き手を引き込むーーmibuki「ねこでよければ」で見せる感情の浸透力

余白と独特の歌声で聴き手を引き込むーーmibuki「ねこでよければ」で見せる感情の浸透力

2026/05/14

mibukiは、2016年にSony Music主催の「the LESSON」に合格したことをきっかけに、音楽活動を開始したシンガーソングライターだ。 

“君”との関係の中に宿る、日常的なさまざまな感情をすくい上げる歌詞、ファニーだが芯のある歌声で支持を着実に広げてきた。これまで開催してきたワンマンライブはすべて完売。2026年には渋谷WWWも満員にしている。  

SNS発の漫画を元に書き下ろした「ねこでよければ」は、“音で読む物語”プロジェクト「ヨムオト」から生まれた1曲。3月31日に「ねこでよければ-Fromヨムオト」として配信がスタートした。  

本曲はミドルテンポのポップナンバーだが、音数を抑えたアンサンブルが柔らかで包容力あるメロディーを支えている。サウンドの隙間がそのまま楽曲の余白として活かされており、この余白が、聴き手の中で感情を立ち上げる時間として機能している。  

ピュアでシンプルなメロディーを軸に、全体を通して同じ温度を保ちながら、少しずつ感情の解像度を上げていく。サビに入っても音域の上昇は緩やかで、メロディーは開放感や跳躍よりも、連続性を重視している。こうした構成により感情の明確な転換点がいい意味で曖昧になり、その分、聴き手は自然と楽曲の内側に入り込んでいく。この、じわっとほどけて浸透していく展開が、楽曲の性格、さらにはシンガーソングライターmibukiの魅力を表している。 

語りかけるようなボーカルアプローチーー聴き手が見出す感情の着地点  

ボーカルは、近距離で語りかけるようなスタイルが基調だ。フレーズの頭でやや内側に引き込むような当て方で言葉を置き、母音へ滑らかに流していく。サビのロングトーンでは、地声を張り続けるのではなく、語尾でわずかに力を抜き、母音を空間に漂わせるように処理することで、言い切りにならず、感情の着地点を聴き手にゆだねている。  

2027年1月28日には、自身最大規模となる渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブも決定しているmibuki。劇的な楽曲展開や強い主張に頼らず、感情の微細な揺れを丁寧に拾い、日常のドラマを紡ぐ。冒頭で述べた独特な歌声で、聴き手の中に存在を残し、感情の余韻を作り出す。この一連のプロセスこそが、mibukiというシンガーソングライター最大の魅力だ。  

文・伊藤亜希 


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この記事を書いた人

伊藤亜希

音楽ライター/編集者。学生時代から音楽雑誌に勤務後、アーティストのFCサイトの立ち上げ・運営などを経験。現在はフリーランス。『RealSound』『MUSICA』、FC会報、FCサイト等で執筆中。『Eggs』は未知の音楽に触れられ楽しいです!

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