勢いだけでは語れない推進力ーー美侑「STAGE」が鳴らすポップネス

勢いだけでは語れない推進力ーー美侑「STAGE」が鳴らすポップネス

2026/05/14

大阪を拠点に活動するシンガーソングライター、美侑(みゆう)は、10代からライブハウスを起点にキャリアを重ねてきたアーティストだ。「十代白書2023」をきっかけに本格的に始動し、2025年にはあべのROCKTOWNで高校卒業記念のワンマンライブを成功させるなど、着実にステップを進めている。  

STAGE」は、そうしたキャリアの延長線上に位置する、ストレートなアップチューン。キャッチ―で力強いメロディーが光る。 

STAGE」は、2026年3月にリリースされた1stミニアルバム『黎明』のラストを飾る1曲である。軽快なビート感を軸に進むポップナンバーで、リズムがタイトにまとめられ、メロディーが自然に前へ出てくるため、勢いだけに頼らない推進力が生まれている。ベースはコードに沿って滑らかに動き、楽曲の流れを支える役割を担っている。ギターやシンセも過剰に重ねず、要所でフレーズを差し込む構成で、音数以上の広がりを感じさせる。 

積み重ねていく高揚ーーサビで変化する発声の輪郭  

サビでは音域が上がり、メロディーも伸びやかになるが、急に跳ね上げるのではなく、あくまで流れの中で自然に持ち上げていく。積み上げていくような高揚感が、楽曲全体のエネルギーになっている。  

ボーカルアプローチは、言葉を丁寧につないでいくスタイル。フレーズの頭で強く踏み込まず、語尾に向かって少しずつニュアンスを乗せていくことで、フレーズ終わりにメロディーの余韻を残す。また、息継ぎの位置をリズムに合わせて調整することで、曲のグルーヴを活かしている。加えてサビでは、母音の抜き方に特徴がある。ロングトーンを強く張り続けるのではなく、音の終わりでわずかに力を抜き、母音を空間に逃がすように処理している。この抜きのニュアンスによって、フレーズが重くなりすぎず、アップテンポの流れの中でも軽やかさが維持されている。また、母音を均一に伸ばすのではなく、言葉ごとに微妙に長さや抜き方を変えることで、メロディーに細かな抑揚が生まれているところも見逃せない。 

また、子音の当て方も、彼女のボーカルの大きな特徴だ。わずかにしゃくりを入れたニュアンスで発声に入りながら、アタックの強弱で言葉を立たせている。さらには、伸ばす音以外でも、細かいビブラートのような揺れを自然に作り出す発声で、ダイナミックなサウンドの中でも決して埋もれない存在感を放っている。  

彼女がこれまでリリースした音源を聴くと、曲調により異なるアプローチを繰り出せるボーカリストであることがわかる。例えばバラードでは、ブレスを多めに含んだ発声で母音を空中に漂わせるようにしているほか、地声とファルセットの移行も滑らかであること、さらにはその中間のミドルボイスもしっかりコントロールできている。聴いているだけで引き込まれる――歌に強度を与える歌声だ。

文・伊藤亜希


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