みずびたcityは、東京を拠点に活動する4人組バンドである。ギターロックを軸にしながらも、90年代以降のポストロックや、シューゲイザー、ドリームポップの文脈を現代的に鳴らす。バンドのオフィシャルInstagramへの初投稿は2025年7月。活動を本格化させたのも、同時期と考えられる。初音源は2025年8月6日にEggsで公開された「Beautiful Dreamer デモ」。同年11月26日にはシングル「前売りプレゼント / Beautiful Dreamer」をデジタルリリースしている。楽曲の発表と並行して、都内を中心にライブ活動も展開中だ。
浮遊感や多重レイヤーに頼らない、重心が沈みこむドリームポップ
2026年1月30日にEggsのみで発表されたのが「夜の開発 デモ」。シューゲイザー的な揺らぎを持つギターサウンドと、ドリームポップ由来の霞がかった空気感はあるが、この曲が描いているのは、このジャンル特有の陶酔や浮遊ではない。ギターのフィードバックや多重レイヤーに頼らないタイトなバンドアンサンブル、そして中低音域で実力を発揮する女性ボーカルが歌う、随所で不穏さを宿したメロディーが、夜というより、その先の闇に引きずり込まれるような緊張感を醸し出している。何度聴いても、美しく、そして怖い。なぜなら、夜の先にある闇が見えてこないまま終わるからだ。
1曲を通して、隙間が意図的に作り出されており、そこから夜の空白や孤独が浮かび上がる。デモ音源ならではの粗さがあるとしたら(筆者は粗いと感じなかったが)、完成度よりも感触を優先するこの曲には、むしろその粗さが相応しいだろう。
ボーカルは、この曲では淡々としているがエモーショナルさを秘めているのが、抑制した歌声から伝わってくる。メロディーに対して声を少し後に置き、音程を保ちながら歌い進めていくが、言葉終わりの母音の強弱や長さを喉を開いてコントロールし、淡々とした中でも、しっかり言葉を立ち上げてきている。サウンドとボーカルが入れ替わり立ち代わり、物語を紡いでいくような構成もお見事だ。バンドサウンドと歌声のバランス、既述したボーカルアプローチで、歌詞の中に3度出てくる<殺した>という鮮烈な言葉も、攻撃性のない静かな告白として響く。そして歌声は、後半に向かい、発音も強くなり情熱の波状を描く。感情の濃淡を歌で表現できているからこそ、他の部分よりも強く発音して歌う<明日も昨日ももういらない/失くしてしまった今が欲しい〉という歌詞が、たったひとつの切望だと気が付くのだ。未来への希望でも、過去への回帰でもなく、掴めなかった現在を取り戻そうとする切実さ。そんな気持ちが「夜の開発」という言葉に託されていると思う。この曲に置いて「夜」は、逃避の時間であると同時に、壊れたものを組み替えるための時間でもあるのだ。星が見えなくなったなら作り出す、と歌うその姿勢は、現実を直視した上での小さな抵抗にすら感じる。だからこそこの楽曲は、感傷では終わらず、今この瞬間に立ち続けるための歌として、美しく、そして強く鳴るのだ。
文・伊藤亜希
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