ギター弾き語りシンガーソングライター・Mam_i_(マイ)は、2019年から都内を中心にライブ活動を開始した。2020年には、初音源となる「Revive」「ちっぽけ」をリリース。音源では、打ち込みやバンドサウンドを取り入れたポップスを放つ。さらに、男女3人組ボーカルグループ・OSTRIPのメンバーとしても活動するなど、歌い手としての可能性を追求するスタンスが、その活動展開から見えてくる。
まず触れたいのは、メロディーメイカーとしての才能だ。ポップスを軸に、シティポップ、歌謡曲、フォーク、ロック、ブルース、カントリー、さらにはボサノバやジャズのフレーバーをまとったラウンジポップまで、多彩なジャンルを自らの表現へ落とし込み、キャッチーなメロディーを繰り出す。メロディーと歌声という両輪が高い完成度で噛み合うことで、ジャンルを横断しながらも決して散漫にならない、Mam_i_だけのポップスが生まれている。
新曲「ロマンティック去らないで」は、夏の高揚感をまとった軽快なポップスで、センチメンタルさも感じるダンサブルな1曲。全体を支えるのは軽やかな4つ打ちのビートと跳ねるようなベースライン。そこへフュージョンを思わせるギターソロや煌びやかなキーボードが重なり、都会的な空気をまとったダンサブルなポップスを構築している。近年のシティポップ・リバイバルとも一線を画す音像は、70〜80年代のシティポップが持つ空気感を受け継ぎながら、それを令和のポップスとして再構築している。その現代性を決定づけているのが、Mam_i_のボーカルだ。ブレスをまとった軽やかな歌声と、随所に織り込まれたハーモニーが柔らかな浮遊感を生み出し、甘く心地よい響きの中にも、着地しきらない余韻を残している。
グルーヴへ溶け込む歌声ーー軽やかな響きが生む心地よさ
ボーカルもこの楽曲の魅力を語る上で欠かせない。Mam_i_の歌声は、声量で押し切るタイプではない。ブレスを多く含んだ声質を生かし、メロディーをリズムの中へ滑り込ませるように歌っていく。冒頭から綺麗なファルセットを聴かせているのも聴きどころだが、そこから中低音への移行がじつに滑らか。また、過度なビブラートやフェイクに頼らず、フレーズごとの抑揚もあえて控えめにすることで、肩の力が抜けた都会的なムードを作り出している。さらに、メロディーに合わせて声音を変えるなど、ボーカリストとしての才能も光っている。音域を広げてドラマチックに聴かせるのではなく、グルーヴを優先した歌唱だからこそ、軽やかで、何度もリフレインしたくなる中毒性が生まれている。英語詞も決してアクセントとして浮くことなく、日本語のフレーズと同じ温度感で歌いこなしている点も、この曲の洗練された印象につながっている。
この曲が描いている“ロマンティック”は恋愛だけを指してはいない。<くりかえすあの日のミュージック>という歌詞が象徴するように、音楽そのものが記憶を呼び起こすものだと綴っているのだ。そして、時間も、街の景色も、流れていた音楽もすべてがひとつになり、<去らないで>という願いへと収束していく。その構造は、70年代~80年代のシティポップが得意としてきた都会的なノスタルジーに通じるものがある。
「ロマンティック去らないで」だけでなく過去曲まで聴き進めると、Mam_i_というアーティストの個性の源流は、音楽との向き合い方そのものにあることが見えてくる。自分と音楽の関係性を曲にしていく――それがシンガーソングライターMam_i_の正体だ。
文・伊藤亜希
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