ウォームな音像が描く無重力への逃避行――The Riverside Orca(ザ・リバーサイド・オルカ)『Suffer』の海外文学に通じる距離感と内省

ウォームな音像が描く無重力への逃避行――The Riverside Orca(ザ・リバーサイド・オルカ)『Suffer』の海外文学に通じる距離感と内省

2026/04/01

The Riverside Orca(ザ・リバーサイド・オルカ)は、東京を拠点に活動するオルタナティブバンド。メンバーはShun(Gt./Vo.[Ba.])、Yuki(Ba.[Gt./Vo.])、Jare(Gt.)、Masato(Dr.)の4人。シューゲイザーやドリームポップをルーツに持ちながら、ウォームなサウンドメイクと、どこかネオアコースティックを彷彿とさせるナチュラルなボーカルアプローチが特色だ。バンドの公式Xの初ポストが2024年11月。ミックス・編曲ができる人とともに、楽曲制作におけるアドバイザーを募集している。2025年には、SoundCloudにオリジナル音源をアップし、そのリンクとともに、ギターとドラム募集の告知も掲載。同年4月20日には初ライブを行っている。今回ピックアップする『Suffer』は、この初ライブでも披露されている。2026年3月3日にはEggsでも同曲の配信をスタートさせた。  

Suffer』について、まずは歌詞に注目したい。現実から離れたいと思いながら、現実の循環を受け入れなければいけない感情の機微が、「地球」や「月」といったモチーフを使い、綴られている。状況を切り出した感情の散文でありながら、海外文学に通じる静かな距離感をまとった匂いがある。ここに、このバンドのオリジナリティーを感じる。また<誰も来れないところまで>というフレーズには、解放への希求と同時に、孤独へ向かう感覚もにじむ。 

輪郭を抑えた音像――ボーカルを活かすバンドアンサンブル

音の輪郭をあまり立たせず、やや後ろに引いた位置で安定したグルーヴを作り出すサウンドは、少し淡々としながらしなやかに進行する。シューゲイザー然としたアプローチもあるが、バンドアンサンブルのひとつの色合いとして機能している点も興味深い。同じフレーズを繰り返しながら少しずつ変化していく構造で、聴き手をゆっくりと引き込んでいく。低域と高域の差をあえてあまり見せず、滑らかに起伏を描いていくサウンドスケープは<月へ行こう>という歌詞と相まって、無重力な空間を作り出している。  

ボーカルも、落ち着いたトーンで丁寧に歌っていくが、語尾の揺れやブレスの混ぜ方で感情を滲ませることで、文学的な言葉を主観的な感覚へと引き寄せ、聴く者の中に静かに落とし込んでいく。バンドアンサンブルもボーカルに寄り添い、全体のバランスを保ちながら支えている。  

耳に触れたときの質感のなめらかさ、全体を包み込むような響き。音数を絞ったシンプルな構成とリフレインが、包容力と緊張感の両方を担い、限られた起伏の中で、豊饒な物語性がサウンドの中に立ち上がってくる。  

文・伊藤亜希


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この記事を書いた人

伊藤亜希

音楽ライター/編集者。学生時代から音楽雑誌に勤務後、アーティストのFCサイトの立ち上げ・運営などを経験。現在はフリーランス。『RealSound』『MUSICA』、FC会報、FCサイト等で執筆中。『Eggs』は未知の音楽に触れられ楽しいです!

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