東京を拠点に活動する4人組ロックバンド、Crows of Scenery(クロウズオブシナリー)。Ryo(Vo.)、Tomoki(Gt.)、JuKi(Gt.)、Takushi(Dr.)からなる彼らは、ロックを軸にしながら、ラウドロックやエモ、オルタナティブ、メロディアスなロック、ポップスなど様々な要素を取り込んできた。しかし、その根底に流れているものは一貫している。どの楽曲にも共通しているのは、バンドサウンドが生み出すスタジアムロックのようなダイナミズムだ。
最新シングル「Arrival」もまた、その強みが鮮やかに表れた楽曲である。
「Arrival」はTomoki,Ryo,Takuが作詞、Ryoが作曲を手掛けている。過去楽曲のクレジットを見ると、作曲で前述した3人の共作は見られるものの、作詞を共作しているパターンは珍しい。つまり、それだけこの歌詞には現在のCrows of Sceneryが色濃く投影されているということだ。
彼らが歌詞で紡ごうとしているのは、不完全な自分を自覚し、そこを背負ったまま歩くことだ。前半では“光”に対する描写が何度も出てくるのが特徴的で、過去の傷や喪失感を抱えながら、それでも前へ進もうとする人間の姿が、彼らの言葉で描かれている。また曲の中で繰り返される<You're still in my sight>というフレーズは、失われたものを忘れるのではなく、自らの視界に残し続けることを選んだ意志を語っている。
ロックのダイナミズムと叙情性――4人が鳴らす躍動のアンサンブル
サウンド面では、ロックを基盤としながらも、エモ由来の叙情性や現代的なロックアレンジが自然に溶け込んでいるのが特徴。ツインギターによる厚みのあるサウンドは楽曲に広がりを与えつつ、単なるラウドへ向かわず、メロディーを引き立てる役割を担っている。さらに印象的なのがサビ前の展開だ。短いインストゥルメンタルのフックを挟むことで雰囲気を変え、サビへと解放していく。この構成によって生まれる起伏は、まさにロックバンドならではのダイナミズムと言えるだろう。ジャンルの引用や流行の手法を取り入れながらも、最終的に鳴っているのはあくまで4人のバンドサウンドであることが、この曲の大きな魅力だ。
そして、そのサウンドの中心にいるのがRyoのボーカルである。彼の歌声は透明感だけでなく、どこか甘さを帯びている。高音域も単純なハイトーンとして響くのではなく、柔らかな倍音をまといながら伸びていく。また、フレーズの運び方、母音のニュアンスにはR&B的な滑らかさも感じられる。ロックボーカルらしい推進力を持ちながら、音と音を丁寧につなぎ、感情を旋律の中へ溶け込ませていくアプローチは、楽曲の叙情性をさらに引き上げていると言っていいだろう。音圧ではなく、その甘さを帯びた透明感で楽曲の物語を紡ぎ、引き込んでいくタイプのボーカリストだ。
「Arrival」は、迷いながらも、自分自身に言葉をかけ続ける人間の歌である。自分に本当に優しくできるのは、自分だけだということをこの曲を聴きながら思い出した。多彩なジャンルへ挑戦しながらも、常にロックバンドとしてのダイナミズムを失わないCrows of Scenery。積み重ねてきた現在地が、この1曲には確かに刻まれている。
文・伊藤亜希
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