Kaoruが放つ“知る愛”のサウンドストーリー。初音源『知愛(demo)』に滲む痛みと余韻
千葉県柏市発の新鋭バンドKaoru。メンバーは、ユナ(Vo./Gt.)、ショウタ(Gt.)、アヤネ(Ba.)、山田(Dr.)の4人。バンドの公式Xの初ポストが2025年4月であることから、結成してまだ日が浅いことがわかる。千葉県はもちろん、都内でも精力的にライブ活動を展開中だ。
「知愛(demo)」は、Kaoruにとって初音源。2025年11月13日に「Eggs」のみで配信がスタートした。たゆたうようなリズムに乗せて、淡い残響に包まれたギターが鳴り始めるイントロから始まる本曲は、シューゲイザー寄りのドリームポップ。ドリームポップの甘美な浮遊感とシューゲイザーの分厚いギターサウンドを併せ持つ、じつに濃密な1曲だ。
タイトルの『知愛』は造語だと考える。辞書をひいても出てこない。「知る愛」とも解釈できるが、歌詞を読み解いていくと、痛みを伴いながら愛を知っていくようなニュアンスを感じさせる。例えば、<嗚呼 君の目に映るのが僕ならば どれほどよかったのだろう>というフレーズに象徴されるように、叶わぬ想いに揺れる儚い感情が全編に漂う。ボーカルは非常に繊細で、声の端々ににじむ脆さが言葉の切なさを一層引き立てている。
また<君の特別になりたかったのに>という直截的な表現が、歌詞全体を通して、結果、逆説的に主人公の繊細さを際立たせているのも印象的だ。
シューゲイザーの渦の中に、儚さを立ち上げることに成功している
サウンド面は、静と動のメリハリ、そしてこのメリハリをスムーズにつなぐ緩急あるグルーヴが肝。バンドアンサンブルも後半に向かい徐々に音のレイヤーが厚みを増していく構成になっていて、サウンドそのものでもストーリーを描こうとする意欲が感じられる。歌も言葉ひとつひとつを丁寧に発しており、言葉の立ち上がりが若干揺らいだりするところもあるが、そこが曲調と合っていて気にならない。むしろ魅力になっている。また、ロングトーンを力強く伸ばす安定感を見せるなど、バンドサウンドもボーカルも、今まさに進化を続けている最中であることがわかる。
『知愛(demo)』は、シューゲイザーの渦の中に、儚さを立ち上げることに成功した曲である。ゆえに、聴き終わった後に、淡い痛みが余韻として聴き手の中に沈殿したように残る。「あなたに響く音を」というバンドの言葉通り、Kaoruのサウンドは聴く者の心の深い部分に静かに染み渡ってくるようだ。
文・伊藤亜希
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