Trooper Salute(トルーパーソリュート)|12月10日EP『Trooper Salute 2』をリリースするシンフォニックインディロックバンドTrooper Saluteにインタビュー

Trooper Salute(トルーパーソリュート)|12月10日EP『Trooper Salute 2』をリリースするシンフォニックインディロックバンドTrooper Saluteにインタビュー

2025/12/08

名古屋発の5人組シンフォニックインディロックバンド、Trooper Saluteが、2025年12月10日に2nd EP『Trooper Salute 2』をリリース。『FUJI ROCK FESTIVAL ’25』や『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2025』など、本年、国内の大型フェスに出演し、今、シーンから注目を集めている存在だ。詞曲を手掛ける小宮颯斗(Key.)と、ムサシ(Vo.)に話を聞いた。

Trooper Saluteの音楽に不可欠な「面白さ」 

──今回の新作はバンドにとってどんな意味合いを持つ新作になりましたか? 

小宮:自分達の中ではポップで明るい曲と、オルタナティブでちょっとダークな曲の2種類を作り分けているんです。1st EP『Trooper Salute』(2024年)は、明るい方に寄せたんです。それから、来年(2026年)に出したいと思っているアルバムはダークな雰囲気にしたいので、今回はポップとダークの中間に、明るさと暗さのグラデーションをつけた作品にしたいという気持ちで曲作りを始めました。 

ムサシ:初音源化の1st EPではレコーディングすることも不慣れだったし、楽曲のアレンジとかもあんまりできずに、バンドサウンドをそのまま音源にするところが中心になっていたんです。でも、2nd EPでは、「野菜生活」のブレイク部分や間奏などで録音を重ねて、音源の強みを出すということを考えられるようになったと思います。

──音源を作る時にサウンドをレイヤーで構築していくと、また違う表情が出ますよね。前作よりもレコーディングの楽しさは増しましたか? 

ムサシ:私は伸び伸びやれて、声も出ていたなって思います。でも楽器陣は難しいアレンジに挑戦していたから、すごく苦労して何テイクも録りながらレコーディングをしていましたね。 

小宮:レコーディングを1年やってきて慣れてきた分、フレーズを難しくしていったので修行をしてるような気持ちになりました(笑)。 

ムサシ:そうだね(笑)。 

小宮:全てのメインの楽器パートを録り終えた後に、(シンセやパーカッションで)音を足していくフェーズに入るんですけど、そこから大喜利をしているような感じになって(笑)。いかに面白くできるかを考えるのが楽しかったです。 

──その面白さは、このバンドの音楽性として重要なファクター? 

小宮:そうですね。ライブに来てくれるファンの気持ちになった時に、毎度毎度ライブも音源も何かしらの発見があった方がいいかなと、客観的に思っていて。日々、面白いものを作りたいと思っているので、そこをいつも意識するようにしていますね。

 ムサシ:それこそ「思考回路」は“モヘンジョ・ダロ”とか、フックになる……耳に残るような言葉を小宮が入れてくれて。どんどん新しい要素を入れていって、聴く人に新しい発見をしてもらいたいですね。 

2nd EP『Trooper Salute 2』収録曲「思考回路」について

──まさに2nd EPに収録されている「思考回路」の制作過程をお伺いしたかったんです。イントロがめちゃくちゃカッコイイじゃないですか。その後にまったく違う音像のポップな展開になる。令和のニュー・ウェーブだなと思いながら聞きました。 

小宮:ありがとうございます。1st EPを作り終わって1カ月ぐらい経ってから、ライブで共演したケバブジョンソンというバンドのステージを観た時に、すごく衝撃を受けたんです。自分が今まで聴いていたポップスとは違う面白さがあって、自分達が目指す方向のひとつを切り開いてくれた感じがありました。「思考回路」は7拍子が入るんですけど、7拍子にしようと思っていたわけではなくて、ポップスの必要性に駆られて次々とアレンジを考えていって今の形になった。最近は各メンバーが(それぞれの楽器を)アレンジするようにしてたんですけど、「思考回路」はほとんど自分がアレンジを決めましたね。 

ムサシ:ケバブジョンソンって、きっとポップなんだけど音楽的にひねりがあるんです。小宮の中には、例えば理論的にリズムとかアレンジに一癖あるポップスを作りたいなっていうのがあったと思うんですよ。私も一緒にケバブジョンソンのライブを観て感動したので、小宮のやろうとしたかった音楽がわかる。何となくですけど。

──「思考回路」の構成は複雑だと思いましたが、ムサシさん、ライブなどで歌ってみてどうでしたか? 

ムサシ:基本的にはどの曲も自分のハードルを越えていく挑戦なんですけど、「思考回路」は変拍子の曲なので、最初はリズムをつかむところに1番苦労しました。ただ、それを超えちゃうと逆にその7拍子が気持ち良くなってくる。やればやるほど、シンクロ感が増していくところが面白い曲だなと感じました。 

──小宮さん、ムサシさんの声質をどう解釈されていますか? 

小宮:ポップですよね。煌びやかさも出せるし、ちょっとエッジの効いた声も出せる。僕はボーカルも楽器のひとつだと思っているんです。ボーカルにもいろいろ種類があると思うんですけど、ムサシに関しては、とにかくバンドがどんなことをやっても絶対に中央かつ前にパンッと出てくれるリード楽器のような側面があると思っているんです。こっちがいかなるアレンジをやっても絶対的にボーカルが前に出てくれるのは、バンドにとってめちゃくちゃありがたい。必殺の武器を持ってるような感じですね。 

──楽曲のレトロ感は意識して出していますか? 

小宮:2nd EPは多少意識しましたが、じつは、1st EPを世に出した時に、世間からすごいレトロな曲だと捉えられて、そこで初めて自分たちの曲はレトロなんだと思いました。 

──そうだったんですね。驚きました。 

ムサシ:小宮のやりたいことは、懐かしさとそれに伴う寂しさみたいなところを楽曲に表現すること、あと、好きなことだと思うんです。それに引っ張られてレトロっていう言葉が出てきたんだろうなと思っていて。あとは私が小さい時に歌謡曲を聴いていたから、自然と影響されて歌謡曲を感じる歌声に捉えられることもあるのかなと思います。 

お客さんと直接コミュニケーションをとることがCD即売会の醍醐味の1つ 

──“CD即売会ライブ”をやられていますが、 “レコ発ライブ”ではなく、“CD即売会ライブ”にした意図は何ですか? 

小宮:お世話になっているライブハウスの店長さんに「即売会ライブをやってみたら面白いんじゃない?」って言っていただいたのがきっかけです。去年出した1st EP(のリリース時)でやらせていただいて、今回もやろう、と。レコ発は曲を世に出して、ある程度知った状態でライブに来てくれるお客さんに、どう切り込むかだと思うんです。でも即売会はバンドや、新曲への予備知識がゼロで、興味本位で見に来てくれるお客さんに、ライブで直接楽曲を届けられるものだと思うんですね。

ムサシ:私達のことをよく知らないお客さんに、いきなりライブを観せるから、面白いよね。それから、直接自分達からお客さんにCDを買ってもらうという交流があるのも嬉しいです。 

小宮:自分達のライブを観た上で、直接対面でCDをお渡しできるのが即売会の醍醐味。やる意味がそこにあると思います。昨年度の即売会でそれを痛感して、それで今年も絶対やろうって決めていました。 

──即売会のセットリストはCDの収録曲順とか? 

小宮:いや、もうバラッバラで。去年は仲のいいバンド3組ぐらいと対バンしたので、持ち時間の都合上、CDの収録曲しかやらなかったんですけど、今年はワンマンでやらせていただくので、1st EPの曲なども入れつつ。2nd EP以外の曲も結構やります。2nd EPの曲をどう際立たせるかというストーリーラインをしっかり練ってセットリストを組もうと思っています。 

──ところで、印象的なバンド名の由来を教えてください。 

小宮:自分が高校生の時に吹奏楽部でマーチングバンドをやっていたんです。「Trooper Salute」は自分がマーチングの曲で1番好きな曲で。脳の片隅にずっとあったので、メンバーにまったく相談せずにバンド名を決めました(笑)。 

ムサシ:(笑) 

──(笑)シンフォニック・バンドと銘打っているのは、マーチングバンドのルーツも関係していますか? 

小宮:お世話になっているライブハウスの店長さんが由来です。言いたいところは、いろんな楽器があるバンドですよっていう。 

ムサシ:店長さんが“シンフォニック・インディー・ロックバンド”と紹介文を書いくださった時、「え?うちらってそうなんだ!」と思って。で、そのまま使わせていただいています。 

──どういうバンドなのかと思って音を聴きたくなりますよね。私が思ったのは“オルタナティブ・ポップ”。 

小宮:嬉しいです。 

──原稿に使ってもいいですか? 

小宮・ムサシ:はい、もちろんです! 

──では、バンドを長く続けていく上で大切なことを教えてください。 

小宮:大切なことは、絶対的なリーダーがいること。僕達は音楽の趣味がバラバラでプレイヤーとして集まったので、音楽性の統一ができなくて。誰か1人ブレーンがいて、他の4人がどうやったら輝くかを常に考え続けて試行錯誤していくことが重要だと思ってる。 

ムサシ:うん、確かに。小宮は音楽性の軸になる人のイメージですね。私がバンドを続けていく上で大事だと感じているのは、全員で細々とした事務作業をちゃんとやること。練習日程をまとめるのは誰がするとか、SNSの更新は誰が担当するとか。私はジャケットの絵も描いているし、音楽じゃない仕事もいっぱいあります。音楽以外のことをちゃんとやっているから、音楽に専念できるところもあると思います。 

小宮:会社みたいだ(笑)。 

ムサシ:(笑) 

──お2人がバンドにハマった瞬間を教えていただけますか? 

小宮:2024年の10月に『ドデ祭』という、僕達にとってはありえないくらい大きなイベントに出演させていただいたんです。共演は崎山蒼志さんや向井秀徳さん。出演が決まってから本番までの4カ月間、そのイベントありきでスケジュールを組んで、本番のライブで、その積み上げたものを出せたって感じた瞬間が、Trooper Saluteを本気でやっていこうと思えた瞬間でした。 

ムサシ:私は大学で小宮くんが軽音部に誘ってくれたんですけど、それまでは音楽をやる思考がなかったんです。歌も歌ったことがなかったし。ずっと、なぜ自分が人前に立って歌うのかってことをずっと考えてました。『ドデ祭』も素晴らしい体験だったけど、2025年8月29日の『NiEW presents exPoP!!!!! vol.176』という無料公開のイベントに、トリで出させてもらって。アンコールで「十纏」をやってた時に、ものすごい熱狂したステージになったんです。その時に私が自分の発してる言葉や自分の動きのひとつひとつでお客さんがリアクションしてくれて。心が動く瞬間を作っているんだなと考えるようになって。面白いことだなと思いましたし、勉強にもなりました。 

地元・名古屋に新しい音楽シーンを作りたい

──今後の活動への意気込みやビジョンを教えてください。 

小宮:今改修工事中の日比谷野外大音楽堂は、自分がずっと聴いてきたいろんなアーティストがワンマンでライブをやる素晴らしい会場。憧れの場所なんです。だから、ワンマンライブを成功させるまでは、死んでも死に切れない。10年以内に絶対日比谷野音のステージに立つことが自分のビジョンです。それに向かってバンドを進めていきたいなって思っています。 

ムサシ:私はとにかく体に気をつけて、行けるところまで行こうという気持ちです(笑)。 

──地元名古屋のシーンでの今後の展望を教えてください。 

小宮:名古屋は自分達のようなバンドは少なくて。 

ムサシ:ギターロックとかメロコアとかがメインシーンになってくるのかな。 

──そうだと思います。ひとつの大きなシーンですよね。フォーリミ(04 Limited Sazabys)とかも愛知出身ですし。愛知でフェスもやってますし。 

小宮:頑張って活動しても、そういうシーンが好きな音楽ファンには、きっとまだTrooper Saluteって名前が届いていないと思うんです。僕達がギターロックやメロコアのシーンに対抗できるようなひとつの新しいシーンの核の部分になっていきたいです。 

ムサシ:オルタナの音楽シーンがもっと盛り上がるといいなっていうのはずっと思っていますね。 

小宮:名古屋のニッチな部分から自分達のような音楽をやりたいというバンドがもっと増えていって、ちゃんと全国的に評価されるように先陣を切っていきたい気持ちがあります。 

──最後にEggs世代のインディーズバンド達へのメッセージをお願いします。 

小宮:バンドを続けていく中で、何回もどっちを選べばいいんだっていう二択が出てくると思うんです。その二択が出てきた時に、自分の好きってだけで選ぶのではなく、いろいろな可能性を考え、見極めて選んでいくことが大事だと思います。その選択でツライこともあると思うんですけど、後々絶対いいことがあると思います。 

ムサシ:そうだね。若い人達とも一緒に頑張っていけたらと思います。 

取材・ページディレクション:伊藤亜希 
執筆:橋本恵理子 

EVENT INFO

Trooper Salute 2 CD即売会ライブ

DATE
2025/12/10
PLACE
名古屋stiff slack VENUE
OPEN/START
18:30/19:00
TICKET PRICE
一般 ¥3,000 / U-22 ¥ 1,400 / 高校生以下 入場無料 (ALL +1D)
TICKET
https://giggs.eggs.mu/v15DOQM

RELEASE INFO

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この記事を書いた人

伊藤亜希

音楽ライター/編集者。学生時代から音楽雑誌に勤務後、アーティストのFCサイトの立ち上げ・運営などを経験。現在はフリーランス。『RealSound』『MUSICA』、FC会報、FCサイト等で執筆中。『Eggs』は未知の音楽に触れられ楽しいです!

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