アーティストを発掘し早耳な音楽リスナーに自信を持ってレコメンドするEggs主催のライブイベント『Eggsレコメンライブ』。2020年10月から続いてきたこのイベントの第21弾が2024年12月9日、東京・下北沢近松にて開催された。会場に足を運べない人たちのためにYouTubeのEggsチャンネルで無料生配信も行われた『EggsレコメンライブVol.21』のレポートをお届けしよう。
一番手を担うのはクレイジーウォウウォ!!だ。現役の音楽専門学校生4人によって今年5月に結成されたばかり、しかも学校内企画やオーディション以外のライブに出演するのは今回が初めてだという彼らだが、単に初々しいだけではない前のめりなアティテュードと、自身の音楽を信じてまっすぐに放つピュアなエネルギーに目をみはった。
いきなり挑発的な「ヒッサツワザ」から、“あ、ビバビバビバ”のフレーズもクセになるキャッチーな「VIVA!!」へとハイテンポに畳みかけ、最初は様子見状態だったフロアを果敢にバンドのペースに巻き込んでいく。ボーカル&ギターだけでなく曲によってはハンドマイクのみや楽器をキーボードに切り替えるなど杉村優希(Vo.)が見せたフロントマンとしてのバリエーションにも期待が募る。
「(外部でのライブの)記念すべき1回目にこのステージに立てたことを本当に嬉しく思っています。今日はかまして帰ります!」との宣言通り、ラスト「水平線」まで疾走感みなぎるステージで、見事にトッパーの役目を果たした。
ちょっとざらついた、けれどたしかな温もりを宿す小山空良(Vo./Gt.)の歌声、オルタナティブロックとフォークを融合させた包容力豊かな独自のバンドサウンドでオーディエンスのハートをたちまち鷲掴みにしたNorenn。
彼らが『Eggsレコメンライブ』に出演するのはこれが2回目となるが、池田向晴(Gt.)加わり、さらにはメンバーチェンジも経た4ピース編成となってからはいっそう音楽性の幅が広がったという。そのひとつの証明なのか、この日の小山は全編の演奏をアコースティックギターで貫き、より生身に近しいところで音楽とメッセージを発しているように感じられた。
日々にたゆたう空気感、ありふれているようでいて特別な日常の情景、その瞬間の気温や湿度までありありと伝わる人肌の音楽。印象に残っているのは、いくつかの歌のなかに登場した“alright” “大丈夫”のワードだ。それはおそらくNorennというバンドの核でもあるのだろう。「遠い葵い光」のラスサビで歌詞の一部を“下北沢駅前”と替え歌にしたさりげなさも心憎い。
福岡から車を飛ばしてやってきたThe カンナクラブがステージに現れるや繰り出したのは、瞬きする隙さえ与えないエモーションの波状攻撃だった。バンド名や「エイプリルガール」という曲タイトルからは明るくポップなイメージが先に立って浮かぶが、彼らからほとばしり出るのは行き場のない、生々しいまでの恋慕の情だ。
“君といる僕が1番嫌いです” “苦しみこそが正義だろ” “苦しさこそが美しい”……ツジマル(Vo./Gt.)がリッケンバッカーを掻き鳴らしては次々と吐き出す救いのないフレーズは、その救いのなさゆえに聴き手の胸の奥深くに刺さって抜けない。いっそ君の犬になりたいというあけすけな自虐を孕んだ「イヌ」もそう。このうえなくエグいけれど、そう叫ばずにいられないほど切実な心情も痛いほどわかってしまう。
彼らの地元、福岡の繁華街をモチーフにしながらも普遍の共感を呼ぶ「親不孝通り」では、メンバー全員が声を重ねる“そっと抱きしめて”という言葉の情感たっぷりなリフレインに、フロアいっぱいにハンドクラップが広がった。
終盤に差し掛かった『EggsレコメンライブVol.21』にカンフル剤のごとき存在感で颯爽と登場したReinoreは、端正なメロディラインにノスタルジーをまとった情緒豊かな歌詞、どこか乾いていながらも初期衝動的な激情も併せ持ったサウンドという、ほぼほぼ無敵な三位一体で1曲目の「星間首都高速」から早くもオーディエンスを圧倒した。
開催の5日前に急遽今回のイベントへの追加出演決定がアナウンスされたReinore、MCでも「なかなかこうした業界の方々と絡む機会がないので、お誘いいただいて本当に嬉しいです」と恐縮がちに口にしていた佐藤ユウヤ(Vo./Gt.)だが、その佇まいは微塵も浮き足立っておらず、むしろ本領を全開にして会場を彼らの色に染め上げていくのだから強力だ。3曲目に演奏された「公衆競争」の1番の途中で佐藤の弦が切れてしまうというアクシデントに見舞われても、まるでお構いなし。演奏を止めるどころか、ますますアグレッシブに加速させていく。
全6曲を見事にやり遂げて去った彼らのあとにはとてつもないものを目撃したという充足感が残った。
トリは2025年3月に結成5周年を迎える3ピースバンド、Paper moon Endrollが務めた。「あとはやるだけ!よろしくお願いします!」、ヨコスカアラタ(Vo./Gt.)が力強くそう挨拶するや堰(せき)を切って溢れ出すバンドアンサンブル。
日々に抱える焦燥も葛藤も全部抱えたまま、それでも“いつか光を掴むまで 歌うよ”と誓う「生活のなかで」、“散々だった昨日も洗い流せ”と燦々とした未来に諦めず手を伸ばす「季節と共に」と彼らが全身全霊で歌い奏でる音楽に拳を突き上げずにはいられない。
「Eggsは若手バンドやインディーズバンドはみんな登録してるプラットフォーム。僕らも結成当初すぐに音源を配信したり、Eggs企画のライブに呼んでいただいたり、ずっとお世話になっていて。今日はそんな多大なる恩をぶつけます!」とめいっぱいの熱量で届けられた「日々と暴動」がいっそう激しく場内を揺らす。このイベントに先駆けてEggsサイト上にて公開されたインタビューを振り返り、「(ライブ中)みんなの表情がどんどんほころんできたり、楽しそうに世界観に入り込んできてくれるのが嬉しい。それが俺の原動力です」と改めて告げたヨコスカ。
ラストの「Find us」に滲ませた切なる願いもまた彼らをこの先へと走らせる力になるのだろう。
Eggsスタッフがただ純粋に、かつ本気でおすすめしたいアーティストだけが揃うイベントとあって今回も各バンドそれぞれにオンリーワンな魅力が存分に発揮された大充実のステージだったと断言したい。次はどんな出会いがあるのか、ぜひともその目で確かめてほしい。
写真・緒車寿一/文・本間夕子
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