Smoke From the Royalは、5人組のオルタナティブロックバンドだ。メンバーは、Gaku(Vo.)、戸塚玲陽(Gt/Vo.)、市澤爽斗(Gt.)、島澤来空(Ba.)、川澄竜之介(Dr.)。都内を中心に活動を展開している。初音源となる「夢見心地」「ハイエンド」をデジタルリリースしたのが2024年7月。以降、これまで合計7曲とハイペースでリリースを続けている。Eggsでも全7曲を視聴することができる。ボーカルのGakuはシンガーソングライターとしても活動しており、SNS総フォロワー数は1万人を超える。作詞・作曲を主に手掛けるのはギター&ボーカルの戸塚だ。
「Blue Line」は、イントロから優美なギターのフレーズが響く、スケール感あるミディアムチューン。後半に向けて大きくクレッシェンドしていくバンドアンサンブルのサウンドレイヤー、楽曲構成、そしてGakuのボーカルディレクションが、楽曲にダイナミズムとストーリー性をもたらしている。全体的には、英国ロックの独特の繊細を軸にしたサウンドながら、オーセンティックなギターソロが入ったり、モータウンを彷彿させるリズムのフレーズがチラリ出てきたりと、メンバー全員が非常に熱心な音楽リスナーであること、さらにこのバンドの音楽偏差値の高さを感じる。しかしながら「Blue Line」の最大の魅力は、すべてのバンドアンサンブルが、メロディーを活かすように構築されていることだ。音数、音圧、すべてがメロディーを活かすように配置されている。しかもバンドアンサンブルが希薄にならない、一歩手前のギリギリのバランスで。メンバー全員が楽曲の方向性を理解し、共有しあっていなければ、Gakuという天才的なボーカリストがいるとはいえ、ここまでギリギリを攻めないだろう。たゆたうようなミディアムチューンながら、ヒリつくようなスリリングな印象を残すのは、楽器陣のそれぞれが、前述したギリギリまで攻めているからだと思う。
歌詞も含めて芳醇なルーツが香る。それがSmoke From the Royalの大きな武器
「Blue Line」の憂いを帯びたメロディーを、ボーカルのGakuは多彩なアプローチで立体的にしている。Aメロではブレスを空気に溶け込ませささやくように、一転、サビではGakuの声が最も映える中高音域のトーンを安定して力強く響かせる。さらに一音だけ綺麗なファルセットで抜いたり、言葉の終わりで微妙に息を残すなど、非常にスキルフルだ。発音自体も独特。ほぼ日本語のみの歌詞だが、母音で英語のような発音を見せ、滑らかに次の言葉の子音に繋いでいく。この日本語を英語っぽく聴かせる母音の発音と子音への繋ぎが、楽曲全体の中でフックになり、聴いている者の耳を捉えて離さない。最後に触れておきたいのが、後半に出てくるGakuの超ロングトーンだ。ただ声量任せに伸ばすのではなく、喉の開き方と息の混ぜ方を段階的に変え、ビブラートの波を作り出している。歌詞も個性がある。<ブルー>を「憂鬱(Blue)」と捉え、その存在が変化させていくことで、感情の変遷を描写している。ブルー=憂鬱って、ブルースの語源じゃん、と歌詞を読みながら思わずニヤリとさせられました。
歌詞にまで漂うルーツの香り。このルーツの芳醇さこそ、このバンドの最大の武器である。
文・伊藤亜希






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