3月3日は雛祭りである。ということで、〜三人官女ノ集イ〜と題した、ガールズスリーピースバンドが集合した「#楽園収穫祭」が下北沢MOSAiCにて開催。この日はあいにくの雨模様となったが、そんな陰鬱な天気を吹き飛ばすようなフレッシュなバンドたちによる祭典である。アイドル、ダンス&ボーカルグループが全盛と言える時代の中でバンドを選んだ女性たちの生き様が鳴らされた1日をレポートする。
山口からやってきた雛祭りの使い、リンダ(サブマリンオルカ号)

オープニングアクトは山口県出身のスリーピースバンド、サブマリンオルカ号のドラム&ボーカルのリンダ。ステージにはぼんぼりのような12体の金魚のちょうちんが設置されていて、雛祭りの特別演出だということを感じさせてくれる。普段とは違い、弾き語りだとアコギを弾きながら歌うというスタイルであるが、テレビ山口の番組でテーマソングに起用されていることを紹介してから演奏された「yokan magic」を歌い始めると、喋っていた声のイメージから一変する、歌うために持って生まれたような声に驚かされる。どこか凛とした空気を持ったその声はどうしたって今度はバンドでのライブで聴いてみたいと思うものであるが、自身の地元である山口県柳井市のことを紹介してから歌い始めた「ゴー!ゴー!金魚ちょうちん」はステージに置かれたちょうちんがこの曲に合わせたものであり、またリンダが提唱する地元発の雛祭りスタイルであるということがわかる。いつか山口県の夏フェスで、バンドでのライブを観てみたくなった。
setlist
- 01.yokan magic
- 02.ゴーゴー!金魚ちょうちん
抜群のMC力も含めてどこまでも観客を楽しい気持ちにさせてくれるバンド、KIRIKABU

本篇トップバッターは埼玉県のKIRIKABU。3人全員がサングラスを装着してステージに登場するという姿からも楽しいライブをするバンドだということが伝わってくるが、そのサングラスをかけたままで最初に演奏されたのは「1,2,3」のコーラスがとんでもなくキャッチーな、この日のイベントのテーマ曲になっている「3ピース」で、音羽(ボーカル&ギター)が目元でピースサインを作るのも微笑ましいが、サングラスを外してから観客の手拍子と合唱、さらには拳までも煽るのはこのバンドがここにいる全員と一緒に楽しい時間を作ろうとしているからだということが伝わってくる「歌う歌」。間奏部分で音羽が全員サングラスを再びかけることを促してから喋り始めると、そのあまりに流暢な喋りっぷりにベテランっぽさすら感じてしまうけれど、その話すらもまたライブの楽しさに繋がっている。埼玉出身のバンドであるために、埼玉から来た観客に埼玉の名物が何かを聞くという距離の近さも実にこのバンドらしい。
しかし元カレへの消えない感情や想いを歌った「クレイジーガール」「フラッシュバック」という曲ではそうした感情を音で表すかのようにしてサウンドが一気に重さを増していく。それはつばさ(ベース)と美佑(ドラム)のリズム隊の力強さがそのまま音に表れているということであるが、それでもやはり楽しく終わるのはタイトル通りに初めてライブを観たという人でも全員で歌うことができるキャッチーさを持った「シンガロング」。2時間くらいのワンマンをやったら、音羽のMCで笑いが止まらないんじゃないかと思うくらいの話の達者っぷりだったからこそ、いつかそんなライブを観たいと思った。
setlist
- 01.3ピース
- 02.歌う歌
- 03.クレイジーガール
- 04.チャイム
- 05.フラッシュバック
- 06.シンガロング
歌詞とアンサンブルの驚異的な発想力を持ったバンド、みじんこらっく

10月に仙台で開催されたこのイベントにも出演している、みじんこらっく。この日は地元の東京でのライブとなったが、1曲目の「もんじゃ」が食べ物の曲かと思ったら「比べるもんじゃないけど」というフレーズの一部だったという発想力に唸らされる。赤いTシャツに茶髪という鮮やかな夏らしい出で立ちの豆粒(ボーカル&ギター)が紛れもなく詩人であることがわかるし、ゆるく(ベース)と塩(ドラム)が「TikTokで豆粒の弾き語り動画を見て、一緒にバンドをやりたいって誘った」というのも納得ができるシンガーソングライターだ。でも歌詞だけじゃなく、そのリズム隊による展開もシンプルなようでいて一筋縄ではいかないというか、スリーピースバンドならこう行くだろうという聴き手の予想を心地良く裏切ってくれる。その高い技術を駆使している演奏は音源で聴くよりもライブを観た方がよくわかるし、結成して1年という新星であっても元々それぞれが確かな技術を持ったプレイヤーだったということが伝わってくる。
その豆粒が弾き語りで歌っていたという「チケット」もこうしたライブなどのエンタメのチケットがそのまま互いの約束になるという歌詞が実に秀逸であるが、後半は畳み掛けるように曲を連発していくことによってそのグルーヴがさらに強くなっていくのがわかる。そのスピード感は音楽的というよりも精神的なパンクさをも感じさせてくれるし、その独特な歌詞とキャッチーなメロディの融合は楽曲の力で一気にバズる可能性を感じさせてくれた。
setlist
- 01.もんじゃ
- 02.あなたの寝顔を食べにゆく
- 03.ラックミュージック
- 04.チケット
- 05.つまんない
- 06.まって
- 07.もっと
- 08.バイバイ
名は音楽を表す、清冽な蒼さを持った長崎県佐世保市出身のマリンブルーデージー

「ずっっっと!」のイントロでの海音(ボーカル&ギター)の鳴らすギターサウンドからして、このバンドが紛れもなくギターロックバンドであることが伝わってくる。それはこの国のこの地で長い年月鳴らされ続けてきた音楽でもあるが、このバンドがそうした音楽を継承しながらもただのコピーではないことを証明するのが、海音の透き通るような歌声。それはまさにマリンブルーというバンド名にふさわしいものであり、青い照明がメンバーを照らしているのもバンド名に合わせてのものだろう。
その海音の歌声があるからこそ「2人の街」では嶺香(ベース)が歌う低いパートがスリーピースという限られた形態の中でもコントラストを作り出しているし、すずき(ドラム)の軽快な四つ打ちのリズムに合わせて手拍子と合唱が起きる「らったった」と、まだ19歳になったばかりとは思えない楽曲とライブの完成度の高さ。そんな中でも嶺香が主導してすずきのバースデーサプライズを行ったというエピソードがその年齢のガールズバンドとしてのリアルさと楽しさを感じさせてくれると、最後の「See'n'you」では3人全員の歌声が重なることによって美しいハーモニーが生まれていく。その音を聴いていて、彼女たちの地元である佐世保はきっと綺麗な海が見える街なんだろうなと思った。それをこのバンドの音楽が伝えてくれている。バンドはリリースされたばかりの「キラメキ」のツアーファイナルをその佐世保で行うが、いつかそこにこのバンドを観に行ってみたいと思っていた。
setlist
- 01.ずっっっと!
- 02.recollection
- 03.2人の街
- 04.いいあい
- 05.らったった
- 06.キラメキ
- 07.See'n'you
社会人として仕事をしながら音楽を鳴らす喜びを感じさせるほろ酔いバンド、ティプシーズ

10月の仙台開催時には地元バンドとして出演していたティプシーズがこの日の東京ではトリとして出演。長谷川(ボーカル&ギター)は仙台で仕事を終えてすぐにこの会場まで来たという完全なる社会人バンドで、だからこそ長谷川もなな(ドラム)もビール瓶を持って登場し、乾杯してからライブが始まるというのは仕事後の解放感を感じさせるが、そうしたイメージは緩く感じられるものだけれど、音を鳴らし始めると緩いどころかむしろエモーショナルなギターロックバンドであることがわかる。なながステージドリンクとしてビールを飲みながらもリズムが揺らぐことはないどころか力強さを感じさせるというのもそうだし、さきこ(ベース)がステージ前に出てきてイントロを弾く姿も。「こぼれ落ちても」で3人が向かい合うようにして音を鳴らす姿も、そうして音を鳴らしてきた先輩バンドたちのライブの光景が浮かんでくる。社会人として生活しながらも今でもそんなバンドたちの背中を追って音を鳴らしているということが確かに伝わってきた。
アンコールにも応えて3人が再び登場すると、この日この会場にいた全ての人を労い、その人生と生活を祝福するかのようにして「ほらビールで乾杯 朝まで飲もうよ一緒に」とサビで歌われる、このバンドがほろ酔いバンドと称されるのがわかる「ジャイブ!」で観客たちも各々が手に持った酒を掲げて乾杯をする。それはこのバンドも我々も日々を生きる中でこうしてこれからも音楽の力で解放されて生きていくのだということを示してくれる、この日の締めにこれ以上ないくらいにふさわしい曲とパフォーマンスだった。
setlist
- 01.黄昏ロマンス
- 02.東京メトロ
- 03.マイサンセット
- 04.もしものせかい
- 05.こぼれ落ちても
- en.ジャイブ!
■スタッフクレジット
執筆・取材:ソノダマン
撮影:満田彩華











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