長野県松本市発のイヤホンガールは、5人組のロックバンドだ。バンドのオフィシャルXへの初ポストが2022年8月。地元のライブハウス・松本ALECXをホームグラウンドに、積極的にライブ活動を展開していく。2025年10月2日に、8曲収録のアルバム『このままずっとってバカみたいで』を発表。本作から「このまま」「昼は中華がいい」がEggsでも配信がスタートした。
『このままずっとってバカみたいで』というタイトルを見て、この後に「いい」と続くのかなと思った。そう思わせる楽曲が、本作には並んでいる。特別な物語や強い主張を掲げるのではなく、「今、この瞬間の気分」を肯定する。その姿勢は、無防備なほど率直でありながら、決して無理を強いない。日常の中にある感情を、そのまま言葉にすることで、イヤホンガールは同世代のリスナーと自然な距離感を保っている。
シンプルなバンドアンサンブル、キャッチーなメロディー、瑞々しい疾走感を土台に楽曲バリエーションを見せるイヤホンガール。その中で「昼は中華がいい」は、やや変わり種の一曲と言える。タイトルからして肩の力が抜けているが、その脱力感は単なるユーモアではなく、楽曲全体の質感として一貫している。ボーカルにエフェクトを施すなど、音作りにおいて実験を楽しんでいる様子が伝わってくる点からも、サウンド面からバンドの柔軟性が感じられる。
音数が整理されたバンドアンサンブルも印象的だ。ドラムは一定の温度感を保つ役割を担い、ベースとギターがその上に穏やかに色彩を加えていく。ギターのフレーズも主張しすぎず、コード進行を大切にしているのがわかる。それぞれの楽器が、お互いの音を尊重し、聴き合うことで、絶妙な余白が生まれ、ボーカルに自由度を与えている。
日常を肯定するためのアイロニーが潜む歌詞
さて、ボーカルについてだ。「昼は中華がいい」に限らず、アルバム全体を通して言えることだが、声質自体に強いクセがあるタイプではない。注目したいのは、音符に対する声の置き方だ。母音を必要以上に伸ばさず、語るようにメロディーへ乗せていく。その自然さが、結果的に歌を“聴く”というよりも、“話を聞く”感覚に近づけている。この会話性こそが、イヤホンガールの大きな持ち味のひとつだ。
歌詞のアイロニカルな視点にも注目したい。日常の中に潜むささくれのような感情、その断片をユーモラスに描写し、最後は<なんも解決しないけど昼は中華がいい>と括る。客観的な視点が、このワンフレーズで自分のことになる、ある意味パンチラインだ。このワンフレーズだけで、聴き手は自分自身の日常と客観的な視点を重ね合わせることができる。大きな物語を語るのではなく、目の前の感情をすくい上げ、そこに自分自身の現在地を投影する。ここがこのバンドの最大の魅力である。
文・伊藤亜希
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