大阪を拠点に活動するヨルガヲ。メンバーは3名だが、その人数を軽々と超えて放つサウンドの厚みにまず驚かされる。Eggsのプロフィールには“ロック”、“オルタナティブ”、“Indie Rock”のカテゴリが表示されているが、そのサウンドは、ジャンルで括れない。ギターロック、エレクトロニカ、ドリームポップ、ファンク、ソウル、ヒップホップ、シティポップ、アンビエントなど、聴く者のルーツによって、曲の響き方が違ってくるような懐の広さを持っている。共通点を見つけるとすれば、どの曲もバウンシーで、たゆたうようなグルーヴがあるところだ。メンバー全員が、生楽器とラップトップミュージックの旨味を知っている、音楽偏差値が高いバンドだと推察する。
あえて言葉にするなら、シームレス・ミュージック。
そんなヨルガヲの最新曲「8:05pm」は、メロウなミディアムチューン。タイトルが示すのは、何かが始まる前でも、終わった後でもない、中途半端な時刻。でも確実に夜は始まっている。この曖昧さ、でも夜が始まるほんの少しの高揚を、見事に楽曲に落とし込んでいる。劇的な展開や大きな起伏を用意せずとも、一定の推進力を保ったまま時間が進行していく。
ジャンルの垣根を溶かすシームレス・ミュージック、そのグルーヴ
「8:05pm」は、スローコアを彷彿させるテンポ感と、ドリームポップ的な音像処理を横断しながら、ボーカルの発音や、途中の高音域、フェイクのようなフロウの変化などでブラックミュージック文脈を色濃く見せる。抑制されたリズムの反復によって時間の流れそのものを描くアプローチは、スローコアが持つ、余韻の美学と重なる。一方で、ギターの音色や空間系エフェクトの使い方には、輪郭をぼかしすぎない精度があり、ドリームポップ特有の浮遊感を現実の時間軸に留めて、グルーヴィーに仕上げているところが素晴らしい。ともすれば内省的と捉えられがちなサウンドアプローチでありながら、外に向かう解放感がある。さらに、ビートミュージックでありながら、ロックバンドのアンサンブルもしっかり聴かせる。他にも、バックトラックと歌やコーラスの距離感など、いくつものバランスが交差し、1曲を形成している。この精度の高い取捨選択で放つグルーヴが、ヨルガヲの最大の武器であり、そのまま彼らの音楽性に繋がっている。
ボーカルもいい。まずメロディーに対する音域の選び方が独特。母音の処理も多彩で、その扱いによって曲とはまた別のリズムやグルーヴを巧みに生み出している。さらに、トラックの前に出たり、溶け込んでバックトラックのひとつのようになったりと、フレーズ単位、言葉単位で楽曲に対するボーカルの最適解を選び出す瞬発力も高い。
楽器も打ち込みも、歌も、在るべきところに配置され、鳴っている。サウンドデザインが非常にうまい。というか、もはや芸術と呼びたくなるクオリティーだ。シームレス・ミュージックであり、アート・ミュージック。それでいて、有機的で立体的。これが、ヨルガヲという音楽万博の正体だ。
文・伊藤亜希
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