2025年8月15日、『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA 1st Round-前半戰』が、六本木・SCHOOL LIVE & BAR TOKYO(以下、SCHOOL TOKYO)にて開催された。本公演は、SCHOOL TOKYOが主催するオーディションライブで、前半戦と後半戦を勝ち抜いた優勝者が、2025年12月に行われる中国ツアーに出演する権利を得られる。滝沢ジョー、yuzuna、$horyu、Stefan時崢峰(出演順)の4組によって繰り広げられた熱戦のステージをレポートする。

SCHOOL TOKYOは、2024年8月に六本木に新たにオープンしたライブハウスである。中国・北京で18年前にオープンし、地元で名の知られたSCHOOL BEIJINGというライブハウスがルーツだ。中国から日本に渡って来たスタッフも多く、日本国内の枠を越えた柔軟さが特徴で、国籍やジャンルを問わず多様なアーティストがSCHOOL TOKYOに出演している。とりわけ、スタッフ陣の日本と中国を音楽でつなぐ想いが強いようだ。本サイトの「特集・ライブハウスの中の人」にSCHOOL TOKYOスタッフのインタビュー(https://eggs.mu/community/article/9u0engiws1xc)が掲載されているので、こちらもぜひご一読いただきたい。
セルフプロデュースや楽曲提供も手掛ける実力派シンガーソングライター、滝沢ジョー

1番手に登場したのは京都生まれ愛知県豊橋市出身のシンガソングライター、滝沢ジョー。『J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023 supported by 奥村組』の出演をかけたオーディション企画「SONAR MUSIC Road to RYOGOKU」で優勝し、両国国技館の舞台に立った経歴を持つ。SCHOOL TOKYOのステージに登場した滝沢ジョーは、温かみあるアコースティックギターの音色と、心ににじむ歌声を場内に響かせ、聴く者を魅了していく。「ここ2年ぐらいはアレンジや編曲まで自分でやって、弾き語りの作品を出したり、他のアーティストへの楽曲提供とかアレンジも行い、音楽に食らいついて生きてこれました」と胸の内を語る。ラストは、上京した滝沢ジョーが、故郷から届く荷物に詰められた“愛情”を歌にした「ダンボール」をプレイ。ハートウォーミングかつ哀愁漂うサウンドとリリックで、心に光を灯す歌声をフロアに届けた。
KIROROの「未来へ」で確かなボーカルスキルを魅せたyuzuna(ゆずな)

日本とミャンマーのハーフであるyuzunaは、日本語とミャンマー語をはじめ、英語、ドイツ語も話せるマルチリンガルシンガーだ。2023年にテレビ東京系列で放送されたオーディション番組『The Voice Japan』Best16のファイナリストに選ばれた実績がある。「まず1曲目に私のデビュー曲で、ミャンマー語と日本語でカバーしたKIROROの「未来へ」を。この曲は中国でもすごく人気のある曲だと聞いています」と語るyuzuna。ミャンマー語で歌い出したかと思えば、Aメロの途中を日本語で歌う。2ヶ国語を交互に重ねながら滑らかに歌を紡いでいく。yuzunaが「今、妹と一緒にレコーディングをしている曲」と話したのは、R&Bテイストの失恋の歌。微笑みとやるせない表情を織り交ぜながら、感情豊かに歌うyuzunaの声が心地いい。「最後は2月にリリースした曲で、KIROROの金城綾乃さんに書いてもらいました。この広い地球の中であなたと出会った奇跡や感謝、そして愛を歌っています。とてもいい歌詞です」と。「この地球(ほし)の片隅で」を披露。心に沁み入る愛のメロディーと澄み渡るyuzunaの歌声がSCHOOL TOKYOに響き渡った。
他ジャンルを駆使するラッパー、$horyu(ショウリュウ)

東京を拠点に活動するラッパー、$horyu。取材前にリサーチをしてみても、詳細な情報がなかなか見つからず、謎に包まれていた彼は、1MC1DJのスタイルでステージに登場。頭に被った薄手のストールの片側を首に巻き、サングラスという出たちでミステリアスだ。気怠くアンニュイな雰囲気を醸し出しながらステージを動きまわり、エフェクトのかかったラップを刻む。アッパー、ダーク、チルなトラックや、三味線のような和のサウンドが印象的なトラックまで、多彩なテイストのトラックを披露。終盤には頭に被っていたストールを肩にかけ、長髪を露わにした$horyu。短い持ち時間の中、ストール1枚で様々なファッションを表現しているようだ。「東京で活動していて、ヒップホップ、テクノ、エレクトロニクハウス、いろんなジャンルやってます。新しいことが大好きなんで、これからもチェックよろしくお願いします。あざっした」とフロアに挨拶をした$horyuは、脱力感ある独特の熱量で勝負に挑んだステージだった。
ピンチをチャンスに変え、フロアと一体感を築いたStefan時崢峰(ステファン シー ジェンフォン )

中国・上海のシンガーソングライター、Stefan時崢峰。椅子に座り、おもむろにアコースティックギターを弾き始める。ハスキーがかったボーカルが心地よく響く。彼は、母国語である中国語でMCをする中、英語や日本語も織り交ぜながらフロアに語りかける。「ギターは15年くらい弾いている」と英語で述べた彼のギターテクニックは高い。リフやカッティングなどを盛り込んだファンキーなギターサウンドが、場内にグルーブを作り上げていく。クライマックスに差し掛かると、「次の曲は、みんな一緒に歌いいですか?」と日本語でオーディエンスを誘う。しかし、ここで機材トラブルが勃発。何とかギターを直そうとするStefan時崢峰。すると滝沢ジョーがStefan時崢峰に自分のアコースティックギターを差し出す。滝沢ジョーからギターを受け取ったStefan時崢峰は、「My new firend」と言葉少なに感謝の気持ちを伝える。無事にオーディエンスとともに歌い終えたStefan時崢峰は、「Thank You for guitar once agan. Thank you!」と滝沢ジョーに再び謝意を表す。禍(わざわい)を転じて福となし、ライバルが仲間に変わった瞬間を目撃したステージだった。
前半戦“優勝”と“友情”を得た2組が最終ステージへ
終演後、SCHOOL TOKYOのスタッフより、前半戦の優勝者が発表された。名を呼ばれたのは、滝沢ジョー、Stefan時崢峰の2組だ。ステージにあがった滝沢ジョーは、「ここで同い年のいい友達ができた。初めていろんな国の人と関わることができていい時間だったなと思います。こういう縁に感謝して、また音楽を続けていきたい」と前半戦優勝の喜びを語った。その後、滝沢ジョーとStefan時崢峰は肩を組みながら「同い年」と連呼し、笑顔で喜びを分かち合っていた。2人は後半戦の優勝者と12月に行われるファイナルステージで中国ツアーへの切符を競う。

なお、『KING OF SCHOOL 2025 ROAD TO CHINA』の審査員は、北京と東京のSCHOOL LIVE BAR創設者であり、中国で著名バンドのマネジメントを手掛ける劉非(リュウ・ヒ)氏。 北京と東京のSCHOOL LIVE BAR 創設者で自身もベーシストとして活躍する劉昊(リュウ・コウ)氏。くるりなどのマネジメントを手掛けてきたバッドニュース代表取締役の千葉和利氏。かつて下北沢ライブハウスGARAGEの店長を務め、現在、腕白舎(ワンパクシャ) 代表取締役である出口和宏氏の4人だ。果たして、彼らの選ぶ優勝者は誰にーー。後半戦とファイナルステージの熱戦の模様を、ぜひその目でご覧いただきたい。
執筆・取材:橋本恵理子
撮影:佐藤 薫








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