東京を拠点に活動するkommune(コミューン)は、ボーカルのmeyumoと、ビートメイカー/ギターを担うKonfigによって構成されるユニットだ。オルタナティブR&B、アンビエント、エレクトロニカなどを自在に横断しながら、ジャンルの引用だけに留まらない、優雅なサウンドスケープを繰り広げる。ビートの構築性と空間の奥行きを重視したサウンドメイクは、国内にとどまらず海外からも注目を集めている。
バックトラックと歌声が主従関係を持たない稀有なサウンドが作り出す “漂流”という状態
「漂流(2025 Remastered)」は、このユニットの中でも、ブラックミュージック色の強いメロウなミディアムチューンだ。Konfigによるトラックは、オルタナティブR&Bの質感を土台に、アンビエント文脈のエレクトロニカを接続した趣で、ブレイクビーツを意図的に分解したように聴かせるなど、サウンドレイヤーの処理によって空間と余白を立ち上げている。低音域は深く、重心も重いが、ビートで押し切るパターンではないところに、トラックメイカーとしての確かな才能が感じられる。リズムはタイトに刻まれているものの、その輪郭は空間に溶けるように調整されており、楽曲全体がひとつの方向に進んでいるのか、それとも留まり続けているのかさえ、とっさには判断できない不思議な揺らぎを宿している。
そして、meyumoのボーカルが、この曲に奥行きを与えている。ハスキーとシルキーを両立させた声質はR&Bの文脈を強く感じさせるが、いわゆるソウルフルとは異なるエモーショナルさを湛えている。歌が音像の一部を形成したり、前に出てきたりと、自ら作り出した奥行きを自在に行き来するスキルと感覚が秀逸だ。声の出し方も多彩で、わずかな揺れやブレスを含ませることで、楽曲全体に浮遊感をもたらしている。
エレクトロニカ/アンビエントという、ある意味で匿名性の高いバックトラックと、ブラックミュージックのフィジカルさと感情で勝負する歌声。この二つが主従関係を持たずに並立している点こそが、kommuneの大きな武器だ。無機質で感情を規定しない空間の中に、人間の体温だけがかすかに浮かび上がる「漂流(2025 Remastered)」は、聴き手自身が音の中を漂流し、その揺れと向き合うための1曲だ。
文・伊藤亜希
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