
名古屋CLUB ROCK'N'ROLL(以下、クラブロックンロール)と言えば、名古屋市・新栄町にオープンして今年で33年目となる老舗であり、今なお地元シーンの中心として多大な存在感を放っているライブハウスだ。歴史ある店舗を支え、店長として多くのバンドやアーティスト、音楽ファンたちに慕われ続けている本多増雄氏にクラブロックンロールの魅力をじっくりと聞いた。
スタッフと二人三脚で築き上げたバンドとの絆
ーークラブロックンロールは1992年にオープンされて、今年12月に33周年を迎えられるそうですね。本多さんがクラブロックンロールの店長になられたのはいつ頃でしたか。
本多:僕が入ったのが1999年か2000年あたりなんですよ。でも、その前にもクラブロックンロールでバイトをしていた時期があったんです。オープンして数年たった頃に1年間ほどでしたけど。バイトを辞めてからはずっと別のところでPAの仕事をしていたんですが、オーナーから、もう1回こっちで働かないかと声がかかりまして。ちょうど前の店長から入れ替わるタイミングだったみたいで、後任を探していたらしいんです。
ーー最初から店長として入られたのでしょうか。
本多:うちのPA担当に井藤という者がいるんですけど、井藤が入った1ヵ月後に僕が入ったんです。ただ、入ったものの前任からの引き継ぎも何もなく(笑)。
僕も井藤もどっちもPAができたので、お互いに店長的な仕事もしつつPAもやって……という感じで2人で仕事を共有しながら3〜5年くらい続けていくうちに、それぞれの長所がなんとなくわかってきたので、井藤をPA専属にして僕がそれ以外のことをやるっていう形に落ち着きました。それまでは特に肩書きとかもなく、2人でやれることをなんとかやっていくという感じで。
ーー聞くからに大変そうです。
本多:大変でしたね。当時はまだインターネットもまだあまり普及していなくて、ブッキングも電話でするような時代だったんですよ。一応、バンドリストみたいなものは存在していましたけど、バンド名と代表者と連絡先となんとなくのジャンルくらいしか書かれていないようなリストで、電話してみたら違うバンドになっていたりとか、最初の頃は精査するのも一苦労でした。店長が変わったタイミングで離れるバンドもいましたし、残ってくれたバンドとも「初めまして」からスタートして、ゼロからまた関係を作っていくという感じでしたね。それ以外のところでも2人でいろいろ考えながら開拓していきました。前の店長の時代は店自体にわりと怖いイメージがあったので、それとは真逆の方向性を意識しつつ、もっと間口を広げて誰でも来られるような店にしたいな、と。

名古屋の老舗ライブハウスが目指す間口の広い店
ーー少し遡って伺いますが、そもそもクラブロックンロールでバイトをしようと思ったのはどんな理由があったのでしょうか。本多さんご自身も音楽をやっていらしたとか?
本多:やってましたね。でも早々に裏方業務がやりたいと思うようになって、裏方がメインの専門学校に行ったんです。で、経験を積む一環としてライブハウスで働いてみたいなと思って、ちょうど募集がかかっていたクラブロックンロールに飛び込みで入ったような記憶があります。当時はまだあまり名古屋にライブハウスがなくて、バイトの募集もそんなになかったんですけど。
ーー今やクラブロックンロールといえば名古屋でも指折りの老舗ライブハウスとして広く知られた存在ですよね。シーンの中で担う役割などは考えていらっしゃいますか。
本多:老舗になっちゃうんですよねぇ(笑)。でも老舗意識みたいなものは本当にないんですよ。今でこそ名古屋にたくさんライブハウスができて、おかげで老舗になっちゃっていますけど、現場レベルではそんな感覚はいらないというか、むしろ老舗になりたくない気持ちのほうが強いんです。僕が最初にここに来た頃は学生の貸し切り公演とかもいっぱいやっていましたし、今も当時みたいな感じで使ってほしくて。ただ、どうしても年数を重ねるごとに老舗感というか、敷居が高くなる感覚が演者側にはあるらしく……昔はクラブロックンロールが初ライブというバンドもすごく多かったんですけど、今はある程度、歴を重ねてから出る場所みたいな。出てくれたバンドからもよく「クラブロックンロールでやりたかったんです!」って言ってもらいますけど、僕らからしたら至って普通のライブハウスだし、そんなに構えなくてもいいのになって。老舗だからと構えず、もっといろんなバンドに気軽に出てほしい。初ライブも大歓迎です。もちろん憧れのライブハウスと思ってもらえるのはとても嬉しいんですけどね。
クラブロックンロールが、出演したバンドのプラスになる場でありたい
ーーブッキングの際に重視していることやこだわりはありますか。
本多:そのへんは公演によりけりなんですよ。ジャンルを揃えることもあれば、あえてバラけさせたり、時にはこちらの好みだけでブッキングする時もあったりしますし。そこはブッカーの腕の見せどころでしょうね。「こんな対バン、絶対に組まないでしょう」って誰もが思うようなブッキングを組んだりするのも醍醐味だと思いますし、それをきっかけにバンド同士が繋がったり、お互いにいい関係が築けて、さらに広がっていったら素敵じゃないですか。うちに出てもらったからにはなるべくプラスの何かを持って帰ってもらいたいですから。
ーーこの仕事をされていて1番嬉しいのはどんな瞬間でしょう。
本多:突出して「これ」というものはないですが、やっぱり地元のバンドで頑張っている子たちがワンマンライブを開催してソールドアウトするとか、そういうことがあるたびに感慨深い気持ちにはなりますよね。それから公演が終わったあと、帰っていくお客さんが笑顔で「楽しかった」って言ってくれている声を聞いたりとか、演者も「今日、最高だったね!」って言ってたり、ワンマンならメンバー同士、対バンだったら出演した対バン同士で話している様子を見ると幸せだなって思います。僕は受付業務もしているので、そういう声って結構聞こえるんですよ。そうすると余計に感慨深い気持ちになったりして。
ーーちなみに店長という仕事は本多さんにとって魅力的ですか。
本多:どうでしょう…考えたこともなかったです(笑)。普段、あんまり店長意識を持って仕事をしていないので。めちゃめちゃ雑用もしますし、1スタッフと感覚的には変わらない気がしますね。なるべくクラブロックンロールのためになるようにって仕事をしてるだけの感覚というか。うちを好きだと言ってくれる演者さんやお客さんがいるので、そういう人たちにまた来てもらうために続けてるみたいな感覚ですかね。来てくれる人たちにとって魅力的に感じられるような環境を作れたらと思っています。

(Photo by 青木カズロー)
切磋琢磨して成長するバンドを応援し続ける
ーー今、地元で注目しているインディーズバンドを教えてください。
本多:あえて一つ挙げるとしたら、鉛の風船ですね。若手と言っても30歳は越えているんですけど、彼らはかなりいいと思います。いわゆるエモ系の、爆音な感じのバンドで、日本語の歌詞もいいんです。
ーー最近クラブロックンロールに出演したバンドでライブが印象に残ってるバンドがいましたら、そちらもぜひお願いします。
本多:最近出てくれた山田亮一とアフターソウルはよかったですね。山田君とうちは縁がありまして、前身のバンドの頃から出てくれているんですよ。最近また復活して、新しくバンドも始めたと聞いていたので、どこでライブやるのかなと思っていたら、1発目でうちに出てくれることになったんです。その時はだいぶ感慨深かったですね。ライブ自体めちゃめちゃよかったですし、若かった彼が歳を重ねて今の彼になっているのがしっかりと感じられてシビれました。いいミュージシャンになったなってひしひしと感じるライブをしていましたね。
ーークラブロックンロールの今後の展望として考えていらっしゃることはありますか。
本多:基本的なところは変わらず、うちのファンの人たちを大切にしながら、その上でいろんな人が気楽に遊びに来てくれるような空間にしたいなとは思いますね。今、ライブハウスはたくさんありますけど、その中でもうちはいい意味で特殊な箱だと思うんですよ。例えば黒で統一されているとかコンクリート打ちっぱなしみたいな、ライブハウスらしい箱ではない面白さがあると思うので、こういう場所があるんだよっていうことを10代20代の演者さんやお客さんにもっともっと知ってもらいたいですね。そのために何かできないかなと今、考えているところです。
ーー最後に、インディーズシーンで頑張っている“Eggs(卵)”たちにアドバイスやメッセージをいただければ。
本多:今の子たちは普通に演奏も上手いですし、技術的なレベルもかなり高いじゃないですか。なので周囲の目や他人の意見はそんなに気にせず、特に最初のうちはバンドや自分の内面的なところをしっかり作り込んだほうがいいよって、相談された時とか僕はよく言ってます。周りを気にするよりバンド内で切磋琢磨したほうがいいものができるスピードも速いし、バンドとしていい形になることが多いと思うんですよ。他人の意見も大切だけど、それ以上にバンド内でしっかりコミュニケーションを取っていろいろ話したり、自分たちのやりたいことを突き詰める作業に時間を使ってほしくて。それでいい曲ができて、名古屋でライブをする時は、ぜひうちを使ってもらえたら嬉しいですね。精一杯、対応させてもらいますので。
livehouse info
名古屋CLUB ROCK'N'ROLL
- 愛知県名古屋市中区新栄1-8-12 第5七福ビル1F
- アクセス
- 地下鉄東山線 新栄駅 (名古屋駅〜藤が丘方面3番目) 1番出口 徒歩5分
- キャパシティ
- スタンディング150名
- TEL
- 052-262-5150
- 問い合わせ
- http://clubrocknroll.net/contact/
- 公式HP
- http://clubrocknroll.net/
event info
クラブロックンロール的、春の収穫祭 2025
- DATE
- 2025年4月19日(土)
- OPEN/START
- 17:30 / 18:00
- ADV./DOOR
- ¥3,000 / ¥3,500(D代別途600円必要)
- LINE UP
- THE BOY MEETS GIRLS, シンガロンパレード, umitachi
THE HOLDENS “RAIMUGI” Release Tour -Nagoya-
- DATE
- 2025年4月26日(土)
- OPEN/START
- 18:00 / 18:30
- ADV./DOOR
- ¥3,000 / ¥3,500(D代別途600円必要)
- LINE UP
- THE HOLDENS, ザ・ダービーズ, Legeens
39 GW SPECIAL EDITION
- DATE
- 2025年5月4日(日)
- OPEN/START
- 17:30 / 18:00
- ADV./DOOR
- ¥3,300 / ¥3,900(D代別途600円必要)
- LINE UP
- Large House Satisfaction, ANABANTFULLS, それでも尚。未来に媚びる