今、全国各地に出現しているガールズ・バンドが一堂に会するイベント『#楽園収穫祭』。2024年夏に東京・下北沢で初開催され、2025年3月には東京と名古屋で『雛祭り2Days』が開催されてきたなか、このたび仙台のリリカルの結成2周年記念とコラボレーションし、東北で初開催された。その名も『#楽園収穫祭 杜ノ歌ゲ〜リリカル2周年パーティー presented by Eggs 10th Anniversary』。10月19日、会場となった仙台FLYING SONのステージやフロアは杜の楽園パーティーのごとく蔦やライトで細かく装飾され、開演前から期待値が高まっていた。
飲み友の絆!?息の合った演奏と<乾杯>コールで盛り上げた仙台発・ティプシーズ
トップバッターは、地元・仙台から登場の3ピース・バンド、ティプシーズ。そう、この日のガールズ・バンドは、すべて3ピース。そういった統一感があるからこそ、各々の個性が見えて面白い。ティプシーズの長谷川(Vo/Gt)も「この縛りはあんまりない」と語っていたように、バンドにとっても新鮮だったようだ。そんなティプシーズは「ビールズ・バンド」と呼ばれるほどのビール好き。乾杯ソング“ジャイブ!”では、曲中の<乾杯>コールを練習し、実際に缶ビールを「おいし~い」と飲んじゃう姿も。そのノリのよさで、しょっぱなからフロアの一体感を生み出した。飲み友でもあるからか!? 3人の息の合った演奏も印象的で、見つめ合ったり、ブレイクをキメたり。横ノリがかわいらしい“黄昏ロマンス”など、誰よりも彼女たち自身が楽しそうで、そのテンションはオーディエンスにも伝播していった。

ティプシーズ
setlist
- 01. 何となく
- 02. こぼれ落ちても
- 03. 黄昏ロマンス
- 04. もしものせかい
- 05. ジャイブ!
- 06. 東京メトロ
ほんわかとオーディエンスを巻き込むとにもかくにも、盛岡から参戦
バスドラムの上にクマのぬいぐるみを置いてスタートしたのは、岩手・盛岡から来た、とにもかくにも。“ともだちの唄”では、さくら(Vo/Gt)がニコニコしながらステップを踏んで歌う。「ほんわか3ピース・バンド」と言われるだけあって、心が温まる素直さが、楽曲にも演奏にも表れていた。しかし、“永遠の恋人”でハンドクラップを煽るなど、どん欲な姿勢も。そして「仙台の人は、牛タンが好きって言ってますけど、ほんとはラーメン好きじゃないですか?」と、ラストの「ラーメンの唄」へ。彼女たちの登場SEがTheピーズ「バカになったのに」だったこともあって、彼らの「肉のうた」を思い出した(曲調は違うけれど)。オーディエンスを巻き込むロックンロールには、カロリー高めの食べ物が似合うのだ。

setlist
- 01. 少年少女
- 02. ともだちの唄
- 03. 永遠の恋人
- 04. 恋どき
- 05. 恋人ができたら
- 06. ラーメンの唄
大阪から来襲!楽器を持つと強くなる、ラウドで硬派な台所きっちん
温かな空気に満たされたフロアにピリッと刺激をもたらしたのは、大阪からやってきた台所きっちん。かわいらしさやユーモアが滲むバンド名とは裏腹に、ヴィジュアルも硬派で、歪みは激しく音量もデカい。ライダース姿の花菜(Vo/Gt)がロングヘアを振り乱しながら、大阪っぽいブルージーな憂いや色気を漂わせて歌う姿は、東北に初上陸したバンドとは思えない貫禄があった。しかし、仙台に降り立ったときに「めっちゃ寒くってびっくりした」とはにかむMCは初々しく、そのギャップも魅力。終わった恋を歌う豪快なラストナンバー“バカ”を聴きながら、近い将来にもっと大きな会場のフロアを埋め尽くした女の子たちが、清々しい表情で<バカ>コールをしている姿をイメージせずにはいられなかった。

setlist
- 01. 纏い
- 02. 春
- 03. 追憶
- 04. ボブ
- 05. バカ
普段着のままでサラッと深い!東京から来たみじんこらっくの底知れなさ
続いては、東京からやって来たみじんこらっく。Tシャツ姿で日常と地続きの雰囲気ながら、歌詞とリンクしたアレンジをさらっとこなすなど、惹きつける演奏を見せていく。昼間に東京・下北沢のサーキットイベント『旬は巡る。2025』でライブを行ったあと、新幹線に飛び乗ってきた彼女たち。これが初遠征というなかで、“居場所はここじゃない”の演奏前に「仙台を居場所にして帰りたい」と豆粒(Vo/Gt)が宣言していたように、どこでも居場所にしていけそうなパワフルさが感じられた。“つまんない”など心のうちを露わにするような歌詞や、もんじゃ焼きと「比べるもんじゃない」という想いのダブルミーニング“もんじゃ”など、ワードセンスも秀逸。バンドのテーマソングに聴こえてくる“ラックミュージック”でオーディエンスだけではなく、トリのリリカルの背中をも押し、がっちりバトンを渡した。

setlist
- 01. あなたの寝顔を食べにゆく
- 02. 居場所はここじゃない
- 03. チケット
- 04. つまんない
- 05. もっと
- 06. まって
- 07. もんじゃ
- 08. ラックミュージック
愛されバンドの本領発揮!リリカルが務めた見事なヘッドライナー
ラストは、もちろんリリカル。珈香(Vo/Gt)、しちみ(Ba/Cho)あやね(Dr/Cho)が手を合わせ、そのまま“パーティー”の演奏に突入。そして「リリカル2周年パーティーはじめます!」と、改めて珈香が口を開き“ひみつ”へ。あやねがスティックを掲げて叩くと、オーディエンスもハンドクラップ。MCでは、メンバーは口々に「うれしくって言葉にならない」と笑顔を見せる。そして「3人とも末っ子で猫を飼っている」という、愛されバンド・リリカルの秘訣が見える共通点を明かしてからの“末っ子”“猫の話”で、さらに盛り上げた。ラストは、「今の気持ち、そのままの曲」と珈香が伝えた“ぼくらのうた”。フロアじゅうにコブシがあがるなか、「またライブハウスでお会いしましょう!」とステージを降りるも、アンコールの拍手が巻き起こる。すぐに戻ったメンバーは「楽しすぎる」「帰りたくない」と言いつつ、「全員に届けたい応援ソング」と“ファンファーレ!”でバッチリ締め括った。

setlist
- 01. パーティー
- 02. ひみつ
- 03. 末っ子
- 04. 猫の話
- 05. 狂愛
- 06. 音の鳴るほうへ
- 07. ぼくらのうた
- En. ファンファーレ!
地元・仙台や東北のバンドを盛り上げるだけではなく、東京や大阪の若いバンドの初遠征にも一役買う機会となった今回のイベント。今の3ピース・ガールズ・バンドの可能性は、想像以上に色鮮やかで、幅広い。それぞれの今後の飛躍にも注目してほしいと思う。
文:高橋美穂
撮影:あかさかなつき













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