Tokyo“SAUNA”Popsを掲げる奪還計画(だっかんけいかく)の実験的だが美しいサウンドメイク

Tokyo“SAUNA”Popsを掲げる奪還計画(だっかんけいかく)の実験的だが美しいサウンドメイク

2025/12/24

奪還計画は、渡辺帆乃夏(Vo./Tp.)、藤倉遼(Key.)、吉江秀明(Dr.)によるスリーピースバンドである。ポップだが翳りが宿るメロディーラインと、実験的だが美しく構築されたサウンドメイクが特徴だ。ニューウェーブやオルタナティブロックからの影響も伺え、尖ったアプローチも目立つが、同時にアンビエントミュージック、つまり“環境の一部として機能する音楽”を感じるサウンドスケープを見せるのが非常に面白い。 

2024年11月29日に初音源となる3曲入りシングル「奪還計画」を、2025年6月にシングル「嘘八分」、同年7月にシングル「Limited」をデジタルリリースしている。今年の7月に「奪還計画」収録の3曲、12月に「嘘八分」をEggs内で配信を開始した。 

人間の本能にある、必然的な恐怖を羽根で撫でるように刺激する 

嘘八分」で、まず耳を引くのは、跳ねる感じでありながら、沈み込みもある独特のリズムパターンだ。ドラムはハイハットを細かく刻みつつ、キックをジャストから少しずらすことで、緊張と揺らぎが同居するグルーヴを生み出している。鍵盤は中域帯にやわらかい面を作り、ボーカルのメロディーラインを受け止める役割を果たしている。空白を意図的に作り出したバンドアンサンブルによって、言葉とメロディーが鮮明に立ち上がる。語るように段階的に旋律をずらしていくようなメロディーは、中毒性も高く、聴く者を淡々と飲み込んでいく。人間の本能の中に必然的に存在する恐怖を羽根で撫でるように刺激する。この聴く者の“心理的なざらつき”が、この曲の最大の魅力だろう。 

音符に対して、歌い始めにわずかにタメを作るようなボーカルアプローチで、言葉の輪郭が強調され、感情のニュアンスが滲むように曲を彩っていく様もお見事。母音の処理もバリエーションがあり、ボーカルで楽曲にストーリー性を加えている。 

歌詞は本音と建前、謙虚と卑屈、愛と偽りといった二項対立の「狭間」と、そこから生じるやるせなさを、鋭い言語感覚で描いている。<謙虚と卑屈は紙一重で一心同体>や<IとIで偽った愛>というフレーズは、日常に潜む疲弊と沈殿する倦怠を容赦なく照らし出している。また、リフレインとして繰り返される<感動は最後 味わって/エンディング飛ばすなんて御法度>は、他者から急かされず、自分の物語を自分のペースで引き受けるための小さな宣言のように響いてくる。 

聴き進めるほどに、言葉、声、アンサンブルが深度を増していく。カオスをサイケデリックやシューゲイザーなどとは違った手法で奏でる、ハイブリッドなポップスに仕上がっている。 

文・伊藤亜希 


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この記事を書いた人

伊藤亜希

音楽ライター/編集者。学生時代から音楽雑誌に勤務後、アーティストのFCサイトの立ち上げ・運営などを経験。現在はフリーランス。『RealSound』『MUSICA』、FC会報、FCサイト等で執筆中。『Eggs』は未知の音楽に触れられ楽しいです!

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