2025年7月11日『Eggsレコメンライブ+~Acoustic Edition~』に密着&レポート!

2025年7月11日『Eggsレコメンライブ+~Acoustic Edition~』に密着&レポート!

2025/08/25

2025年で10周年を迎えた『Eggs』。10周年を記念するプロジェクトとしてスタートしたのが『Eggs 10th Anniversary~Eggsレコメンライブ+』(エッグスレコメンライブプラス)である。このプロジェクトは、アーティストを発掘し早耳音楽リスナーにレコメンドするライブイベント『Eggsレコメンライブ』から派生した、現在、インディーズシーンを駆け上がっているアーティストを集めたネクストステージを体現できるイベントだ。

 7月11日、金曜日。『Eggsレコメンライブ+~Acoustic Edition~』が下北沢THREEにて開催された。

 この日の出演は、出演順に村田美月シベリアンハスキー)、フクダチナツウマシカて望月志保宇宙団)、有明レイラ)の4組。今、インディーズライブシーンで注目のバンドのボーカリストたちが、弾き語りでバンドの時とはガラリと変わった趣きのステージを展開した。

倍音を共鳴させた歌声に観客も聴き入った、村田美月

 最初に登場したのは村田美月。ギターの軽快なリズムが特徴の「愛する君となら」でスタートしたステージ。少しハスキーな歌声を聴かせた後、サビでは綺麗にファルセットを響かせる。続く「アパートの一室で」では、中高音で絶妙なビブラートを見せ楽曲に異なる表情を添えていく。特に「エ行」のロングトーンでは倍音が出ているかのように歌声を空間に共鳴させた。
MCでは、Eggsの10周年に触れ「10年って長い月日。ここまでいろんな人がEggsを続けてくれたのはすごい」と感謝の気持ちを述べる。この後MCは、数か月前に訪れたという長崎の話に展開。夜にとある山に登り、空との距離が近くなった、だから星が東京よりも近くに見えて綺麗だった、その星空を見て言葉にできない気持ちになったと「星空を抱きしめて」を披露した。儚さと切実さが共存するミディアムチューンに観客は聴き入っていた。
続いて、力強いギターのストロークが印象的なアップチューンの新曲を披露。バンドアンサンブルで聴いてみたいと思わせるエモーショナルなような1曲だった。続いて「落書きのような」へ。コケティッシュなメロディーの中で、少しこぶしを回すようなアプローチでスキルを見せる。
最後に客席に向け、5秒弱、深々とお辞儀をしてライブを終えた。

setlist

  1. 01.愛する君となら
  2. 02.アパートの一室で
  3. 03.星空を抱きしめて
  4. 04.新曲
  5. 05.落書きのような

フクダチナツが歌声とギターで作りだした太いグルーヴ

 2番手はフクダチナツ。アップチューン「スカート」で幕を上げたステージ。真っすぐ前を見つめ歌いながら、曲途中ではヘッドボイスとチェストボイス(地声)の中間のような見事なハイトーンを鳴らす。ボーカルアプローチもスタッカートの使い方が巧みで、言葉がはっきり聴こえてくる。特に濁音を滑らかに発音する様子には、ボーカリストとしての天賦の才を感じた。
「Eggsの皆さん、呼んでいただきありがとうございます。ずっとお世話になってます」という言葉から始まったMCでは、バンドの初音源を発表したのが「Eggs」であったこと、音源をアップしたらライブに呼んでもらえるようになったと言い「本当にありがとうございます」と丁寧にお礼を述べた。
憂いあるアルペジオから始まる「都市伝説」では、言葉をかみしめるように目をつぶって歌うシーンもあった。優雅なアルペジオの中に低音を挟み込み、ギタースキルを見せたミディアムアップチューン「世界が終わる」を披露した後、MCで「好きな人がいます。今年に入ってからその人にしか曲を書いてない。この前(一緒に)喫茶店に行きました。その曲をやります」と「来世は猫」へ。恋心をキュートに綴ったAメロから一転、サビでは周波数の広い高音を大迫力で響かせる。ハイトーンの中に、持ち味のハスキーさが混ざった彼女の歌声が、観客の目の前まで迫ってきた。ギターの緩急あるストロークやカッティングとアルペジオ、加えて歌声の低音と高音のコントラストで見事なグルーヴを作り上げたステージだった。

setlist

  1. 01.スカート
  2. 02.都市伝説
  3. 03.世界が終わる
  4. 04.来世は猫
  5. 05.白状する
  6. 06.犬みたい
  7. 07.音楽
  8. 08.高円寺

望月志保、アクシデントを凌駕したパフォーマンスに大きな拍手が起こった

 次にステージに姿を現わしたのは望月志保。冒頭で2週間前から気管支炎であったことを告げ、この日も出るべきか迷ったと本音を吐露。しかし次につながる言葉はこうだった。「Eggsの10周年ということで絶対に出たいと思って来ました。声が出なくなっても頑張ります」と意気込みを放る。この言葉に観客はあたたかい拍手でレスポンスした。
笑顔で歌い始めたのは「花を買う」。この日の彼女の衣装はワンピース。最初のブロックに出てくる<ワンピース>という歌詞が、そのまま彼女の姿に重なっていく。
MC。バンドではできない曲を(ソロの)弾き語りでやろうと思っている、だから普段はバンドの曲をやらないんですと前置きをした後、今日のイベントの出演者はみんなバンドの代表としてきていると思うと述べ「今日は宇宙団の代表ということで宇宙団の曲を」と「いつかは」と「夏に寄せて」を歌った。
序盤は“いつもならここでもっと綺麗にトーンを出すんだろうな”と思っていた歌声が、曲を重ねる度にどんどん滑らかになっていく。特に彼女の歌声の特徴である鈴を転がすような中高音の鳴りが明らかに序盤とは違ってきていた。本人も変化を感じているのだろう。「歌っていると体の調子が良くなってきてるかも。本当に皆さんからパワーをもらっている」と満面の笑顔を見せた。
続く「ルルル」は、コード進行に一癖あるストーリー性豊かなアップチューン。途中でギターから手を離し<パ・パン>と声をかけながら手拍子。彼女のクラップに合わせて、観客も同じリズムで拍手しレスポンスした。全曲歌い終わった後、彼女に向けられた大きな拍手と喝采が、彼女のパフォーマンスがいかに心に響くものだったかを証明していた。

setlist

  1. 01.花を買う
  2. 02.見せてない
  3. 03.いつかは
  4. 04.夏に寄せて
  5. 05.ルルル
  6. 06.おばかちゃん

観客の拍手の中迫力のトーンを聴かせフィニッシュした有明

 ラストは有明。前述した3人とは異なり、椅子に腰かけギターを持ちスタンバイする。「Emma」からスタートしたステージ。一聴してフォーキーさもあるエバ―グリーンなメロディーだが、フレーズの最初のロングトーンを持ってくるなど、よく聴けば凝った譜割りの1曲だ。また言葉ごとに歌の入り方のニュアンスを変えており、表情豊かな歌のアプローチを見せる。
ギターのアルペジオの低音をアレンジのフックのようにして曲に起伏をつけたバラード「アパートの中で」では、発音の良さで言葉をしっかり届ける。MCへ。「Eggs10周年おめでとうございます」と始まったMCでは「Eggs」でしか配信してない曲もあると触れた後「すごくお世話になってます。ありがとうございます」と感謝の気持ちを。その後、某イベントの「Eggsオーディション」で決勝手前まで行ったけど落選した、どうしても出たいイベントだったから、正直そこから数年間ちょっと恨んでいたなど、歴史あるアーティストだからこそのエピソードをカミングアウト。これには会場もスタッフも大爆笑だった。
そこから話は「人には役割がある」と展開。今日の自分を「役割で言うとトリ。自分でできるトリっぽいことを精一杯やろうと思います」と新曲へ。アコースティックギター1本とは思えないほどの厚いサウンドのスケール感と、会場の壁さえ射貫きそうな声量で圧倒する。
1990年代後半~2000年代初頭の日本のオルタナティブロックを彷彿させるメロディーが印象的な「ヒットソング」では、曲の途中でギターの1本の弦を解放し、轟音の世界観をアコースティックギターで再現してみせた。アップチューン「夏風邪」では観客からも拍手が起こる。最後の「透明少女」では、歌いながら観客1人1人と視線を合わせていく。サビを力を振り絞るように歌い、フィニッシュした。

setlist

  1. 01.Emma
  2. 02.アパートの中で
  3. 03.新曲
  4. 04.ヒットソング
  5. 05.夏風邪
  6. 06.透明少女

この日、楽屋やバックヤードでは、アーティスト同士が談笑するシーンも多くみられた。その話は、音楽のこと、以前対バンした際のライブのこと、次のライブ(この日の出演者同士での対バンも既に予定されていた)などから、プライベートで遊びに行く約束、生まれ変わったら何になりたい……まで、じつに多岐に渡るものだった。

アーティスト同士の情報交換、そしてたわいない話ができる場所としても機能している。それがEggsが継続してきたイベントという場所である。

『Eggsレコメンライブ+』は、無料配信プラットフォームも含め、Eggsが“アーティストのプラスになる、何かを得る”イベントになっていると思った。

執筆・取材:伊藤 亜希 (X:@itoaki_hashiru)
撮影:山田 耕平(X:@_koo_photo_)

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