get up
- 1. STAY KID
- 2. CHAOS
- 3. DRAGON HORN SHOTGUN
- 4. Kick
- 5. KVE
- 6. Anthem for my friends
COCP-40355/¥2,000(税別)
Text:坂井彩花
Photo:塚本弦太
メジャーデビューで取り戻した初期衝動。今だからいえる若手バンドに対する思いとは。
5月30日にミニアルバム『get up』で、メジャーデビューを果たす彼女 IN THE DISPLAY。
かっこ良さにとことんこだわったライブアクトは、女性のみならず男性も惚れさせる。トーク力もあり個性豊かな5人はなぜ今のライブスタンスにたどり着いたのか、インディーズ時代にどのように時を重ねメジャーデビューにたどり着いたのか。海 THE KID(Dr.)とRYOSUKE(Vo.)に話を聞いた。
――“彼女 IN THE DISPLAY”って面白いバンド名ですよね。アニメやゲームが好きでついたバンド名だそうですが、最近なにか面白い作品ありましたか。
海:最近忙しくて...全然アニメ見れてないし、ゲームもしてないですね…。とにかく今はバンドが楽しくて曲を作ってます。
RYOSUKE:昔つけたバンド名にいま縛られてるよね(笑)
海:でも中身は昔と変わってないんですよ。友達がそのままバンドをやっているような感じなので。遊び仲間みたいな。
――ベースの松永さん以外、みなさん学校の先輩・後輩だそうですね。
RYOSUKE:ちょっと変わった高校だったんですけど、普通の高校と変わらない時間帯で大学みたいにカリキュラムをとっていくっていう。海さんたちは、僕からしたらOBの世代で、僕が入ったときにはもう卒業してたんですけど。
海:キーボードの逸見が「歌が上手いやつがいる」っていって、俺がRYOSUKEに会いにいったよね。
RYOSUKE:その日のうちにカラオケに行って、バンドに誘ってくれたので「じゃあ入ります」って。ベースの健太くんは、憧れていたバンドでベースをしていたので口説きました。
海:コインランドリーの待ち時間でモンハンをしながら「バンド入ってくださいよ」って。「ちょっと今もう1個誘われてて…」って言うから「こいつシャキッとしろよ」と思ってた(笑)。
――お話しを聞いていると、海さんが「バンドをやるぞ」って集めたメンバーみたいですね。
海:このバンドのきっかけはそうですね。まじで腐りまくってて…。高校卒業して路頭に迷ってたから、音楽をしようかなって。高校のころギターの弘輝とキーボードの逸見とはバンドをやっていたんで連絡したら「スタジオ行くか」ってなったので、そこからメンバーを集めていったという。
――その後メンバーチェンジなしで、8周年。8月からは9年目ですもんね。仲たがいのようなことってなかったんですか。
RYOSUKE:小競り合いは死ぬほどあったと思うんですけど、大喧嘩はあんまりないですね。分別するとかもないし。
海:みんないいやつなんすよ。
――移動の車が苦じゃないっていうのは、本当に仲がいいんでしょうね。
海:正直、車のなかは話さないで寝てるだけですよ(笑)。ただ宿は基本一緒なので朝までパーティーしてますね、5人だけで。ずーっと酒のんでます。
RYOSUKE:この間もそうとうワイン空いたっすね。
海:空いた。最終10本くらい空いたよね。
――お酒強いんですね。
RYOSUKE:「九州の人強いね」っていうイメージほどは、強くないと思います。
海:ただ長い! 後輩が一番いやなタイプ。「海さんたちに誘われたらなげぇからなー」って(笑)。
RYOSUKE:酔っ払うのも早いですけど、長いですね確かに。
――8年って長い時間だと思うんですけど、明らかにファンがついたと感じた瞬間ってありましたか。
海:ついた瞬間もあったし、離れた瞬間もハッキリとあったっす。いまだに覚えてますね。地元でワンマンをやると常に200いかないくらい人が入ってたんですけど、あるとき急に50くらいになったんですよ。しかもライブ当日にわかって。そのときはなんでって思ったんですけど、いま考えると俺たちにとってやりたくないことの比重が大きくなっていたせいだろうなってすごい思いますね。
RYOSUKE:僕ら自身がわかってなかったよさを、お客さんはわかっていたんだよね。だからいま集客の勢いがあるなら、それを大事にしていい部分を伸ばすべきだなって。ウィークポイントを直すことも大事だけど、それよりも自分の武器を磨いていったほうがいいんじゃないかなって思うんですよ。
――自分たちのよさを見誤っているバンドって少なくないと思うんですけど、彼女 IN THE DISPLAYにそれを気づかせたきっかけってあったんですか。
海:『get up』で気づかせてもらった。できあがったアルバムを聴いて、こんなに素晴らしい6曲があるならいまのライブのスタンスでは絶対にダメだと。前はバンド“彼女 IN THE DISPLAY”が前に出すぎていた気がする。いまは曲の良さを引き出すために何をするかしか考えてないです。そのとめにSEから最後の1曲まで全部トラックで繋いで、無駄なMCを省いて人間味を出さないようにして。意識してライブをするようになると、他のバンドを見ていろいろ感じるようになるんですよね。
――それは何を感じるんですか。
海:ロックバンドって、2曲連続でやってMCが入って3曲目ってよくやるじゃないですか。1曲目かっこいい、2曲目OKって思えるパフォーマンスなのに、MCをした瞬間にそいつがやってる感しかなくなっちゃうんですよ。MCを挟む前はアーティストの音楽を聴いている感じがするんだけど、それ以降は生身の人間がやってる感じしかしなくなると、なんか面白くないんすよね。あといいMCっぽいのをやられると「お前に言われても」って思っちゃう。それか話すくらいなら曲をやってくれって思うようになりました。
――MCで情に訴えかけるのではなく、音楽性を追求していくと。
海:そうです。俺らには、できることがそれしかなくて。
RYOSUKE:本当に向き不向きなので、僕らのようなスタンスもいればMCに感情を絡めて伝えるのが上手い人もいる。ただ僕ら自身は頭からケツまで、ひたすらかっこつけて突き通すっていうのがしっくりきたっていう。
海:“やれることをやる、向いてないしやれないことを無理にしようとしない”に変えてから、すごいよくなったよね。
RYOSUKE:思い返せば演奏がぐちゃぐちゃな頃から、そうしてましたもんね。煽り方も知らないくせに「うおおおおっ!」って。それでも、わーって盛り上がってたのってそういうことだったんだろうな。
――意識していないと本質を活かすことよりも、“売れるためには”みたいな論に着地しちゃいますよね。インディーズだと特に。
海:みんなそうだと思いますよ。俺らも仲間も“売れるとは”って、めっちゃ考えてたもん。
RYOSUKE:それが1番お客さんを遠ざけていたよね。
――彼女 IN THE DISPLAYにも、“売れるとは”って考えていた時期があったんですね。
海:この8年めちゃくちゃ考えました。“売れる”ってどういうことか。ビジネス的な自分と好きな音楽をやりたい自分と、2つの考えの折り合いが全然つかなかったですね。その配分がおかしくなって気づけば売れるものが正しいと思いすぎていた。本当にやりたいことが2割3割しか残ってなかったんです。
――“売れること”が正しいことじゃないと気づけたきっかけはなんだったんですか。
RYOSUKE:楽しくないじゃないですか。
海:でも向き合って考えられるようになったのは、メジャーデビューだから。いままではバンドの運営とかを考えなきゃいけなかったんですよね。でもいまは音楽のことだけを追求して考えられる。そうなったときに、自然といまのスタンスが正しいと思うようになったんです。
RYOSUKE:集中して音楽にだけ取り組めるようになったのが、メジャーデビューが決まって1番大きかったことかもしれないですね。
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