彼女 IN THE DISPLAY インタビュー

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Text:坂井彩花
Photo:塚本弦太


メジャーデビューで取り戻した初期衝動。今だからいえる若手バンドに対する思いとは。


5月30日にミニアルバム『get up』で、メジャーデビューを果たす彼女 IN THE DISPLAY。

かっこ良さにとことんこだわったライブアクトは、女性のみならず男性も惚れさせる。トーク力もあり個性豊かな5人はなぜ今のライブスタンスにたどり着いたのか、インディーズ時代にどのように時を重ねメジャーデビューにたどり着いたのか。海 THE KID(Dr.)とRYOSUKE(Vo.)に話を聞いた。



バンドをたくましくした40本回るライブツアー

――いろいろな時期を越えてたどりついたメジャーデビューだと思うのですが、2015年の活動休止はバンドに影響がなかったんですか。

RYOSUKE:あのころは、みんな荒んでいた気がしますね。当時は笑っていたかもしれないけど。僕の喉の手術をきっかけに、みんな2〜3か月くらいバンドに携わらない日々を送ったんですよ。それがすごい楽しくって。それをお互い言ってしまっていたのは、いま思うとちょっと悲しい気がしますよね。楽しいこと自体は全然いいんですけど。
でも、いまはこの5人でいる過ごす日々がめっちゃ楽しいから、どうやったら自分の周りの人と楽しくいられるかって考えます。

海:俺は療養の期間、死ぬほど遊んでました。5年間バンド活動をしてきたなかで、ふいに休みをいただいた気持ちだったなー。

RYOSUKE:あのころは本当に全部やってましたもんね。考えて、ブッキングして、ツアーして。

――ライブは3日に1回くらいのペースだったんでしたっけ。

海:そうです。やばかったっすよ、あの時期。どうやって生きよったんか、まじでわからないっす。どのバンドも車に炊飯ジャーが乗ってた時代なので。

――ライブでファンを増やしていた時代ということですか。

海:高速道路が1000円だった時代なんですよ。あのときはやばかったです。基本的に1度福岡からライブで出るときは全国で40本以上のライブをするんです。俺たちは出っぱなしスタイルだから、1ヶ月全部回るって決めたら1ヶ月は家に帰らない。バーッて上から下まで全部やって戻ってきて、またお金を貯めて。ライブに行ったときに次のブッキングをして帰ってくるんですよ。それで同じメニューをもう1回、もう1回って。そうやらないと東京の人に忘れられると思ってた。

――今はそこまですごいツアーをしているバンドは、あまり見かけないような気がしますもんね。

海:高速道路問題、まじでやばいっすからね。そのころよく起こっていたのは、いろんな県のバンドが遠征しすぎて出身県を勘違いされるっていう。しょっちゅうあったよね。

RYOSUKE:あったあった。本当に高速料金の問題だと思うんですよ。そこを解決できれば、回りたいバンドはたくさんいるんじゃないかな。

――RYOSUKEさんの手術を期にライブの数を減らしていると思うのですが、減らすことで見えてきたことってありますか。

海:ライブ本数が多くてよかったのは、ミスやトラブルに対して一喜一憂しなくなったことですかね。最近は少なすぎるのでライブ本数を増やしたいと思ってます。いまのKIDのライブだったら、やればやれるだけ心を掴めると思うので。

みんな仲良くじゃ何も解決しない

――以前だとライブの収益としての音源って大きかったと思うんですよ。でも、いまってサブスクも発達してきてますし、音源が売れない時代なんて言われてますよね。いまの時代に若手だったら、彼女 IN THE DISPLAYはどんな戦略をとりますか。

RYOSUKE:わりと僕は現場主義なので、いいライブをするのが結局1番いいプロモーションなんじゃないかな。急にポーンって売れるのもわかるんですけど、それが長続きするかというと違うと思うし。ずっと現場主義でいる人が、ずっとファンから愛される人なんだろうなって。

海:ライブをよくしていく、いろんな人に見てもらえる方法を考えるしかないですよね。ライブに来てくれた人の口コミが1番伝わるじゃないですか。いまの時代だったらプロモーションとしては、PVにしっかり金かけるとかのほうがいいのかなって思いますね。

RYOSUKE:バンドや音楽のスタンスにもよるんでしょうけど、あんまりやりすぎると媚びてる感でちゃうし。「あいつなんか必死やな」って、Twitterを頑張りすぎたりすると言われたりするから。俺はどちらかというと、そういうのをされたら引く側なんで。

海:もし憧れの人がやっていたら萎えるかもね。音楽性にあうことをやるべき。

RYOSUKE:自分のスタンスを見極めていい塩梅で。

海:みんながやってるからって同じことをやったら、遠回りしちゃう気がしますね。俺らも一時期、ツイートにくれた返信に返信をしたりしてましたけど。返信を無碍にしたら悪いなって思って返してたんですけど、見え方がよくなかったのかなって。

――ファンとの距離の取りかたって、若手バンドが抱えている問題だと思うんですよ。バンドがアイドル化してしまうというか。

海:めっちゃ多いですよね。俺たちも昔そうでした。出待ちの数とかありがたいことに多くて。対応するんだったら、対応する。しないんだったら、しない。ハッキリどっちかにしたほうがいいと思いました。

――彼女 IN THE DISPLAYは、みんなで「しないようにしよう」だったんですか。

海:俺は言いましたね。打ち上げが終わるまで残ってくれている子もいて、それはその子にも箱の方にも申し訳ないし。でも前はやってて、そうさせた原因は俺らにあるから「今後はごめんね、今日はしょうがないけど」「ありがとう」って。

――責任を持ってちゃんと伝える、ということですね。

海:いっちゃえばRIZEのJESSEさんなんて、ライブが終わったあとにひとりで残って全員としゃべるんですよ。10-FEETのTAKUMAさんも。それを見ている俺からすると、本当にすごいなって思うんです。それはできる人がすればよくて。若手がその姿に憧れて真似しちゃうと、ファンの人に隙を見せるだけというか。JESSEさんやTAKUMAさんがやるといい兄貴感のある空気になるんですけど、若い子が「ありがとう」ってやってるとアイドルっぽくなってしまいがちなので。あんまりロックじゃないから、だったらできない俺らはやらないほうがいいかなと。

――意図せずアイドルっぽくなってしまうのは、心苦しいですよね。

海:中堅層がみんなそれをしちゃってるからなんですよね。好いてくれているたったひとりのおかげで気持ちが保てることもあるから、そこにすがる人は多いと思う。でも、ハッキリとそれじゃダメだってしないと。このひとりのためじゃなく、その先の2人、5人、10人のためを考えて行動する。ちゃんと伝える。たぶん言えばわかってくれると思うんですよ。だって、俺たちのために残ってくれるくらい好きでいてくれている人だから。

RYOSUKE:なんでも気づいたら大きくなってるから。悩んでるくらいなら、振り切ったほうがいいと思う。

海:1年はまじで気合で乗り切るしかない。その優しさがたった1枚のTシャツに繋がったりするから気持ちはわかるんだけどね。売れたときのことだけ覚えてるんだよ…。10回に1回くらいしかないのに、その1回がよすぎてずっと覚えてる。それはダメなんですよ。本当に人間ってバカな生き物だな…。

RYOSUKE:あとはバンド関係での上下関係のなさも影響してるかもしれないですね。

海:たしかに。いまの福岡って、ほとんど上下関係ないもんね。俺らがガキのころは、先輩が怖すぎて楽屋に入れないとかもあったけど。

RYOSUKE:まじで怖かったんすよ。先輩が狭いところで足を伸ばしてるんですけど、そこを通らないと機材を取りにいけなくて本気でどうしよって思った。

海:そんなんばっかりだったよね。でもいまはみんな友達、みたいになりすぎてる感はある。

RYOSUKE:どっちにも良さはあるんですけど、その感じがお客さんにも出ちゃう子はいるんだろうなって。

――“みんなで仲良く”が変な広がりかたをしてしまったというか。

海:昨年『Hook Uppers!!!』っていうツアーをやらせてもらった時に、「ここにいるみんなと来年いちゃダメだ」って思ったんです。みんなで一緒に底上げは、もう無理なんですよ。誰かが抜きんでて本当のフックアップをしないと、いつまでたってもシーンやお客さんの絶対数は変わらない。売れてるバンドから次のバンドまでの差がありすぎて、そこを埋めるようにならないと。全然バンドで夢を見られないっすよ。だから他のバンドがやってないようなスタンスにしようって決めて、今のライブスタイルになったんです。

――彼女 IN THE DISPLAYのスタンスとして、福岡という地方で勝負してきたっていうところもありますよね。東京に出てくることを選ばずに、地元の福岡でやってきたメリットや強みってありますか。

海:福岡に対しては、世界で1番素晴らしい街だと思ってるっていうことしか言えないです。でも、東京に対してはある意味悪魔だと思ってます。“東京”って欲しいものが、すぐ隣に必ずある街ですよね。芯がないやつだと欲しい情報が自分のなかに入ってきたときに、その都度色が変わってしまうと思うんです。でも地方は、探さないとそれが手に入らない。だからこそ、東京の悪魔に勝つために地元で芯の何かを掴まないと。なんでもいいから考えの芯がピッとした状態で東京にくるとめっちゃいいと思います。

――本当にそうですね。ぶれない何かを持っていない人は、東京にのまれて埋もれていってしまう。

海:ただそのゆずれない芯ってなんなのって感じですけどね。それが東京に落ちてるかもしれないですから。

RYOSUKE:案外「俺は俺」っていう根拠のない開き直りからでもいいんじゃないかなって、僕は思ってる。

海:大事なのは男の子であり続けるってことですかね! やっぱり同性に愛されないと異性に愛されないので。

links

profile

彼女 IN THE DISPLAY
福岡を 拠点に活動する5人組ロックバンド。 あらゆるジャンルを取り込んだ変幻自在なサウンドとエモーショナルな歌声、目を引くバンド名で瞬く間に注目を集める。 2017昨年リリースしたミニアルバム「GOLD EXPERIENCE REQUIEM」は第10回CDショップ大賞2018地方賞・九州ブ ロック賞を受賞し、収録曲の「アカネ」が世界191カ国配信Netflixドラマ「僕だけがいない街」EDテーマに抜擢。
2018年5月30日日本コロムビア TRIADレーベルよりメジャーデビューAL「get up」リリース。

release

Mini Album

get up

彼女 IN THE DISPLAY
  1. 1. STAY KID
  2. 2. CHAOS
  3. 3. DRAGON HORN SHOTGUN
  4. 4. Kick
  5. 5. KVE
  6. 6. Anthem for my friends

2018.05.30
COCP-40355/¥2,000(税別)

event info

◇6/ 7(木)
福岡 Queblick
BACK LIFT「祝10周年!〜いま、会いに行くから待っとっテン〜」

◇6/21(木)
北海道 Duce Sapporo

◇6/23(土)
札幌 KRAPS HALL
夢チカLIVE VOL.130

◇7/ 1(日)
渋谷 TSUTAYA O-Crest
GETUP!!ROCKERS!!TOUR

◇7/ 7(土)
広島 CAVE-BE
GETUP!!ROCKERS!!TOUR

◇7/16(月)
大阪 アメリカ村BEYOND
GETUP!!ROCKERS!!TOUR

◇7/18(水)
名古屋 CLUB UPSET
GETUP!!ROCKERS!!TOUR

◇8/ 3(金)
福岡 DRUM Be-1
GETUP!!ROCKERS!!TOUR

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