08.24 真夏の大戦争1日目@渋谷CLUB CRAWL

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8月24日(木)25日(金)に渋谷CLUB CRAWLで開催された〈真夏の大戦争vol.4〉。〈最高で最強な10代限定イベント〉として注目を集めており、同世代だからこそ負けられない場所として、この夏も多くのバンドの始まりの音を聴くような2日間となった。このページでは、初日となった8月24日(木)のレポートをお届けする。

【スイミー、空を飛ぶ】


カウントからはじまったスイミー、空を飛ぶ。力強いドラムが響き渡り、力のある声に思わず手を挙げてしまった。日常の大切なこと、些細なことを歌った歌詞と、優しく強い声、キャッチーなメロディで、観客の心を掴み、会場を沸かせた。観ている人たちの動けなくなってしまったような眼差しが印象的だった。フロアの雰囲気を自分たちのものにし、たった20分間をそこにいた全員の目に焼き付けるような、印象的なライヴ。無音を作り出すことも演奏だと改めて感じ、思わず息を飲む場面もあった。急遽出演が決まったものの、まさにピンチヒッターと呼ぶに相応しいステージとなった。

【Sparkle of Resonance】

ゆっくりとメンバーの4人が登場したと思いきや、ヴォーカルのTERUがいきなりシャウト! 「俺たちがSparkle of Resonanceだ!」と叫ぶその姿には十分な風格が漂っていた。まるで咆哮のようなシャウトをエキゾチックなギター・プレイと跳ねるようなドラム、心臓を抉るようなベースが支える。音の厚みを活かした硬派なラウド・ロックでありながら、コーラスが入り混じったハーモニー溢れるメロディーで独特の世界観を作り出していた。MCでは「少しでも頭の片隅に残しておいて貰えれば」と未来に続く活動への意志を見せ、最後の曲“circulation”では、どや。(Gt)のメロウ・ヴォイスとTERUの地の底から噴き上がるようなシャウトで、スパレゾらしいグルーヴを会場に蔓延させた。初ライヴらしくない堂々かつ垢抜けたアクトだった。

【紗弥香。】

耳にすっと入ってくるような透明感のある声で、弾き語りながらもしっかりと届けるような歌を歌った。自分が一番苦しい時に書いたという“弱虫”は、歌っている時の紗弥香。の表情や声がそれらを物語っているようで、見入ってしまう人も多かった。そして心に直接刺さるような歌詞と、叫ぶように歌った“自暴自棄少女”の歌詞は、このSNSの盛んな現代に、ハッとさせられるような内容で、10代の心を掴んだに違いない。今回のイベントのタイトルや季節にふさわしい“夏恋”は、紗弥香。自身の声とも良く合う詞やメロディーを、爽やかに歌い上げた。

【Flexaloud】

ジャンルを問うていない音楽は自由で強い。実に多彩で手数の多いこのフレカラウドというバンドは、ガールズ・バンドともメロディックともオルタナティヴとも言える、分類不能なロックン・ロールを奏でるバンドなのだ。音の厚みがあるベース・ラインと正確にリズムを刻むドラム、独特の雰囲気を保ったギターに、ポップでありながら心臓を揺らすような声を載せる。この音圧が高く多彩なサウンドは凄まじい熱量を帯び始め、次第にフロアの心緒を叩き壊して行った。初ライヴとは思えないほど、完成度の高いアクトであり、2曲目“リフレイン”の正統派を思わせるサウンドは特に際立っていた。新しい音楽を体に滲ませるには相当な体力を要するが、このFlexaloudの音は驚くほどすんなりと耳に入り、体に染み込んで来た。ストレスフリーかつ濃厚なFlexaloudの音楽をいま聴くべきだ。

【花冷え。】

かわいらしい顔からは想像もできないシャウトでリハーサルから会場を沸かせた花冷え。! 時折見せる笑顔と奏でる音楽が半端じゃない。ベース、ギターの爽やかなコーラスとシャウトの掛け合いがぴたりとハマって美しく、聴こえるベースのスラップもたまらないし、全身で音楽をやっているような、ライヴ感のあるパフォーマンスは見ていて飽きることがない。思わず口ずさんでしまうような、覚えやすいメロディーにも注目! 以前の〈春風大戦争〉ではサポートだったベースとドラムが、今回の〈真夏の大戦争〉では本メンバーとなり、リベンジを果たしたライヴだった。

【果歩】

弾き語りの音楽、と聴くとどうしても身構えてしまうあの感覚は何だろうか。その答えに果歩のライヴを観て近づいた気がした。弾き語りの音楽、所謂アコースティックでの良いとされるライヴに無条件で求められることは、歌の上手さでもギターの技術でもなく〈リズム感〉。言い換えるなら〈ギターと歌のピッチの正確さ〉であると思うのだ。果歩のライヴは、緩急をつけたギター・プレイにハイトーンな声で、僕らの脳の敏感な部分を頻繁に刺激する。あの声でシリアスな感情を叫ばれたら、もう溜まったもんじゃない。こじ付けの言葉を添えるなら〈ダークポップ・シリアスポップ〉だし、時折ハッと漏らす吐息や、“あいつとライブハウス”に描かれている「愛してるとか愛されたいとか好きな事だけは伝わった」という歌詞はまさにリアルなのだ。心情の吐露、その視界に映った現実、ノスタルジー、警鐘全てを曝け出す様な果歩の歌を、安っぽい言葉で片付けたくなかった。女性シンガーはどうしても〈男〉と比べられがちだが、そういう垣根を取っ払って見ても果歩の歌は間違いなくポップでありロックだし、優しくもあり力強くもある、妄想だけどリアルだし、苦いけど甘いのだ。気の抜けたコーラの様なラブソングに飽き飽きしている方は一度是非、果歩を観にライヴハウスに行ってみては。

【糸のホツレ】

〈真夏の大戦争〉も後半戦、7番手に登場したのは糸のホツレ! 藤田(vo.gt)の「誰にも負けない演奏を」という言葉通りに、楽しくて〈これぞライヴ!〉という熱量のあるステージで会場を沸かせた。メンバーが楽しそうに奏でると、フロアにも笑顔が伝染し、それから真剣な表情にもなり、そこにいる人たちを巻き込んで、楽しくなれるバンドである。10代ならではの思いをぎゅっと詰め込んだような曲は、どれも刺さるものがあったはず。カウントからはじまった最後の曲“oneself”では、多くの人の手が上がり、歌に込めた思いを叫んだあの20分間は、きっと誰にも負けていなかったのだろう。

【ユレニワ】

1音目からとにかくかっこいい音が鳴っていた。音圧のあるバンド・サウンドとこれまた厚みのある声とで、圧巻のライヴを見せつけた。フロアの隅々まで震わせるような、伝えていくような、勢いと熱量。ライヴ・バンドだった。息づかいや無音さえ、そのすべてが演奏のようで、ユレニワの作り出す無音の空間に息を飲んだ。彼らの鳴らした1つ1つの音が刺さり、自然と手が挙がり体が揺れるような時間だった。最後の曲“Neverland”が終わり、後ろから射す照明で彼らのシルエットが浮かび上がった瞬間に、自分はいま、バンドのライヴをみているんだと実感した。

【かたこと】

湘南のスリーピース・バンド、かたこと! 1曲目“さよなら十二星座”で、テレキャスターの音と、切なくも凜とした歌声がフロアに響き渡った。2曲目“欠陥品”は、赤い照明がよく似合う曲で、がらりと雰囲気を変えた。「学校とかいろいろ始まると思うんですけど、そんな日々を乗り越えていけるような、乗り越えていってほしいなという曲を最後にやって終わりたいと思います。」と始まった“5時20分の帰り道”。かたことの音楽はスリーピース・バンドならではの荒々しさと、いつでも寄り添ってくれるのだろうなという安心感を兼ね備えていて、聴きごたえのある20分間だった。

ゲストアクト【THE BOY MEETS GIRLS】

大学で知り合い、今日まで続けたと話す彼らは色々なジャンルの曲を演ってもブレないテーマがあると語った。それは、〈誰も1人ぼっちにしない音楽を〉ということである。この信念がライヴにも曲にも反映され、周りの人をも巻き込んで楽しくさせてしまうような40分間だった。〈色んな面を見せたい〉と、様々な曲を演奏したボーイミーツはアンコールも合わせ全7曲を披露するという、なんとも贅沢なセットリストで会場が温まる。この人たちの背中が前の方にあるという事実は、10代の彼らにとって本当に頼もしく、そして希望である。誰も今日のことを忘れてしまわなければいいなと思った。

text by: ハル、マツオハジメ
photo by: 町田菜亜、まつ◎、リカ


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