2025年7月3日、10代のアーティスト限定イベント『アオキハルヘVol.13』が下北沢MOSAiCで開催された。若手アーティストの登竜門的ライブハウスである"下北沢MOSAiC"とEggsが共同で企画する本イベントは、2022年3月から行われている。本稿では、乙女座症候群、kogare、BonSim、akebono、マリンブルーデージー(出演順)のステージの模様をレポートする。
アッパーチューンでイベントに勢いをつけた、乙女座症候群(オトメザショウコウグン)

1組目は東京を拠点に活動する高校3年生4ピースガールズバンド、乙女座症候群だ。アッパーな「天使の歩幅」「春ぐもり」で勢いよくスタートすると、ハンズアップするオーディエンスは次第にテンションを高めていく。「Eggsさんの10周年、おめでとうございます。いわば誕生パーティーってことですよ!」と元気に祝いの言葉を述べたゆな(Vo./Gt.)は、自身が10歳の頃は二分の一成人式をやったと振り返る。そして「Eggsさんは“10歳”でビッグな存在になった」と感服。そうは言いつつも、ゆな(Gt.)のエネルギッシュで伸びやかな歌声と、くみのタッピングを交えた艶やかなギターサウンド、りなべる(Ba.)のスラップやスライド奏法を駆使した滑らかなベースラインに加え、ナナミ(Dr.)の揺るぎないリズムを刻むパワフルなドラミング。高校生とは思えぬテクニックを魅せる乙女座症候群に、見ているこちらが感服してしまう。ラストまで集中力を持続させたままフロアを盛り上げ、見事トッパーの役目を果たした。
setlist
- 01. 天使の歩幅
- 02. 春ぐもり
- 03. いつか
- 04. 流れ星
- 05. 私だけのロックスター
ハートフルな空気でオーディエンスを楽しませたkogare(コガレ)

いちのせひなた(Vo./Gt.)とみれな(Ba.)による東京発のガールズバンド、kogare。2人は約半年前の2024年大晦日にせみころんから名前を変え、kogareとしての活動を開始した。この日はサポートドラマーとともにステージに登場。3人が輪になってグーパンチで気合いを注入後、小気味よいリズムの「バンドがしたいの!」を演奏。サビに差し掛かる頃に、みれなが腕を高々とあげ、オーディエンスのハンズアップを誘う。「こっちのキミ」では、<愛を歌っても足りない日々>の<愛>で、いちのせが胸の前で手をハートにし、オーディエンスに愛を届ける。みれなは終始フロアに微笑みを投げかけていた。「『アオキハルへ』に呼んでいただいてありがとうございます。Eggs10周年、おめでとうございます」といちのせが祝いの言葉を伝える。ラストは2025年6月23日よりEggs限定で配信中(2025年7月3日現在)の「夜明けのふたり」。軽快なサウンドにのせてハートフルな空気をオーディエンスに届けた3人は、向かい合って元気よくフィニッシュした。
setlist
- 01. バンドがしたいの!
- 02. こっちのキミ
- 03. しらないふり
- 04. スイセン
- 05. 新曲
- 06. 夜明けのふたり
バンドサウンドをダイナミックに躍動させた!BonSim(ボンシミット)

関東発4ピースロックバンド、BonSim。真っ赤なストロボに染められたステージに、koujin(Dr.)、EEJI(Ba)、ISSA(Gt.)、Rui(Vo./Gt.)が順に入場。「かかって来いよ!」とRuiが血気盛んに叫び、ハードロックな「インフェリオリティ」へ。のっけからオーディエンスのボルテージが一気に高まる。目を見張ったのは、彼らの演奏スキルだ。シャウト混じりのロングトーンやエキセントリックなギターサウンド、スラップを織り交ぜた重厚なベースラインにパワフルでダイナミックなドラミング。加えて、RuiやEEJIが魅せたヘッドバンキング始めとするパフォーマンスも場数をこなしてきたバンドのよう。その反面、「Eggsさん、10周年おめでとうございます。1バンド目の方が「お誕生日」と言ってて。10歳、俺は側転の練習をしてましたね。全然できなかったんですけど(苦笑)」とRuiが等身大のトークで観客の笑いを誘う。「BonSimが、しんどい期間を一緒に乗り越えた時に書いた歌詞です。俺達も10年どころか老いるまでバンドをやっていたい」と言い、雄大なミディアムチューン「馬鹿らしく」をプレイ。ラストの疾走感溢れる「試煉」では、EEJIが頭上でベースを一回転させるダイナミックなパフォーマンスを。最後は4人が躍動的にかき鳴らし、最高潮のテンションのままステージを後にした。
setlist
- 01. インフェリオリティ
- 02. いつかはさ
- 03. マンデビラ
- 04. シュガースポット
- 05. 馬鹿らしく
- 06. 試煉
楽曲のバリエーションで緩急あるライブを魅せた、akebono(アケボノ)

早稲田発の大学生3ピースバンド、akebono。tomoaki(Ba.)は学業の都合により7月の活動を休止するため、この日はサポートベースを迎えてのステージだ。学業を理由にイベントに不参加となるのは、10代の出演者がメインの『アオキハルへ』ならではかもしれない。3人がステージに登場すると、悟志(Vo./Gt.)が「YO!東京!akebono始めます!」と意気揚々と挨拶し、ドライブ感溢れる「灯り」を披露。フロアからハンズアップが起こる中、<ここMOSAiCの白い壁に何を刻めるか>と歌詞をMOSAiCに変える粋な演出を見せる。続く「愛しい日々」では、しょう(Dr)が高速キックのバスドラでビートを加速する。最後まで乱れぬ不動のリズムが見事である。「Eggsさん10周年、おめでとうございます!このMOSAiCの舞台に立てて本当に嬉しいです!」と祝福とお礼を述べる悟志。すぐに過ぎ去ってしまう10代を噛み締めながら「俺達が今日MOSAiCで紡いでいく25分間も、終わっていく青春みたいに薄れていかないようなライブをしたいと思います!」と実直な気持ちを伝え、荘厳なミディアムチューン「秋風」をプレイ。そして「東京」「ここに」と疾走感のあるアップチューンで演奏を終えたと思ったのも束の間。時間に余裕があったため特別にもう1曲追加。この日2度目となる「東京」でオーディエンスの熱気を一気に再燃させ、青春のステージを駆け抜けた。
setlist
- 01. 灯り
- 02. moment
- 03. 愛しい日々
- 04. 秋風
- 05. 東京
- 06. ここに
- 07. 東京
憧れのイベントで実力を発揮した、長崎発マリンブルーデージー

トリを飾るのは、結成から3年目を迎えた長崎県佐世保発の3ピースガールズバンド、マリンブルーデージー。この日はすずき(Dr.)に代わり、サポートドラマーを迎えてのステージとなる。1曲目は“1人ぼっちになった私の歌”という「青春」。小・中学校で不登校を経験した海音(Vo./Gt.)の内に秘めた不安や葛藤を歌うマリンブルーデージーの楽曲は、学生を中心に人気が上昇中だ。「Eggsさん10周年おめでとうございます!『アオキハルへ』という憧れのイベントに呼んでいただきました!」と、下北沢MOSAiCのステージに立つ喜びを伝える。そして、この日は3月に高校を卒業したばかりの海音と嶺香(Ba.)にとって、上京後初のライブである。1人暮らしを始めた海音は、誰もいない家で落ち込む時に「私が15歳の時描いたラブソングが、あなたはそういう失敗をいっぱい乗り越えてきたんだから大丈夫だよ、と教えてくれる」と言い、「言霊」を披露。演奏中の海音と嶺香の表情が、明るい未来に向かって輝いているように見えた。海音が「踊ってください!」と観客を煽り「らったった」を演奏。自然と体が動くグルーブでステージとフロアに一体感が生まれた。一旦退場した3人は、アンコールの大きな手拍子受けて再び登場。「あなたの日々も報われますように。みなさんにも(私と同じように)音楽がありますように」と海音が自分の思いを吐露。そして「藍にしずく」を披露し、オーディエンスの幸せを願いながら自身の切なる想いを届けた。
setlist
- 01. 青春
- 02. recollection
- 03. ずっっっと!
- 04. 言霊
- 05. らったった
- 06. See’n’you
- En. 藍にしずく

個性溢れる5組のアーティストとともに、観客達はEggs10周年を祝いながら思い思いに音楽を楽しんだ。『アオキハルヘVol.13』も10年続くイベントとなり、好奇心豊かなリスナー達に、いつまでもフレッシュな音楽を届けるイベントであってほしいと願う。
執筆・取材:橋本恵理子
撮影:石丸 大輝











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