2026年3月30日(月)に関西のライブハウスプロデュースによる十代才能発掘プロジェクト『十代白書2026』が開催された。
『十代白書』は音楽活動を始めるきっかけ、オリジナル曲を作るきっかけ、ライブをしたいと思えるきっかけになればと、2011年より開催されてきた十代限定の大会。グランプリアーティストには9月に行われる『KANSAI LOVERS 2026』への出演権が与えられる。
今大会で16回目となり、過去にはブランデー戦記、 ハク。、 asmiなどなど、多くの関西のアーティストが羽ばたいていくきっかけを作ってきた。今年も100組以上の応募があり音源審査、2026年1月に各地で行われたライブ審査を勝ち上がった14組が聖地・BIGCATに集結。チケットはSOLD OUTし、多くの人を熱狂させた1日をレポートする。
MC:田中乃絵、ハタノユウスケ(共にFM802)
寄集(ヨリアツマリ)

「僕らからトリのPitch Blueまで与えられた時間は2曲10分だけ。その間の時間、音楽発表会をしに来たつもりは全員さらさらないと思います。この10分間、僕らはライブしに来ました。よろしくお願いします」
矢野路歩(Gt. / Vo.)の全組の思いを代表するような一言で始まった『十代白書2026』。言ったからにはと、全身全霊の青春パンクを届ける。その熱気は瞬く間にBIGCATを包んだ。
「この街とあなた」の前にはフロアに手を上げるよう促し、メンバー紹介をした後、「最後に今、拳を上げてくれているあなた達。今から一緒にバンドをしましょう」と始める。拳は最後まで下ろされず、ここにいる全員で寄集のロックンロールを鳴らしていた。
setlist
- 01. あいつをぶっころすうた
- 02. この街とあなた
キトンブルー

紹介VTRが終わると、すぐに「泣きたいのは、」を歌い出す。ゆうり(Gt. / Vo.)のハスキーな歌声と疾走感のあるメロディの合わさりが心地よく、じわじわとこのバンドの出す優しい色と輝きに染まっていくのが分かった。
MCはせず、すぐ「レンタル、愛」のゆったりとしたイントロが始まる。そこから転調してスピードを上げ、ぢょう(Gt.)のギターソロが響く頃には、フワリとした部分とチクリと刺さる部分が共存するキトンブルーのロックに病みつきになった人が増えていたというのは拍手の大きさで分かった。
ライブ後のインタビューでもメロディへのこだわりを話していたが、曲の良さで勝負するという強いプライドがしっかり見えたライブだった。
setlist
- 01. 泣きたいのは、
- 02. レンタル、愛
乙音(おとね)

力強く前を指さし「光の方角へ。夢見たあの場所へ。あなたとまた出会うために歌います」と「昆虫図鑑」をアカペラで歌い出すと、その響き渡る無垢な歌声に一瞬で会場は心を掴まれた。そこから彼女がギターを鳴らして歌うたびに、部屋も、雨も、春の景色も見えてきたし、温度や匂いまで伝わってきた。
そんな高い情景描写力を示して2曲目は「パパと喧嘩した時に家出して、すぐに帰って家の隅っこで泣きながら書いた曲」という「Doll」を届ける。やはりその日の食卓まで見えてきたし、フロアも自身の家族の顔を思い出しながら聴いていただろう。「強くなった私を見てほしい」とも言っていたが、こんな温かくて美しい歌を堂々と届ける娘さん、すごいですよ。
setlist
- 01. 昆虫図鑑
- 02. Doll
Silly_Walker(シリーウォーカー)

その洒落たサウンドはリハーサルからグルーブを上げた。そして始まった「Bon voyage」は、その装い通りスタイリッシュかつドラマチックで、河西秀仁(Gt. / Vo.)のボーカルには色気。川間敬史(Key.)の冷たさのある音も良くて、もうこれはTBS日曜21時の社会派ドラマの主題歌にしてほしい。
「GEOMETRY」は先ほどのクールさから一転、「こっから盛り上がる準備できてますか!」と熱のあるサウンドでボルテージを上げて、体を動かさずにはいられないフロア。ライブハウスだけでなく、ホールでのライブも容易に想像できるスケールの大きさを見せた。
「音楽好きが知っているバンドになりたい」とのことだが、世間はほっとかないかも。
setlist
- 01. Bon voyage
- 02. GEOMETRY
カタメツムリ

始まる前にフロア前方に詰めるようにとアナウンスがあると、ステージ上にいるつゆ(Gt. / Vo.)が「おいでおいで!」のジェスチャー。そんな届けたくてたまらない4人は躍動全開でポップワールドに連れていく。ただ衝動だけでなく、ステージ上での息を合わせた動きや同期を用いるなど様々な音が守備範囲と感じさせるクリエイティブ性からも、鍛えてきたバンド力を感じさせた。
「number5」は愛らしい曲だったが、「甘い罠」では完全にタガを外して、超絶怒涛の勢いを見せる。でもクセになる音も失われない。この掛け算から生まれる巻き込み力の強さは、既に彼らを知っていた人からしてもハッピーなサプライズ。カタメツムリの罠へようこそ。
setlist
- 01. number5
- 02. 甘い罠
美侑(みゆ)

ギター1本で全てを出し切るという気合を事前から強く見せていた彼女は、まず「Hug」を静かに爪弾きながら、囁くように歌う。優しい曲だが、その一音一音と歌声から強い意志が伝わる。そこに圧倒されたフロアは静かになり、外で車の通る音が聞こえてくるほどだった。
MCでは「アーティストの大きな役割は未来も音楽に期待してもらうことだと思っています」と話し「黎明」へ繋げる。その力強いストロークと詰め込んだ魂の言葉は、これからどんな向かい風が吹こうとも、切っ裂いて飛んでいく彼女の姿を鮮明に見せ、自然とクラップも起こった。有言実行で全てを出し切った逞しさにMCの田中も鳥肌。音楽シーンの未来の先頭に立つ姿を願ってやまない。
setlist
- 01. Hug
- 02. 黎明
Still Crying(スティルクライング)

鉄のように硬く、刃のように鋭さもあり、そして10代の若さも乗ったシンプルで純度の高いロックの音。川戸蒼太(Ba. / Cho.)の出す低音もしっかり響き、そこに宇都楓真(Gt. / Vo))の熱を帯びていくボーカルが乗ることで聴く人の感情を掻き立て、会場でも多くのハンズアップも生まれた。
続けて上着を脱いだ中島敬太(Dr.)のドラムをBGMに宇都がこの日に感謝して「カッケェ曲やって帰ります!」と言って始めた「Keep End」もイントロから骨太で爽快感のあるサウンド。駆け抜けるそれを浴びて楽しむフロア。そこに間奏で「ありがとう!」と伝える宇都。また1つロックに魅せられた少年が素晴らしい景色を作った。
setlist
- 01. Yours
- 02. Keep End
i3oo(ブー)

少ない音数ながらも「Shibafu」のイントロはどんどん頭を揺らす人を増やしていく。そこに緋沙那(Vo.)のボーカルが加わると、より掴み所の無さが強まり、そのセッション的でファンキーな演奏にメロメロになりながら迷い込んでいくBIGCAT。クラップ?「Foo!」という歓声?当然起こってます。
「まだまだいけるよ?」と煽って始めた「Fedeliui」では緋沙那が高いラップスキルも見せ、より柔らかで力強いステージングでも魅了。クライマックスは際限なく演奏の熱量を上げていき、いつ終わるか分からないくらい。というかいつまでも終わらないでほしかった。簡単にジャンルで括れない新たな個性派集団がその名を刻んだ。
setlist
- 01. Shibafu
- 02. Fedeliui
Zoku(ゾク)

リハーサルから「あぁライブハウスで日々戦ってんな」と分かるギターロックバンドの姿。1曲目の「Sally girl」はバラード曲だったが、青木(Gt.)を筆頭にそのエモーショナルな演奏に誘われて、拳がしっかり上がった。
陸斗(Vo. / Gt.)はちょうど1年前くらいにBIGCATでライブを見て「夢をもらってバンドを組んだ」とのこと。そこから1年「勇気と自信があれば夢なんかなんぼでも叶えれる。もっともっと叶えたい夢もあるし、これから叶えるんやぞということを、ここに証明しに来ました。BIGCATいけるかー!」と伝えてからの「シンデレラハニー」で爆発的にブチ上げた姿。“姫路が生んだロックスター”という言葉をここに予約する。
setlist
- 01. Sally girl
- 02. シンデレラハニー
Rizz(リズ)

爆音を響かせ「全員かかってこいやー!」とひゃん(Ba. / Vo.)が叫び「Never die!!」が始まる。メロコアやパンクを正統継承したその破壊力のあるサウンドにツーステを踏む人もいた。
「一番カッコいいライブをしに来ました!唯一のガールズバンド!覚えて帰ってください!」と伝えて始まった「夜」でも、そのありったけをぶつけるライブは変わらず。ただ、楽しいだけでなくパンキッシュな中にも少し切なさもあるメロディと曲中のMCからは、あなたの孤独に寄り添う部分も感じた。「今日ここでRizzを見たことを絶対忘れないでほしい!」と伝えていたが、ライブハウスで叫びたい夜にはRizzを見に行くという人は間違いなく増えた。
setlist
- 01. Never die!!
- 02. 夜
三人一同(サンニンイチドウ)

1曲目「生活」はサビの<君しかいらない>という素直な歌詞の連呼が体を揺らす。ラフな服装の3人が届ける演奏も楽しそうで、こちらもリラックスして受け取ることができた。
曲間のMCではリズミカルな侑来(Dr.)のドラムが鳴る中で森本(Gt. / Vo.)が話し出す。絶対に今日全員をファンにすること。そして日常に不満がある人の背中は押せないけど「生活ってクソだよな」と共感してあげて、三人一同のライブを見ている時間はこれからも幸せにしてあげるということ。それを伝えてからの「クソ日々」は、相変わらず散らかった部屋の景色も見えるけど、部屋着のままライブハウスに来た数百人の拳を上げさせる未来も見えた。
setlist
- 01. 生活
- 02. クソ日々
Anonyme(アノニム)

サポート2人を迎えた6人編成で鳴らすハードロックは迫力満点だった。
Sana(Gt.)のオープニングギターソロから圧巻だったし、遅れて登場したYURI(Vo.)もアメリカから逆輸入のロックプリンセスですか?というくらいの存在感。そんな彼女がステージを広く使ってパワフルに伸びやかに勇ましく歌を届けるもんだから、会場も当然盛り上がった。saya(Key.)も何かが憑依したかのように演奏したり煽ったりしていたし、MiHo(Ba.)もお立ち台に上がって、力強い音を響かせていた。
今後ハードロックの良さを広めていきたいという。オリジナルな対バンイベントを作りたいブッカーは是非。
setlist
- 01. Re.verse
- 02. Al-coholic
ELEVEN OCEAN(イレブンオーシャン)

ここまでのライブに背中を押され、やっと巡ってきた出番に芽吹(Gt. Vo.)は「十代白書のバックドロップを見て、何か背負ってるなと思いました。俺は!ELEVEN OCEANを背負います」と伝え、強烈な解放音を鳴らす。その迸るエネルギーを携えた「正解のフリして」を鳴らす姿は「誰よりもカッコいいバンドでありますように」という芽吹の願いを叶えていた。
その場にいる全員が興奮状態のまま「マイフレンド」へ。変わらぬ強さの中に、あなたの涙を拭う優しさもあり、この音に身を預けたら大丈夫だという確信があった。
最後はメンバーへの感謝も伝えた芽吹。東大阪から始まった4人のバンドライフはこれからだ。
setlist
- 01. 正解のフリして
- 02. マイフレンド
Pitch Blue(ピッチブルー)

トリを飾るのは神戸・オルタナの新星。1曲目「言えない」から、激しさと美しさを兼ね備えた純正オルタナのメロディを届ける。クールに奏でながら芯のあるボーカルの斉藤(Gt. / Vo.)、音に身を任せるかのように激しくプレイする古川陽太(Ba.)、力強く彩りを加えるホッタ(Dr.)のバランスが抜群だった。
斉藤の「バンドとかライブとかって勝ち負けじゃない。だからこそ今日は勝ちにこだわる。この日の1番にならないといけないと思ってます。俺は俺の言葉で今日の1番を取りに来ました」という言葉には気迫。そこから放たれた「馨」はファイナリスト最後の1曲に相応しい衝動。神戸の青のオルタナがBIGCATを支配した瞬間だった。
setlist
- 01. 言えない
- 02. 馨
前年グランプリのAKAMONEによるゲストライブ、『KANSAI LOVERS 2025』のダイジェスト映像を挟み、各賞が発表された。

GIGGS by Eggs賞…カタメツムリ

準グランプリ…Rizz

グランプリ…Silly_Walker

驚きを隠せないSilly_Walkerも、悔しくて涙を流したRizzも印象的だった。
審査委員長の岸本優二(HEADLINE代表取締役)は「本当の思いは順位を決めることではなく出会い。今日出会った皆様も是非ライブハウスに足を運んでもらえればと思います」と話した。
この日の各出演者がプライドを持ってぶつかり合って生まれた感動は何にも替え難いものだが、日々のライブハウスではさらに年齢も関係なく、そのぶつかり合いがある。日常にもう少し刺激がほしいなら、あなたの近くにあるライブハウスにその答えがあるかもしれない。
執筆・取材:遊津場
撮影:小林まり(ライブ写真)、Daiki(表彰・集合写真)














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