2025年10月22日、Eggsとmona recordsが共同で企画するアコースティックイベント『Eggs 10th Anniversary×mona records pre「まどか」Vol.12』が開催された。出演は、さとうゆうき(スランプガール)、杏結、セリザワヒナタ(パターソン)の3組(出演順)。会場は、ガーランドが至るところに張り巡らされ、野外フェスのような装いのmona recordsだ。YouTubeの生配信も行われた、この日のステージの模様をお届けする。
卓越した歌唱力でバンドでの歌唱とは異なる表情で魅せた、さとうゆうき

トッパーは東京を拠点に活動するインディーズバンド、スランプガールのボーカル&ギター、さとうゆうきだ。今回で3度目となるソロライブは、自身初の長尺である40分のステージである。赤ずきんのようなニットフードを被ったメルヘンな装いで、椅子に座って開演を待つ観客の前に現れたさとうゆうき。1曲目は「あなたの網戸」。軽快なアコースティックギターの音色に乗せて、ソフトな歌声が響く。サビ前にはよりファットなボーカルへと変化し、力強いハイトーンが場内にこだまする。「弾き語りは3回目なんですけど、元気にやれたら嬉しいです」と笑顔で語り、スランプガールの楽曲「週末メモリー」を披露。弾き語りだと、彼女の盤石な歌唱力が際立つ。続いてシャープなロックチューン「贅沢迷惑」をプレイ。演奏後、「いい曲でしょ?」というさとうゆうきの言葉に、観客が大きくうなずく場面も。歌謡曲のにおいを漂わせた「アイスクリィムモォメント」では、ファルセットを交えた歌声が心地よく響く。「外に出るのを諦めたくない気持ちを込めた」と語った「海底スリープ」では、圧倒的な歌声を響かせオーディエンスを魅了する。言葉遊びをふんだんに取り入れた「花の子」は、生きることの叫びをエモーショナルに歌い上げる。「10代って魔法がかかっている気がする。今年が最後の10代なので、その魔法を1つずつ拾い上げていきたい」と述べ、17歳の時に書いたという「17」をプレイ。<きらきらの制服は鎧>の歌詞が10代の理想と現実を表しているかのようだ。ラストはスランプガールの楽曲である「飲み込む氷菓」。「バンドも歌も頑張ります。みなさんと一緒に頑張っていきたい」と想いを伝えるさとうゆうき。10代らしい瑞々しいメッセージには、希望に満ちた未来へのまっすぐな意思が感じられた。
setlist
- 01. あなたの網戸
- 02. 週末メモリー
- 03. 贅沢迷惑
- 04. アイスクリィムモォメント
- 05. 海底スリープ
- 06. 花の子
- 07. 17
- 08. 飲み込む氷菓
繊細と情熱が同居した歌声で観客のハートをキャッチした杏結(アユ)

東京都を拠点に活動するシンガーソングライター、杏結。ゆっくりとアコースティックギターを奏でながら「twilight」をプレイ。温かくも切ないメロディと、透明感のある歌声が場内に響く。続く小気味よいサウンドの「行き先」、日常のささやかな幸せを歌う「cakes」を披露し、柔らかな笑顔を見せながら穏やかなサウンドを紡いでいく。「今日、無料配信があるよって、実家にいるお父さんとお母さんに言うのを忘れたなって」と、演奏の途中で思い出したことを語ると、フロアからふふふっと笑い声がこぼれる。「楽な姿勢で最後まで聞いてもらえたら嬉しいです。最後まで幸せに演奏します」と穏やかに語り、「魔法の夜」へ。クリアなファルセットとパワフルなロングトーンを自在に使い分け、伸びやかな歌声でオーディエンスを惹きつける。「おやすみ」では「“さびしい”という気持ちと向き合って作った曲」と語り、静かに目を伏せながら歌い出す杏結。サビで目を開き、自分自身を受け入れるように情感を込めて歌い上げる姿が印象的だ。「次は大切なぬいぐるみについて歌った曲を歌いたいと思います」と「teddy」を演奏。陽気なギターの音色にのせて、孤独に寄り添うぬいぐるみの温かさを歌う。優しさと力強さを兼ね備えた杏結の歌声が、心に染み渡ってくる。ラストは、MUSIC VIDEOにもなったという「秘密基地」。演奏がクライマックスに向かうにつれて、熱を帯びていく杏結の歌声。最後はエネルギッシュなロングトーンを響かせ、たゆたうギターの余韻を残してフィニッシュした。
setlist
- 01. twilight
- 02. 行き先
- 03. cakes
- 04. 魔法の夜
- 05. かなわない
- 06. おやすみ
- 07. 各駅停車
- 08. teddy
- 09. 秘密基地
内に秘めた熱を消化させ、見事なステージを披露したセリザワヒナタ

トリを飾るのは、下北沢を中心に活動するインディーズバンド、パターソンのボーカル&ギター、セリザワヒナタだ。リズミカルなアコースティックギターが響く「when I was young」からスタート。スウェディッシュ・ポップを思わせる洗練されたサウンドが場内に響く。「平日の夜にありがとうございます。お尻とか痛くなってくると思うので、楽に聞いてください」と、終始椅子に座りながらステージを楽しむ観客を気遣うセリザワヒナタ。続く「3番線」「トワイライト」と、繊細なサウンドにウィスパーがかった歌声を重ね、神秘的な空気を醸し出していく。「パターソンというバンドをやっております。パターソンで7月にリリースしたEPから何曲かやろうと思います」と言い、披露したのは「微熱」。アコースティックギター1本にも関わらず、幻想的で奥行きのあるサウンドを作り出していく。ひょうひょうとした佇まいでストイックにギターを鳴らすセリザワヒナタだが、その演奏には情感が宿っているように思える。無駄のない動きの中に確かな熱があり、音の一つひとつが彼女の心情を映し出していく。抑えた表現だからこそ際立つ感情の揺れ。「MY FRIEND!!」でもステージの余白に余韻を残した。「今日はありがとうございました。セリザワヒナタでした」とお礼を伝えるセリザワヒナタ。ラストソングは「セピア」。落ち着いたトーンの中に深みのあるサウンドと歌声が響く。丁寧に紡がれたギターの音色と安定感のあるボーカルが重なり合い、静かな熱を漂わせながらステージは幕を閉じた。
setlist
- 01. when I was young
- 02. 3番線
- 03. トワイライト
- 04. 待たせてごめんね
- 05. PARAISO
- 06. 微熱
- 07. MY FRIEND!!
- 08. セピア
執筆・取材:橋本恵理子
撮影:金澤 綾音










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