若きバンドたちの登竜門、下北沢MOSAiCで行われた『アオキハルヘVol.14』をレポート!

若きバンドたちの登竜門、下北沢MOSAiCで行われた『アオキハルヘVol.14』をレポート!

2025/12/04

2025年10月28日、10代アーティスト限定イベント『アオキハルヘVol.14』が下北沢MOSAiCで開催された。述べ14回目となるこのイベントに、今回は、ミアキスNÖVEILWing-StongハッピーセットCozyLand(出演順)の5組が出演した。

バンドサウンドを自分たちも心の底から楽しんでいた、ミアキス

トップバッターのミアキスは、全員が都内高校の2年生。ボーカル&ギター、ギター、ベース、ドラムという4人編成だ。目を引くのはボーカルがアコースティックギターを弾くところ。「25分間、ミアキスの音楽を届けられるように頑張ります」というMCから、1曲目「歩幅」へ。透明感ある歌声が持ち味の女性ボーカルが、瑞々しいメロディーを紡いでいく。サビでは綺麗なファルセットも披露した。ミディアムチューンからディスコビートに切り替わり、テンポを上げていった「君のそば」では、音楽に対する自由度を見せる。ボーカルのMC。「Eggs10周年おめでとうございます。アオキハルヘ、ずっと出たかったイベントです」とイベントへの思いを告げた後、10年前は小学生だったと語り、いきなり「メンバーに10年前、何してたか聞いてみます」と話が展開。会場からも笑いが起こる。「近くの公園で“妖怪ウォッチマスター”(ゲーム)してました」とドラムが答えた。「大人の少し悪い部分を書いた曲です」という言葉を受け「おためごかし」へ。スケール感のあるミディアムチューンで、ボーカルはサビの高音を地声で力強く響かせた。イントロからクラップが起こった「終音歌」に続き、ラストソングは「時の栞」へ。シューゲイザーのようなアプローチ、ギターとベースのコーラスのレイヤーなど、メンバー個々が持つ潜在能力の高さを垣間見ることができた。 

setlist

  1. 01.歩幅 
  2. 02.君のそば 
  3. 03.おためごかし 
  4. 04.終音歌 
  5. 05.時の栞 

NÖVEIL(ノーベイル)が見せた、幻想的でダイナミックなサウンドスケープ 

メンバーを待つステージにSEが流れ始める。アンビエントとノイズの間をいったりきたりするような雰囲気だ。SEからバンド像の破片がこぼれ落ちてくるようだった。ステージ中央、ボーカルの位置の右側にミキサーのような機材がセッティングされている。2番手に登場したのはNÖVEIL。彼らのステージは、10月18日にデジタルリリースされたばかりの新曲「Dimly Midnight」で幕を開けた。少しフォーキーなメロディーが漂っていく「汽車はゆく」では、ボーカルのスキルが光る。中高音を綺麗に響かせた後、低音におりてくる瞬間でも、声圧が変わらない安定感に驚いた。有機的で繊細、それでいて包容力のあるサウンドスケープが、観客をノーベイルの世界に誘っていく。ミディアムバラードの「空蝉」では、オーセンティックなギターソロが、楽曲の輪郭を浮かび上がらせていく。「踊ってください」と、ラストは「PSYCHEDELIC LAUGHTERS」へ。真っ赤に染まるステージ。ゆっくりうねるような太いベース、ギターのフィードバックがぶつかり合い、サウンドが恐竜のように立ち上がっていく。幻想的でダイナミック。美しくも混沌。このバランスこそ、このバンドの真骨頂なのだと思った。 

setlist

  1. 01.Dimly Midnight 
  2. 02.汽車はゆく 
  3. 03.CaiCō 
  4. 04.-0 
  5. 05.空蝉 
  6. 06.PSYCHEDELIC LAUGHTERS 

Wing-Stong(ウィンストン)が放った、令和・最新型のルーツロック

続いては、大阪からWing-Stongが登場。ソリッドなギターのカッティングから、アップチューンの「Change The World」。バンドアンサンブルも非常にタイトで、モッズやルーツロックを彷彿とさせる。ボーカルがメロディーを刻むように歌い、切れ味のあるグルーヴを作っていく。メランコリックなサビ、少し甘めの声をメインに使うボーカルの声。2つのファクターの相乗効果で、楽曲がキャッチ―になり、中毒性が高いのも特徴だ。「Ladies and gentlemen!boys and girls!」というフレーズから始まった最初の挨拶にも、既述したルーツロックを感じずにいられなかった。ブルージーなギターフレーズからマージ―ビートを繰り出した「ラヴソング」、ブギーのリズムがパブロックを彷彿とさせた「クロスドーロ」と、軽快なビートでオーディエンスの身体を揺らしていく。「Eggs10周年ということで、こういう機会に呼んでいただきありがとうございます」と言った後、10月18日にデジタルリリースされたEP『THE GREATEST HIP』から「願わくばロマンテック」を披露。ディスコチック(あえて“チック”と使いました)なリズムと、湿度のあるメロディーが特徴のメランコリックな1曲。ライミングのような刻む歌い方、ローボイス、中高音、囁くようなファルセットと、ボーカルの七変化が楽曲の肝になる1曲だ。1番、2番を通して最後のフレーズになる<願わくばロマンテック>の「ロマンテック」の部分だけ、ストンと下に落ちてくるメロディーラインに、メロディーメイカーとしての才能を垣間見た。ラストは疾走感ある「チャプター」。1番と2番とで異なるバンドアレンジで聴かせ、最後はメンバー全員がドラムの方を向き、フィニッシュのアクションを決めた。 

setlist

  1. 01.Change The World 
  2. 02.ラヴソング 
  3. 03.クロスドーロ 
  4. 04.願わくばロマンテック 
  5. 05.チャプター 

最初から全開で痛快に駆け抜けた7曲!観客の拳が上がった、ハッピーセット

4組目はハッピーセット。4ピースバンドだ。SEの中メンバーが登場。まだ薄闇に沈むステージの中、ボーカルが顔の前で両手を合わせ、フロアに「よろしくお願いします」というようなジェスチャー。1曲目の「shout」からテンション全開のステージを展開。曲終わりでバスドラが刻むリズムに合わせながら「Eggs10周年おめでとうございます!最後まで盛り上がっていきましょう!」と叫び、10月22日にデジタルリリースされた最新シングル「記憶」へ。Aメロから定期的にボーカルのロングトーンが登場し、そのトーンが情緒の肝になるミディアムアップチューン。続く「花曇」では、曲間でピタッと音が止め、サウンドに静寂を作り出すことで、聴き手を捉えていく。後半に向かい、音圧が上がり、ギターがさく裂するロックチューンへと変貌していく様は圧巻だった。「Eggs10周年ということで、私たち、いっぱい曲を持ってきたので、時間ギリギリまで曲やりたいと思います!」というMCの後、ミディアムアップチューンの「決意表明」へ。力強いメロディーを痛快に鳴らし、サビでは一斉に観客の拳が上がった。「希望の歌」「マージナル・マン」とアップチューンを続け「またどこかで会いましょう!」とステージを後にした。 

setlist

  1. 01.shout 
  2. 02.記憶 
  3. 03.花曇 
  4. 04.喪失ロック 
  5. 05.決意表明 
  6. 06.希望の歌 
  7. 07.マージナル・マン 

CozyLand(コージーランド)、カオスの中で輝くメロディーと、トリに相応しい圧倒的な存在感 

ステージに機材がどんどん運び込まれてくる。ステージ左右、ギターとベースの横の位置には、ラップトップや鍵盤、ミキサーなどが並んでいる。CozyLandは4ピースバンドだが、そのサウンドはDTMなどの打ち込みを取り入れた、ハイブリットなロックだ。1曲目は、このイベントの翌日、10月29日にデジタルリリースされた最新シングル「ALARM」。曲の後半、繰り返されるサビのワンフレーズが、高音のスケールへどんどん転調していく。おそらくワンオクターブ上、以上まで転調しただろう。ボーカルは、ギリギリまで地声で聴かせ、最後には綺麗なファルセットを響かせた。ダンサブルなナンバー「延命信号A」では、ベースがチョッパー奏法のような指使いでリズムに重厚なレイヤーを加えていく。ラストはミニマルテクノのような展開を見せ、観客を圧倒した。「呼んでくれてありがとうございます」と始まったMCでは「僕には“アオイハル”はまったくなかったんですけど」と言い、会場の笑いを誘う。そして客席をチラリと目をやった後、こう続けた。「アオキハルを迎えてる人たちには、CozyLandはどう聴こえてるんでしょうか?最後まで楽しんでいってください」と「追う背」へ。ボーカルは、客席に背を向け、楽曲の旋律に合わせマエストロのようなパフォーマンスを見せる。「もう1曲やるよ」という言葉から「イタイミナイキライ」。ギターとベースは、それぞれの楽器を背中に回し、ステージ上にセッティングされた機材に向かっている。楽曲を構成するすべての要素が異なる進行をみせながら、重なっていく。どしゃぶりのようなサウンド。むせかえるようなカオス。そのど真ん中を射抜いたのは、やはりキャッチ―なメロディーだった。「気を付けて帰ってね」という言葉と熱量の余韻を残し、ライブは終わった。 

setlist

  1. 01.ALARM 
  2. 02.延命信号A 
  3. 03.超止まって 
  4. 04.Waltz 
  5. 05.追う背 
  6. 06.イタイミナイキライ 

どのバンドも、しっかり自分たちの音楽と向き合い、自分たちの音を全力で鳴らそうという気迫のあるステージを展開した『アオキハルヘ Vol.14』。未完成であることは、裏を返せば可能性の塊なんだということを改めて痛感しながら帰路についた一夜だった。 

執筆・取材:伊藤亜希
撮影:吉岡來美 

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この記事を書いた人

伊藤亜希

音楽ライター/編集者。学生時代から音楽雑誌に勤務後、アーティストのFCサイトの立ち上げ・運営などを経験。現在はフリーランス。『RealSound』『MUSICA』、FC会報、FCサイト等で執筆中。『Eggs』は未知の音楽に触れられ楽しいです!

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