私「下北沢ReG」の店長を務める井上(みんなからは下の名前“カズヤ”と呼ばれています)が、音楽業界の仲間との対談を通じて、今の音楽業界にある課題や将来の展望について語り合うコーナー!語り合ったところで何が得られるかわかりませんし、読んで頂いた方に何をお伝えできるかもわからないのですが、見切り発車でスタートします!
Text:井上和也
井上:記念すべき第一回目のゲストは、昔からのバンド仲間でありライブハウス仲間である“おっくん”が登場。では、おっくんよろしくお願いします!
おっくん:よろしくお願いいたします。
井上:まずは簡単な自己紹介をお願いします。
おっくん:八王子にあるライブハウス「Match Vox」と、同じく八王子にある「RIPS」の2店舗で店長を務めながら、レーベルをやったり、イベントをやったり、「THE WELL WELLS」というバンドでVo.&Ba.をしている33歳です!“奥さん”だけど、男です。
井上:おっくんと出会ったのは静岡県の富士アニマルハウスだったよね?あれ、何年前?
おっくん:えー、10年…、10年じゃ利かないですね。多分12年程前です。
井上:ひゃー!じゃ、おっくんは当時二十歳ぐらい?見た目、変わらないね。むしろよく考えたらめっちゃ老けてたんじゃない?いや…、貫禄があったと補足しよう(笑)。
おっくん:いえ、今が若いんです!でも本当に、当時から見た目が変わってないなー、成長してないなーとは思います(笑)。まぁ、貫禄があったというか生意気だったんです、確実に…。
井上:お互いずっと共通することがあるよね。おっくんは「THE WELL WELLS」をずっと続けてて。俺も、バンドは何回か変わったけど、今も現役でCD出したりツアーもしたり。それでいて、お互いライブハウスで店長やったり、レーベルやったり、大きなイベント仕掛けたり。多分“やりたいこと”とか“充実感を得られるポイント”っていうのが一緒なんだろね。
おっくん:自分にとって、和也さんの存在は本当に大きいです。年を重ねるとほとんどの人が去って行くこの業界で、バンドも仕事も凄まじい量を楽しんで捌いてるところは本当にリスペクトしています。あと、顔がかっこ良くてずるいです(笑)。
井上:いやいや、それはこっちも思ってることだよ。Match VoxやRIPSに行くと、お店のスタッフや出演してるバンドが“おっくんイズム”に染まってるもんね。俺は自分からグイグイ行くのが得意ではないので羨ましいし、その才能欲しいなって思ってるよ。あ、ルックスだけは勝ってるかな(笑)。でも奥さん綺麗で羨ましい。
おっくん:俺のDNAを受け継がせるのが良いのか悪いのかわかりませんが(笑)。和也さんは本当に昔から陰で支えるというか、黒幕というか。俺は逆にそういうの向いてないので、かっこいいなって思います。どんな仕事をしても絶対人よりできるんだろうなって。奥さんの“奥さん”のことはスルーしておきます(笑)。
井上:お互いスタンスは違うにしろ、さっきも言ったようにライブハウス、レーベル、イベント、そしてバンドと色々やってるじゃん。例えば自分がバンドをやっていなかったら、ライブハウスやレーベルとかやってたと思う?いや、やったとしても仕事としてこなせると思う?
おっくん:そうですね!和也さんとは規模が全然違いますけど…目標です!もしバンドをやってなかったら…、絶対ライブハウスでは働いてなかったと思います。高校時代からバンドを始めて、専門も音楽だったので具体的な他の道は思いつかないですが、中学の2年くらいまではCDを買ったことすらなかったです。
井上:そうだよね。俺もバンドやってなかったらライブハウスで働かなかったと思うし、楽しんで仕事できてなかったと思う。バンドをやりながらだったので給料以外に得られるモノが働き始めた当初はとてつもなく大きかった。そういった意味では、これから音楽業界で働きたいって人は、まずバンドをやってみることからスタートすればいいのかも!全く責任感のない発言だけど(笑)。
おっくん:元々自分はバンドで食べていくって思ってなくて、でも音楽と寄り添って生きていきたい…そのためには裏方になろう!って感じでしたね。僕らの世代の八王子のライブハウスはちょっと年上の先輩にホルモン(マキシマム ザ ホルモン)がいて、同い年にmalegoatや、八王子ではないけれどよく出てた藍坊主、一つ下にTOTALFATや、後のグドモ(グッドモーニングアメリカ )なんかがいたりして、全国的にも稀に見るめちゃめちゃ面白い空間だったと思うんですよね。その人達を見ててより一層ライブハウスの人になろうと思いました。
井上:八王子にはハンパじゃないバンドがたくさんいるもんね。バンドとしても尊敬できる人達ばっかりだし、ライブハウスマンとしても刺激を受けまくる。八王子のシーンはずっとブレないというか…。“from東京”ではなく“from八王子”と名乗るバンドも多いし、その中で、長年ライブハウスで働いてたら刺激バンバン受けるよね。
おっくん:本当に今名前を挙げたバンドの人達には、感謝とリスペクトしかないです。このバンド達の中から一バンドでもかけたら、確実に今の自分はないです。
井上:ガラリと話を変えちゃうけど、バンドをやりながらライブハウスで働いてると、そのノウハウを活かして大きなことをやってみたいっていう欲に駆られるよね?俺はそれで「EAT THE ROCK」(音楽と食の入場無料フェス)を始めたし、おっくんは去年HACHIDORI((HACHIOJI ROCK DREAM))を始めたよね。正直HACHIDORIがあの規模で始まったのはビビった!何か始めるきっかけはあったの?頭の中にはあっても勝算がなければ実際動き出すことってできなくない?
おっくん:HACHIDORIの開催に関しては色々な要因があるんですが、まず後輩にある程度ライブハウスの業務を任せられるようになったこと、八王子の街に何か音楽で恩返しをしたかったこと、そして有志の市民の方や市役所の方々からの協力を得られたことが大きかったです。勝算とか全然考えずに、今までの繋がりで友人達を呼べば大丈夫!絶対楽しい!って感じでした。
井上:おぉ、そのドンブリ勘定すげーな(笑)。今おっくんが言った「自分がある程度自由に動ける環境」になるってことは、ライブハウスから外に向けて動き出す時のきっかけというか分岐点になるのか。俺そんなこと考えてもなかった(笑)。HACHIDORIは外から見てても地域を巻き込んでやってるように見えたよ。EAT THE ROCKも初年度大変だったけど、去年HACHIDORIを始めた時に苦労した点とかある?
おっくん:去年は、東京都から補助金を貰えたことが大きかったと思います。その代わり色々制限がありましたが。隣にロリクレが経営してるBar「ハハハ八王子」ができた事も大きくて、ここは花団のベースとドラムの二人が店長をやっているんですが、ここに飲みに来るお客さんと仲良くなって、その人の店に飲みに行ってって、どんどん街の人と繋がれました。その代わり財布と肝臓には全く優しくないですが(笑)。苦労した点は、やはり街でこういうイベントが行われることが初めてだったので、貸してもらう店舗や周辺店舗の説得、チケットの販売方法などそれはもう…イベント後、胃が荒れ狂うくらいには(笑)。でもたくさんの街の方が、ふがいない俺を支えてくれて、本当に助かりました。楽しかったこと、やってよかったという感覚が99%くらいで、苦労したという感覚は1%くらいです。
井上:おっくんらしいエピソードだなぁ。準備期間はどれぐらい?
おっくん:2015年の6月くらいから始まったんですが、東京都の補助金がおりるかわかるのが11月くらいで、実質そこからバンドのブッキング、会場の決定をやったので、準備期間としては、かなり短かったです。
井上:11月から3月までの間にあれだけの数のブッキング…。逃げたいね(笑)。
おっくん:かなり逃げ出したかったです(笑)。でも、初回ってこともあって、即答で「出る!」って言ってくれる方が多くて嬉しかったです。
井上:やってよかったが99%ってことは、終わってすぐに来年も!ってなったんでしょ?
おっくん:そうですね。昨年は次があるかわからなかったので、年号をつけてなかったんですけど、打ち上げの時に「イベントタイトル変えます!HACHIDORI 2016!ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。」って言いました(笑)。
井上:去年は無料だけど、今年は有料だよね?それは補助金や行政とも関係してるの?
おっくん:去年は補助金の額も大きかったんですが、非営利開催という事が大前提で。その補助金は一回しかもらえないので、自力開催、継続を目指しての有料化です。ただ、お金儲けに走ったって思われたくないので2500円と破格の値段設定にさせてもらいました。
井上:これイベント仕掛けた人にはわかるけど、この規模で2500円って漢気しかないよね。もうさ、なんならイベントにかかる細かいお金とか全部言いたくなるぐらいイベント経費って積もりに積もるよね。なのでこれ読んでくれている方、2500円って破格です!破格!是非継続して欲しいし、そのためにも有料になった今年、まず成功して欲しいな。
おっくん:お金に計上されない時間や行動なんかも踏まえると、大きなイベントの裏方の方々には本当に頭が下がります…。僕らは基本的には「音楽で町おこし」ってコンセプトなので、お金に関しては誰かが“儲かり過ぎない、払い過ぎない”というのを目指しています。2500円ならお客さんも気持ちよく払ってくれるのでは…と。そして、そこで浮いたお金を八王子のお店で使ってくれたらいいな…と。
井上:今年の見所とかあれば、声を大にして言っちゃって!
おっくん:ありがとうございます。これからやっていけるかが問われる大事な2回目になると思います。今年の見所としては、まだ発表されてないですが、去年にはなかった新しい趣旨のステージや、こんな所所も使っちゃうの!?といった場所も用意しておりますので、より多くの方向性に注目してもらえると思います。
井上:バンドマンがライブハウスで働くようになって、そこで色んな人との出会いがあって、こうやって街を動かす、街を賑やかにするって大きなことまでやれてしまう。本当に凄いことだと思う。是非、今年のHACHIDORIの成功を祈ってるし、もちろん当日俺も遊びに行くので。これを読んでいる方も、HPなどをチェックして欲しいし、この機会に八王子という街に遊びに行って欲しいと思います。おっくん今日はありがとうございました!
おっくん:是非とも!和也さんにはいつまでも、俺の目標でモチベーションを上げてくれる先輩でいて欲しいです。ありがとうございました!
次回もお楽しみに!
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